ハンガリー人監督が日本の俳人“小林一茶”の俳句を引用した理由とは?『雌鶏』約4分の本編冒頭映像
アカデミー賞国際長編映画賞のハンガリー代表作品に選出され、国内外の映画祭で数々の賞を受賞してきたハンガリーの鬼才パールフィ・ジョルジ監督が描く異色のヒューマンドラマ『雌鶏』が、9月25日(金)より公開される。このたび、名句 「露の世は露の世ながらさりながら」 から始まる本編冒頭映像が解禁となった。
CG&AIほぼ無しで実演!世界初、主演・ニワトリ
本作は、養鶏場から搬送中に逃走した1羽の雌鶏の旅を、人間の尽きない欲望や社会の理不尽さをユーモラスに描いた寓話。「鶏は三歩歩くと忘れる」という俗説を鮮やかに覆す名シーンの数々を、8羽の雌鶏が役割を分担して熱演。演技未経験の“新人俳優”でありながら、世界的に著名な動物トレーナーアルパード・ハラシュの指導のもとCGIや特殊効果に頼ることなく、実演による撮影を敢行した。まさに「生きた」鶏たちの映画である。
今回解禁となったのは、約4分の本編冒頭映像。 異国情緒あふれる弦の音色に導かれるように、画面の中心に映し出される冒頭の言葉は、なんと、江戸時代を代表する俳人、小林一茶の名句である。
「露(つゆ)の世は 露の世ながら さりながら」小林一茶
晩秋の情景を背景に、命の儚さや、時の流れの無常を捉えた句で、一茶が長女を失った悲痛のうちに詠んだとされており、この世が露のように儚いことを知りながらも、それでもなお、愛する者を失った悲しみを受け入れきれない——そんな切実な思いが込められている。
この句についてパールフィ・ジョルジ監督は、「私にとって非常に大事な句」だと語り、本作の冒頭に掲げることで ”ニワトリを描いた映画というだけではなく、人の在りようや、人と人との関係性、そして、どのようにこの世に生を受け、産み落とされ、生きていくのか“という、より根源的なテーマを描いた作品であることを示したかったと明かしている。
さらに監督は、小林一茶の句は”単的に、かつ深淵に“語りかけてくるものであり、本作がどのような映画なのか、その本質を表現してくれるもの だと説明。「観客の心を開くために一番有効な手段だと思い、冒頭に取り入れました」 と、その意図を語っている。
一羽の雌鶏の物語から、人間の生と死、命の儚さ、そして生の意味へ——ハンガリーの鬼才パールフィ・ジョルジ監督が、日本の俳人・小林一茶の一句に託した想い。国境を越えて響き合うその言葉が、静かに、そして深く、本作の核心へと観る者を導いていく。
ニワトリを主人公に据えた一見シュールな物語が、やがてどのような壮大な物語へと展開していくのか。劇場でその全貌を確かめてほしい。
『雌鶏』©2025 Pallas Film-Twenty Twenty Vision-View Master Films-ZDF
『雌鶏』は9月25日(金)より全国公開