是枝裕和(監督・脚本・編集)の最新作『箱の中の羊』が、5月29日(金)より公開が決定した。このたび、ヒューマノイドを笑顔で受け入れる妻と戸惑う夫の対比が印象的に描かれる本編映像が解禁となった。
是枝裕和監督が描く、少し先の未来の家族の物語
これまで、『そして父になる』(13)で「カンヌ国際映画祭」の審査員賞を受賞、『万引き家族』(18)では「カンヌ最高賞」であるパルムドールを受賞するという栄誉に輝き、『ベイビー・ブローカー』(22)ではエキュメニカル審査員賞を受賞し、主演のソン・ガンホは韓国人俳優として初となる最優秀男優賞を受賞。また前作『怪物』(23)では、クィア・パルム賞を受賞し、タッグを組んだ脚本家・坂元裕二は脚本賞を受賞し大きな話題となった。
現代社会やそこに生きる人々を鋭い視点と温かい眼差しで描き作品を作り上げてきた是枝監督が、最新作『箱の中の羊』で選んだ舞台は、“少し先の未来”。息子を亡くした夫婦はヒューマノイドを迎え入れ、再び家族としての時間が動き出す。やがて一家を待ち受ける、想像を越えた<未来>とは——。日本映画では『万引き家族』以来、8年ぶりとなるオリジナル脚本となる。
主演は綾瀬はるかと千鳥の大悟。夫婦を演じる。綾瀬は妻で、建築家の甲本音々。大悟は夫で、工務店の二代目社長、甲本健介。そして二人の息子、甲本翔、その姿をしたヒューマノイドには桒木里夢。200名以上のオーディションから抜擢された。彼らが織り成す新たな“家族のかたち”に期待が膨らむ。
『箱の中の羊』©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro
本作は、子どもを亡くしたある夫婦が主人公。夫婦役は、『海街diary』以来の是枝監督作品出演となる綾瀬はるかと、お笑い芸人・千鳥の大悟が演じている。異色の組み合わせに、大きな注目を集めた今回のキャスティング。是枝監督によると、綾瀬とはまた一緒に作品をやりたいと以前から構想を練っており、綾瀬の夫役として、これまで是枝作品で組んだことがない、新たな一面を引き出すキャスティングとして大悟を選んだという。
綾瀬が演じる甲本音々は、亡くした息子と同じ姿をしたヒューマノイドに希望を見出し、再び“家族”の時間を取り戻そうとする。一方、大悟が演じる甲本健介は、似て非なる「彼」をすぐには受け入れることができず距離を取ろうとする。かつては同じ喜びも悲しみも分かち合っていた二人だが、息子を亡くし、時間の流れていく中で、お互いの心を向き合わせることが希薄になっていき、ともに日々を過ごしながらも、分かち合えない心の距離が生まれている——そんな関係性が丁寧に描かれていく。
今回、甲本家にヒューマノイドの翔がやってくるシーンの本編映像が公開された。車から降りてきた翔(桒木里夢)に、音々(綾瀬はるか)は「おかえり、翔」と声をかけ、うれしさを隠しきれない様子で家の中へ招き入れる。その一方で、健介(大悟)はどこか戸惑いをにじませた複雑な表情を浮かべる。部屋の中で、音々は翔の取扱説明書を見ながら、GPSや知的レベルの設定を一つひとつ確認していく。たくさん話しかけることでそれに応え、健やかに成長していくという設定を聞き、「たまごっちやん」と言う健介に、音々は険しい表情で睨む。さらに音々が電源ボタンの位置や充電の表示を確かめていく中、健介はうつむきながら「ルンバやん」と呟き、野球の試合へ行くと言ってその場を後にしてしまう。ヒューマノイドを前向きに受け入れようとする音々と、距離を取ろうとする健介——一見すると軽口のやり取りにも見えるこのシーンだが、大悟ならではの間や言葉のニュアンスによる、悲しきユーモアが、「同じ顔」に違う感情を抱いた夫婦の埋めがたい距離と、それぞれが抱えた喪失の深さを際立てるシーンとなっている。
是枝監督は綾瀬と大悟の印象的なシーンについて、後半で登場する夫婦喧嘩のシーンを挙げている。その理由について、「ひとりのトーンが変わると相手も変わってきます。衝突をどのぐらいの感情のぶつかり合いにするかはテイクごとに違うので、珍しく10テイクぐらい撮っているんです。喧嘩のシーンで初めて二人が向き合うように、それまでのシーンでは座り方も含めて横並びにするなど、なるべく二人が向き合わないようにしています」と語っている。物語が進むにつれて、夫婦の間にある感情が次第にあらわになり、二人のリアルな距離感がよりくっきりと浮かび上がっていく。積み重ねられてきたすれ違いや想いが交錯する中で、綾瀬の繊細な表現と大悟の飾らない言葉が重なり合い、夫婦の関係性の変化が丁寧に描かれていく。
血のつながりや形にとらわれない“家族”の在り方を描いてきた是枝作品の流れの中で、本作もまた、喪失を抱えた人間がどのように他者と向き合い、関係を結び直していくのかを静かに見つめていく。綾瀬はるかと大悟という印象的な組み合わせだからこそ生まれた夫婦像は、観る者それぞれの心にそっと問いかけるはずだ。笑いと切なさが交差する本作の世界観に、注目してほしい。
『箱の中の羊』©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro
『箱の中の羊』©2026フジテレビジョン・ギャガ・東宝・AOI Pro
『箱の中の羊』は5月29日(金)より全国公開