「名作を汚すな!」伝説的カルトホラーの“ハリウッド版リメイク”に映画ファンが反対する理由とは?
なぜ?“あの名作映画”リメイク計画に拒絶反応
カルトホラーの金字塔『ポゼッション』(1981年)のリメイク計画が進行している。『トワイライト』シリーズや『THE BATMAN-ザ・バットマン-』で知られる俳優ロバート・パティンソンが製作し、低予算ながらスマッシュヒットを飛ばしたホラー映画『Smile スマイル』(2022年)のパーカー・フィンが監督を務めるという。
このリメイク計画は数年前から発表されていたがキャスト候補決定の報道によって、ホラー映画ファンや批評家の間で再び強い批判を浴びている。名作のリブートは珍しくないことだが、なぜ本作は「不必要かつ無謀な試み」と言われるほどの激しい拒絶反応を引き起こしているのだろうか?
“再現不可能”なイザベル・アジャーニの名演
ファンの批判の最大の拠り所となっているのが、オリジナル版で主演を務めたイザベル・アジャーニの圧倒的な存在感だ。彼女は本作でカンヌほか数々の映画祭で主演女優賞を受賞したが、地下鉄構内での伝説的な発狂シーンに代表されるその演技は、多くの映画好きの間では“演技”の枠を超えた奇跡的な瞬間と見なされている。
今回のリメイクに対してはそこが最大のハードルとされているようで、複数の海外メディアでも「どれだけ才能のある俳優が壁に身を投げ、叫び声を上げても、あのアジャーニのエネルギーを再現することは不可能」と言及されているほど。実際、彼女は本作の撮影後に精神のバランスを崩したというから、推して知るべしである。
しかも本作におけるアジャーニのパフォーマンスは、アンジェイ・ズラウスキ監督による過酷な(場合によっては“トキシック”とすら言われた)演出と、彼女自身の極限状態が融合して生まれた“爆発”と呼ぶべきだろう。つまり映画好きの間では、ハリウッドの管理された撮影現場でそれを再現しようとすること自体が作品の本質を損なう――という意見が根強いようだ。
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個人的な“痛み”と“時代背景”の欠如
もう一つの大きな懸念は、作品の持つ極めて私的な背景にある。なにしろオリジナル版は、ズラウスキ監督自身が泥沼の離婚を経験した際の“魂の叫び”として作られたからだ。
映画メディアやファンフォーラムでは、この映画が「東西に分断されたベルリン」という冷戦下の特殊な環境を背景にしつつ、そのメタファーとして崩壊していく夫婦関係を描いているという論評が多い。これを現代アメリカなどの設定に置き換えた場合、オリジナル版が持っていた「行き場のない政治的・精神的な閉塞感」が失われ、いわゆる“モンスターホラー”や“刺激優先のジャンプスケアもの”に成り下がってしまうのではないか? といった危惧が投げかけられている。
『ポゼッション 4Kリマスター』© 1981 OLIANE PRODUCTIONS / MARIANNE PRODUCTIONS / SOMA FILM PRODUKTION Gmbh / TF1 FILMS Production
気になるキャスティングは? 彼女はたしかに素晴らしいけど…
2026年2月時点の最新報道では、リメイク版の主演として『ザ・サブスタンス』の体当たり演技も記憶に新しいマーガレット・クアリーと、『ファンタスティック・ビースト』シリーズなどで知られるカラム・ターナーが交渉中と報じられた。
クアリーは過激な役柄を厭わない実力派として知られているが、それでもオリジナル版のファンは納得しない。SNSや掲示板サイトでは「当時のアジャーニとクアリーはよく似ているじゃないか」という声がある一方、「クアリーは大好きな俳優だけど、この役だけは引き受けるべきじゃないよ」などと彼女のキャリアを心配するような意見もある。
難題に挑むことになるフィン監督は「オリジナルへの敬意を払い、そのマニアックな熱量を維持する」と意欲を見せているが、カルト的な支持層を納得させるハードルは極めて高い。はたして“ハリウッド版『ポゼッション』”が今後どんな展開を見せるか、期待と不安を抱きつつ続報を待つことになりそうだ。
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発売元:株式会社スティングレイ
© 1981 OLIANE PRODUCTIONS / MARIANNE PRODUCTIONS / SOMA FILM PRODUKTION Gmbh / TF1 FILMS Production