「WTF顔が生配信」なぜFBI長官がネットで嘲笑されているのか “悪名高い初代長官”描いた伝記映画と比較

「WTF顔が生配信」なぜFBI長官がネットで嘲笑されているのか “悪名高い初代長官”描いた伝記映画と比較
『J・エドガー』© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc.
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現FBI長官、なぜネットで嘲笑の的に?

2025年初頭、カシュ・パテル氏がFBI長官に任命されたことは、米国内外で大きな驚きをもって受け止められた。トランプ大統領の側近として知られるパテル氏は、国家安全保障会議や国防総省での勤務歴を持つが、法執行機関での実務経験は乏しく、FBI長官という重責に対する適性を疑問視する声も多かった。

パテル氏の任命は、トランプ政権による“ディープステート(※官僚や軍部などの一部の権力層が、民意や政治家とは無関係に国家を操っているとする陰謀論)の一掃”として位置づけられ、保守派メディアで歓迎された一方、リベラル系メディアやSNSでは「政治的な報復人事」として批判の対象にもなった。

その後、パテル氏の様々な言動やメディア出演の様子が次々とミーム化され、ネット上で嘲笑されている。なぜFBI長官ともあろう人物が、ここまでイジられてしまっているのだろうか……?

「子ども用の椅子?」ニュース番組出演時の珍事

パテル氏が米フォックスニュースのインタビューに登場した際、明らかにサイズが合っていない巨大な椅子に座っていたことが話題となった。

SNSでは「FBI長官というより幼稚園児」「この椅子で国家機密を語るのか」といった投稿が拡散され、画像加工によって足が宙に浮いているように見せるミームまで登場。

あるユーザーは「He looks like a toddler in a high chair.(ハイチェアに座る幼児みたいだ)」と投稿し、これは数万件のリポストを記録している。

自己啓発メモ? 議会証言中の画像が漏洩

議会証言中、パテル氏が手元に置いていたメモがカメラに映り込み、「Hold the line(踏ん張れ)」「Good fight with Swalwell(スウォルウェルとの良い戦い)」などの“自己励まし”的な言葉が記されていたことが判明(※スウォルウェル=議会で対峙した民主党のエリック・スウォルウェル下院議員)。

ネット上ではこれが「中学生の黒歴史ノート」と揶揄され、「FBI長官=自己啓発系インフルエンサー」という新たなキャラ付けが誕生。「Is he prepping for a WWE match or a congressional hearing?(これは議会証言の準備か、それともWWEの試合か?)」などという投稿もバズってしまう。

寝耳に水? 生配信中の「WTF顔」が大拡散

右派系のジョー・ローガンによるポッドキャスト番組に出演したパテル氏は、イーロン・マスクが「トランプはエプスタイン・ファイル(※未成年の少女たちを性的人身売買した際の顧客リスト)に載っている」と投稿したことを番組内で知らされ、絶句。硬直した表情がそのまま生配信され、「FBI長官のWTF顔」としてスクリーンショットが拡散された。

ホストのローガン氏が「Jesus Christ(なんてこった)」と呟く中、パテル氏は「I’m not going to comment on that.(その件にはコメントしない)」と冷静を装ったが、その表情は深読み不可避なWTF(what the fuck)全開だった。

嘲笑を誘うのは「政治的な胡散くささ」が背景にあり?

いくつかの政治報道誌は、パテル氏がトランプ政権下でロシア疑惑を“魔女狩り”と断定し、FBIの捜査を妨害した中心人物であると報じている。ある記事では「He was Putin’s useful idiot.(彼はプーチンの有用な愚か者だった)」とまで記されており、ロシアの情報戦に加担した人物として非難されている。

また、陰謀論的なパテル氏の著書「Government Gangsters」では、ロシア疑惑を”民主党とディープステートによる陰謀”と断定しており、事実を歪めたプロパガンダ的な姿勢が問題視されている。つまり見た目のインパクトだけでなく、言動のズレや政治的な胡散くささが度々ツッコまれた結果、ネット上で“恰好のミーム素材”となってしまっているのだ。

当然ながら人の“見た目”を揶揄することは言語道断、道徳に反する行為だが、FBI長官という重責を担う人物が、ここまでエンタメ的に消費される現象は、現代政治とメディアの関係性を象徴しているとも言えるだろう。しかし、そもそもFBI長官とは、ここまで表立ってイジられるような存在だっただろうか? たとえば初代長官として悪名高いジョン・エドガー・フーヴァーは、パテル氏と比較してどんな人物/存在だったのだろうか?

『J・エドガー』© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc.

次ページ:映画『J・エドガー』は初代長官をどう描いたか?
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