話題沸騰『サブスタンス』ほか“観る者のアイデンティティを問う”傑作5選!A24『顔を捨てた男』公開記念
『サブスタンス』全国公開中
(2024年/コラリー・ファルジャ監督)
元トップ人気女優エリザベス(デミ・ムーア)は、年齢と共に容姿の衰えと、それによる仕事の減少から、新しい再生医療<サブスタンス>に手を出す。接種するや、エリザベスの背中から若く美しい女性スー(マーガレット・クアリー)が現れる。
抜群のルックスと、エリザベスの経験を持つ新たなスターの登場に色めき立つテレビ業界。しかし、ひとつの精神を決められたルールでシェアする存在となったエリザベスとスーは、いつしかいがみ合うようになり……。
『サブスタンス』©︎The Match Factory
若さと美しさに執着したエリザベスを主人公に、ルッキズムとエイジズムをテーマに描いた異色のホラー。デミ・ムーアの名演が、女性の外見に対する根強い風潮を問う。第97回アカデミー賞®メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した話題作。
『エレファント・マン』
(1980年/デヴィッド・リンチ監督)
19世紀末のロンドン。身体的特徴から見世物小屋で働かされていた青年メリックを、外科医のトリーヴスが研究対象として保護。最初は、何も話さず、極度の人間不信だったメリックを周囲は知能が低いと思っていたが、親切なトリーヴス夫妻と過ごすうちに、彼が知的で優しい人物だと分かっていく――。
実在の青年ジョゼフ・メリックの生涯を描いた、鬼才デヴィット・リンチによる不朽の名作。外面だけで内面を判断され差別されるメリックを主人公に、彼を取り巻く人々との交流を通して、人間の内面にある美しさや残酷さを浮かび上がらせる。第53回アカデミー賞で8部門にノミネートされた。
『ミッキー17』
(2025年/ポン・ジュノ監督)
失敗だらけの人生を送ってきた男ミッキーは、何度でも生まれ変われる“夢の仕事”で一発逆転を狙おうと、契約書をよく読まずにサインしてしまう。しかしその内容は、身勝手な権力者たちの命令に従って危険な任務を遂行し、ひたすら死んでは生き返ることを繰り返す過酷なものだった。やがて、ある手違いによりミッキーの前に彼自身のコピーが現れ、奇妙な共同生活が始まるが――。
『ミッキー17』© 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ監督によるSF作品。全く同じ見た目にも関わらず、性格は異なる“自分の完全コピー”が現れる。主人公は最初こそ拒絶するものの、次第に“異なる自分”を受け入れ手を組むことに。独創的な設定と強烈な現代風刺で人間の、生の実存を問う。
『ザ・ホエール』
(2022年/ダーレン・アロノフスキー監督)
40代のチャーリーはボーイフレンドを亡くして以来、過食と引きこもり生活を続けたせいで極度に健康を損なってしまう。看護師リズの介助を受けながらオンライン授業の講師として生計を立てていたチャーリーは、症状が悪化しても病院へ行くことを拒否し続けていた。やがて死期が近いことを悟った彼は、疎遠になっていた娘エリーに会いに行くが、彼女は学校生活や家庭に多くの問題を抱えていた――。
『ザ・ホエール』© 2022 Palouse Rights LLC. All Rights Reserved.
A24が製作を手掛け、第95回アカデミー賞®︎で主演男優賞(ブレンダン・フレイザー)、メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞。自己の弱さや脆さを埋めるかのように、272キロの巨体へと変貌を遂げたチャーリーが、痛みを伴いながらも娘や自分自身と対峙し、ラストへと向かっていく姿を描いた傑作。
『ジキル博士とハイド氏』
(1931年/ルーベン・マムーリアン監督)
1886年出版の小説を映画化。舞台は19世紀末のイギリス。人間を善悪の二つに分離する研究をしていたジキル博士は、自身が生み出した薬品を自分に投与。ジキル博士は外見も内面も変化し、自身に潜む悪の要素だけが抽出された怪物ハイド氏となってしまう。善良な紳士だったジキル博士だが、ハイド氏として悪事を働いても元の自分に戻れば罰せられないことに快感を覚えはじめ……。
幾度となく映像化されている有名作だが、『顔を捨てた男』のシンバーグ監督は1931年制作版を、とくに影響を受けた1作として挙げている。