なぜ低予算ホラー映画が世界的に大ヒットしたのか？ いま観ても抜群に怖い『イット・フォローズ』を振り返る

『イット・フォローズ』の衝撃

2014年のホラー映画『イット・フォローズ』の衝撃は、まだ記憶に新しいだろう。わずか200万ドルの制作費で一桁多い興行収入を挙げ、日本でもクチコミで話題が広まりヒットに繋がった。

監督のデヴィッド・ロバート・ミッチェルは2018年にA24配給の『アンダー・ザ・シルバーレイク』を手掛け、主演のマイカ・モンローはいまや様々なジャンルの作品で引っ張りだこの俳優となっている。

『イット・フォローズ』©2014 It Will Follow. Inc,

じっくりじわじわ恐怖を醸成

『イット・フォローズ』は主人公ジェイ（マイカ・モンロー）が謎の存在に追われるという、シンプルながらナチュラルに恐怖を煽る設定を採用した。この“追跡者”は、どこにいてもゆっくりと歩み寄り、決して止まることがない。いわゆるジャンプスケアに頼らず、しかし観客は常に緊張感を強いられる。まるで生き物から発せられる有機的な音をデジタル化したようなシンセ音楽が作品全体を覆い、不気味な雰囲気を際立たせる。

『イット・フォローズ』©2014 It Will Follow. Inc,

米本国でも公開当初から批評家の間で話題となり、某批評サイトでは95％高評価を獲得した本作。始まりこそ限定公開ながらクチコミで人気が広がり、最終的には1,655館というインディーズ映画としては異例の公開規模となった。

そのヒットはホラー映画としての完成度の高さが大きな理由ではあるが、“性交渉によって恐怖に付きまとわれる”という展開は性感染症のメタファーとされ議論を呼び、それが集客に繋がった部分もあるだろう。

『イット・フォローズ』©2014 It Will Follow. Inc,

いま観ても超怖い！ ヒトの潜在的な恐怖心を引きずり出す

公開から10年以上が経過した今でも、本作のホラー映画としての強度に衰えは感じない。人間が持つ「何かに追われる恐怖」を巧みに映像化したことで、時代を超えた普遍的な名作ホラーとして異彩を放ち続けている。

『イット・フォローズ』©2014 It Will Follow. Inc,

近年の低予算ホラー映画はCGや過激なスプラッタ演出を好む傾向があるが、混沌とする現実世界への反発＝ヒャッハー化という考え方もできる。もしそうであれば、『イット・フォローズ』がパンデミック後の作品だったら、どう受け入れられていたかは気になるところだ。

『イット・フォローズ』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年4月放送

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