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“Jホラーの申し子”による「ホラー映画大賞」受賞作!『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』こってり考察

“Jホラーの申し子”による「ホラー映画大賞」受賞作!『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』こってり考察
©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会
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1本のビデオテープがもたらす得体の知れない恐怖

主人公は弟が失踪したまま行方不明となっている兒玉敬太(杉田雷麟)。遭難者捜索のボランティア活動に従事する彼の元に、母親から1本のVHSテープが届いたことから物語は大きく動き出す。テープには弟の日向が失踪する瞬間が収められており、敬太は霊感が強い同居人・天野司(平井亜門)の協力を得て弟が姿を消した山へ向かい、失踪事件を調べる記者・久住美琴(森田想)も後を追うのだが……。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

本作は現代ホラーながら「ノーCG・ノー特殊メイク・ノージャンプスケア」を謳った作品だ。近藤監督は『リング』の脚本を手がけた高橋洋に師事した経験があり、いわばJホラー直系の後継者。特別な装置を使わずとも観客に恐怖を感じさせるテクニックは、「こっくりさん」を題材にした第1回日本ホラー映画大賞入賞作『その音がきこえたら』の時点で明確だった。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の恐怖の根源は、失踪事件にまつわる「説明のつかない事象」にある。いわゆる「神隠し」のようなもので、霧の中を彷徨っているような掴みどころのない感覚が常にまとわりつき、重要な舞台となる“山の中の廃墟”にたどり着く頃には、恐怖がピークに達しているだろう。いかにも説明的な演出やセリフを排したことで余白が生まれ、観客に「想像させる余地」を残しているところが大きな特徴だ。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

「お化け屋敷」と「真っ暗な森」 どっちが怖い?

ひと昔前まで邦画は説明過多な作品が頻出していたが、近年は作り手側が観客を信用し各々の想像力に委ねる作品も少なくない。たとえば「お化け屋敷」と「真っ暗な森」があったとして、どちらがより恐怖を感じやすいか? と問われて「森の方」と答える人は、意外と多いのではないだろうか。お化け屋敷は人を怖がらせるための施設であり、ある程度“仕掛け”を予測しやすい。かたや「森」はただ悠然と古くから其処に存在し、当然ながら人為的な仕掛けは無い。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

しかし、鬱蒼と茂る木立の陰、あるいは暗闇そのものに、“何か”が潜んでいたら? あるいは土着由来の“超自然的な力”が作用していたら? いわゆるベロベロバー的な怖さを詰め込んだ古典的なお化け屋敷とは対極的に、情報量を極限までそぎ落とした暗い森は、自らの想像力で余白を埋めていくように「恐怖の対象」を勝手に頭の中で作り上げてしまうのだ。

“余白”を残したという意味では、本作の主人公・敬太が手にするビデオテープもキーアイテムとして非常に大きな役割を果たす。時おりノイズが走る、画面比率4:3の古めかしい記録映像は「弟が失踪した瞬間」を捉えている点においてノスタルジー以上の付加価値があり、何かが隠されているのではないか? と観る者の想像力を刺激する。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

「フェイクドキュメンタリー」ブームがJホラー再隆盛の鍵?

そして家庭用ホームビデオが捉えた映像をもとに失踪事件の核心に迫っていくという構成は、昨今のフェイクドキュメンタリー作品の潮流に合致している。そもそも近藤監督自身、SNSを中心に大反響を巻き起こしたフェイクドキュ番組「TXQ FICTION」の『イシナガキクエを探しています』や『飯沼一家に謝罪します』の演出を担当。そこでは、いずれも過去に撮影あるいは放送された映像を再検証する(という体裁の)演出を取り入れている。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

磁気テープに記録された映像は当時を知らない現代の若者世代の好奇心を掻き立て、真相をめぐる考察を加速させた。決定的な答えを見せない物語はホラー的であると同時にエンターテインメント性を備え、ネットを介して拡散。言わずもがな、『リング』の“呪いのビデオテープ”に起因するリングウイルスが作品内外で拡がった現象に通じるものがあり、「怖いのに見てしまう」「怖いのに考えずにはいられない」という矛盾を孕みながら、いまもネット上に拡がり続けている。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

他にも『フェイクドキュメンタリーQ』や『このテープもってないですか?』など、「考察系」ブームがJホラー再隆盛の鍵を握っているといっても過言ではないだろう。新次元Jホラーを標榜する『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は、まさに時代の転換点に立つホラー史的にも重要な作品となるかもしれない。

©︎2025 「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会

Jホラーの全てを染み込ませた正統派継承者が放つ、新次元Jホラー『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』は、いよいよ1月24日(金)より全国公開。じわじわと近づく得体の知れない恐怖を、ぜひ映画館で体験しよう。

【劇場入場者特典情報】

タイトル:背筋書き下ろし短編小説「未必の故意」
著者:背筋
配布期間:公開劇場にて1月24日(金)~無くなり次第終了

※お1人様1冊の配布となります。
※数に限りがございます。配布終了の際はご了承ください。
※特典は非売品です。転売・複製等は一切禁止となります。
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『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』

「そのビデオテープには映ってはいけないものが映っている……」

敬太(杉田雷麟)は幼い頃、弟・日向が自分と出かけた山で失踪するという過去を持ち、今は失踪した人間を探すボランティア活動を続けていた。そして、ある日突然母から古いビデオテープが送られてくる。それは、日向がいなくなる瞬間を映したビデオテープだった。

霊感を持つ同居人の司(平井亜門)はそのテープに禍々しい雰囲気を感じ、敬太に深入りしないよう助言するが、敬太はずっと自分についてまわる忌まわしい過去を辿るべく動き出す。そんな敬太を記事ネタの対象として追いかけていた新聞記者の美琴(森田想)も帯同し、3人は日向がいなくなった“山”に向かう……。

監督:近藤亮太
脚本:金子鈴幸
総合プロデューサー:清水崇

出演:杉田雷麟 平井亜門 森田想 藤井隆

制作年: 2024