『類猿人ターザン』がお茶の間に与えた衝撃
ターザンは基本的に半裸であるからして、映像化の際には常に半裸の男性がウロウロしている様子を凝視することになる。もう一人の主人公ジェーンは彼の魅力を引き出すヒロイン的な役回りであることが多いが、今回紹介する『類猿人ターザン』(1981年)はジェーンが真の主人公という変わった作品だった。演じたのは当時、絶大な人気を誇った女優ボー・デレクだ。
「エロティックターザン映画」という謳い文句のとおり、本作はデレクによるお色気シーンを大きなウリにしていたようで、全体的に紗のかかった映像が妙にエロチック。そしてデレクの顔面どアップや紅潮した頬、やけにヒラヒラした衣装が、お色気展開の期待を煽りまくる。前半は会話シーンが多くターザンも登場しないが、それでも間を持たせてしまうのはデレクの存在感のおかげだろう。ダレそうになる中盤あたりで全裸での海水浴シーンを差し込み、観客の集中力を維持させる演出は見事としか言いようがない。
その海水浴シーンで、「アーァア~~!」の雄叫びとともに満を持して登場するターザン。演じるマイルズ・オキーフはアメフトあがりのマッチョマンで、憂いを帯びた表情が魅力的だ。その後のキャリアでは低予算アクション映画への出演が中心で大成はしなかったが、1999年にグラハム・ノートンのトーク番組に出演したことで再び注目を集めた。もし『エクスペンダブルズ』シリーズに招集されたりしていたら、ごく一部では最高に盛り上がったことだろう。
主人公であるデレクのスタイルの良さは衣装の上からでもはっきり分かるほどで、いま観ても完璧なスタイルにはため息が漏れる。それもそのはず、本作の監督を務めたのは夫のジョン・デレクで、妻の魅力を最大限に引き出しており、言い方を変えれば完全にノロケ映画なのだ。ゆえに本気のセクシー演出も中盤と終盤の一部シーンだけで、スローモーションを多用したアクションシーンは全体的にまったりしている。
しかし、だからこそテレビの洋画劇場で鑑賞していた多くのファミリーが特大のセクシーボムをうっかり被弾してしまい、気まずい空気を味わったのも事実。冗談みたいなハート型のワイプやオランウータンとのじゃれ合いが長すぎてちょっと不安になってくるエンドロールなど、色んな意味で最後の最後まで見逃せない作品だ。
『類猿人ターザン』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年8月放送
『類猿人ターザン』
若く美しい娘ジェーンは、父であり、アフリカ奥地で探険を続ける著名な冒険家ジェームズを探す旅に出る。長い旅路の末に、ようやく巡り合えたジェームズと、初めて親子の時間を過ごすジェーン。その翌日、彼女はライオンに襲われたところを1人のたくましい青年、ターザンに救われて……。
監督:ジョン・デレク
出演:ボー・デレク リチャード・ハリス マイルズ・オキーフ
制作年: | 1981 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年8月放送