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「実際に起きたことを目撃して欲しい」
本作の最大の見どころは、17分におよぶ固定カメラの長回しで撮影された村の住人が一堂に会する文化センターでの緊急集会シーン。映画の中心人物をはじめ、村長、神父、警察署長、フランスから来たNGO職員、報道関係者も立ち会い、住人たちの激論が展開する。
ルーマニア語、ハンガリー語、フランス語、英語で交わされる討論では、外国人労働者を“異物”と見なした住人たちが容赦なく彼らに向ける偏見の視線、攻撃的に差別する言葉、民族、宗教、貧富の格差、EUが推進するリベラルな政策やグローバル資本主義の歪み、西欧と東欧の問題、民主主義の危機…などに根差した住民の鬱憤、不満が爆発する。その恐ろしいまでのリアルな描写は臨場感にあふれ、圧巻のひとこと。私たち日本人にとっても他人事ではない有様が鮮烈に映像化されている。
映像は、その冒頭部分だ。「平和な村で90年代以降民族紛争はありません」という村長の発言から始まる集会が、次第に暴発していく様子が垣間見られる。26人の登場人物が話す17分間ものワンシーンをワンテイクで撮影したムンジウ監督は、17分の長回し撮影を行った理由を、「観客がまるでその場で集会を体験するような映像にしたかったし、実際に起きたことを目撃して欲しかったから」と言う。
『ヨーロッパ新世紀』は10月14日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
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