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「原作クラッシャー」出崎統の劇場版『スペースアドベンチャー コブラ』 ロマンを注入し“大人の”声優をキャスティング

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ライター:#多田遠志
「原作クラッシャー」出崎統の劇場版『スペースアドベンチャー コブラ』 ロマンを注入し“大人の”声優をキャスティング
スペースアドベンチャー コブラ[4Kリマスター版] ©BUICHI TERASAWA/ART TEKNIKA・TMS
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大作実写映画に対するアニメ映画からのチャレンジ

アニメの手法的にも、サングラスのミラーグラスに映った人物との会話シーン(実写では当たり前のこんな描写も、アニメであると考えると色々と後から凄さが伝わってくる)など、映画的な表現が多い。作中では割れた鏡を用いた画面分割、各キャラクター複数人を同時に描く“ワイプ”など、『機動戦士ガンダム』等の作品でも用いられるニュータイプの超感覚を表す分割処理といった、後のアニメ作品に影響を与えたシーンが頻出する。

明らかに当時のハリウッド産SF映画などに対して、アニメがどう対抗しうるか、を考えて意識して作っている感じが作品全体に満ちている。雪の惑星での様々な乗り物でのチェイスや戦闘、未来的都市でのアクションやライトセーバーを想起させる決闘シーン等『スター・ウォーズ』を想起させるシーンも多い。

また、コブラとクリスタル・ボーイの初対決、鏡張りの部屋での対決シーンは『燃えよドラゴン』(1973年)のクライマックスから着想を得ているだろう。このように、大作実写映画に対するアニメ映画からのチャレンジを感じることができる。

スペースアドベンチャー コブラ[4Kリマスター版] ©BUICHI TERASAWA/ART TEKNIKA・TMS

この頃、実写でも東映の『宇宙からのメッセージ』(1978年)のように、日本映画全体が挑んでいたハリウッド特撮映画の波に、出崎もアニメ“映画”でチャレンジしていたと言える。TVの「4:3」の画角が主だったアニメのメディアで、映画の「16:9」の画角を用いて、横長の画面をワイプなどで分割し、男女の想いの隔たりを心情表現に用いたり、広くなったスクリーンで何が可能なのか、またどこまでできるのかを色々試している(前衛的な手法は『哀しみのベラドンナ』(1973年)など日本アートアニメの影響も濃厚だ)。そんなアニメ映画草創期の攻めた表現を多数、味わうこともできる。

単に子供向けのアニメを大人向け、劇場用にコンバートするだけではなく、自分たちの作ってきた日本アニメが、ハリウッド映画とどれだけタメを張って競えるのか? というチャレンジを感じることができる。実際、海外でも『スペースアドベンチャー コブラ』は評価が高く、今でも製品化され観られ続けているというあたりも、それをよく物語っている。日本アニメの持つポテンシャルを改めて思い出させてくれる、いま観直しても全く古さを感じさせない作品だ。

文:多田遠志

『スペースアドベンチャー コブラ[4Kリマスター版]』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:3ヶ月連続!SF映画~未体験惑星~」で2023年6~7月放送

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『スペースアドベンチャー コブラ[4Kリマスター版]』

700万ビートルの賞金首である宇宙海賊コブラは、美しき賞金稼ぎのジェーンと出会い惹かれ合う。そんな2人を追う悪の組織ギルド。ジェーンは宇宙を彷徨うミロス星の女王の末裔で、星を蘇らせるため、生き別れた3つ子の姉妹キャサリンとドミニクを探してほしいとコブラに協力を依頼する。

監督:出崎統
声の出演:松崎しげる 榊原良子 中村晃子 藤田淑子 風吹ジュン

制作年: 1982