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「拷問ポルノ」を継承した超問題作が14年を経て日本上陸『クロムスカル』はハマったら逃れられない底なし沼

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「拷問ポルノ」を継承した超問題作が14年を経て日本上陸『クロムスカル』はハマったら逃れられない底なし沼
『クロムスカル』© 2009 DRY COUNTY FILMS,LLC.
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「拷問ポルノ」というジャンル

本作がやたらと“殺し”を“見せる”ことにこだわっているのは、当時流行していた拷問ポルノフォーマットを踏襲したからである。

拷問ポルノ(Torture Porn)とは2000年~2010年にかけて制作された、いわゆる“スプラッター映画”と“スラッシャー映画”をハイブリッドし、暴力、流血、ヌード、拷問、人体破壊、サディズムの描写がブーストされたホラー映画群を指す。

この呼称はアメリカの大御所映画評論家デヴィッド・エデルスタインが批判的な意味で使ったとされている。しかし、収益性の高さが注目され一時代を築いたのだ。

当時は様々な議論を呼んだサブジャンルであったが、現在は『マーターズ』(2007年)をはじめとするネオフレンチスプラッターの足がかりとなったことや、人体破壊描写の汎化を促したことから、一定の評価を得ている。

『クロムスカル』© 2009 DRY COUNTY FILMS,LLC.

14年を経て日本上陸

『クロムスカル』は公開当時、スラッシャー映画マニア界隈で非常に話題となった作品だ。筆者も含め、多くの好事家がこぞって輸入盤DVDを購入。クロムスカル師匠の活躍に舌鼓を打ち、

「なぜ、この名作が日本公開されないんだ?」

と疑問に思っていたのである。

『クロムスカル』© 2009 DRY COUNTY FILMS,LLC.

あれから14年、ようやくの劇場公開だ。いま改めて観ると演出自体は10年前のそれであるが、残酷描写は色あせていない。中でも巨大ナイフで顎をゴリっと砕くシーンは魅力十分だ。

残酷描写だけでなく、主人公シンディと男2名のキャラの深さもしっかりと描いており、「残酷であればそれでいい」といった当時のメインスタイルとは一味違った作品に仕上がっている。特に、妻を殺された男タッカーが漂わせる哀愁はシンディも霞む勢いだ。

『クロムスカル』© 2009 DRY COUNTY FILMS,LLC.

本作には、なぜ「殺して撮る」のかが描かれた続編がある。そちらの公開も楽しみだ。続く3作目も企画されていたが、監督ロバート・ホールが2021年に亡くなってしまったため立ち消えとなった。

ちなみにロバート・ホールは、特殊メイク畑出身。彼の最後の仕事は、ベストセラー小説を映画化した『ザリガニの鳴くところ』(2022年)の特殊メイクアップデザイナー補である。

映画、特殊メイクに生涯をささげたロブを想いながら、14年間にわたって失われていた名作を楽しんでほしい。

『クロムスカル』© 2009 DRY COUNTY FILMS,LLC.

文:氏家譲寿(ナマニク)

『クロムスカル』は2023年5月12日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテほか全国ロードショー

「特集:24時間 最恐のサイコスリラー」はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年5~6月放送

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『クロムスカル』

2009年に完成、全編に繰り広げられる過激なバイオレンスの数々が話題となり世界中でカルト化し、続編も製作される人気作となりながら、あまりに強烈すぎる残酷描写で日本の配給会社やビデオメーカーが上映やリリースを躊躇し、未公開となっていた伝説のスプラッターがついに日本にやって来る。

監督・脚本:ロバート・ホール
出演:ボビー・スー・ルーサー ケヴィン・ゲイジ ジョナサン・シェック
   ルーカス・ティル ショーン・ウェーレン レナ・ヘディ
   トーマス・デッカー リチャード・リンチ

制作年: 2009