フークア監督はドラマ版を観ていなかった!「年寄りが観るものだと…」
同シリーズは放映開始直後こそ話題にならなかったが、徐々に人気番組となっていく。そしてシーズン2放送時には、当時の人気ドラマ『私立探偵マグナム』(1980~1988年)とのクロスオーバーも検討されるほどの人気ドラマとなり、最終的にはシーズン4まで放映された。
ちなみに、マッコールの疎遠になっていた息子の役で『ベスト・キッド』(1984年)、ドラマ『コブラ会』(2018年~)のジョニー役で知られるウィリアム・ザブカも出演している。
Edward Woodward and William Zabka in the 1986 2nd season premiere of the classic CBS TV series, The Equalizer. pic.twitter.com/ZkUfEqfXfE
— TV Time Machine (@TVTimeMachine) May 19, 2014
そもそも『ザ・シークレット・ハンター』の映画版リメイクの話は2005年からあり、その時点では『ラッキーナンバー7』(2006年)のポール・マクギガン監督作として企画されていた。
しかし、この企画は進展せず、2010年になると『007 慰めの報酬』(2008年)の脚本家ポール・ハギスが監督、ラッセル・クロウ主演作として企画されたが、これも実現せず。その後、ジェラルド・バトラー主演という案も出たが、最終的には『16ブロック』(2006年)や『エクスペンダブルズ』(2012年)の脚本家リチャード・ウェンクが書いた本作の脚本を読み、主人公ロバート・マッコール役に興味を示したデンゼル・ワシントン主演作として動き出す。
デンゼル「この映画が面白くなるかどうかは監督次第だ」
主演だけでなく、プロデューサーも兼任することになったデンゼル・ワシントンは、『イコライザー』の映画化に対して、こんな考えを抱いていた。
この脚本を普通に撮ってしまったら、普通のヴィジランテ映画になってしまう……。この映画が面白くなるかどうかは監督次第だ。
最初に監督のオファーをされたのは『ドライヴ』(2011年)のニコラス・ウィンディング・レフン。しかし、彼は契約条件に同意できなかったため、1か月後にプロジェクトから去ってしまう。次に『猿の惑星:創世記』(2011年)の監督ルパート・ワイアットに依頼するも、彼は別の作品に関わっていたため参加できず。『イコライザー』のプロジェクトは行き詰ってしまった……。
と思いきや、ワシントンの頭には、この企画にうってつけの監督が浮かんでいた。彼がゴリゴリの汚職デカを演じて、アカデミー賞主演男優賞を受賞した『トレーニングデイ』(2001年)の監督、アントワーン・フークアだ。
彼なら『イコライザー』を平凡なヴィジランテ・アクション映画にすることはないだろう。それに『イコライザー』はキャラクターだけでなく、舞台となる街も丁寧に描けないと失敗する。『トレーニングデイ』でロスの危険地帯を生々しく描いたフークアなら、この作品にうってつけだ! ワシントンは早速フークアに電話した。
しかし、『イコライザー』の監督アントワーン・フークアは当時、『ザ・シークレット・ハンター』を観ていなかったという。
その頃、僕は『特捜刑事マイアミ・バイス』(1984~1989年)を観ていたよ。『ザ・シークレット・ハンター』は、もっと年寄りが観るドラマだと思っていたんだ。
そんなフークア監督の発言を裏づけるように、映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)には、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公の年老いた両親が自宅のTVで『ザ・シークレット・ハンター』のオープニングを観ているシーンがある。なお同ドラマのオープニングテーマ曲を作曲したのはイギリスのロックバンド、ポリスのドラマーだったスチュワート・コープランドだ。
Steve Buscemi on a TV screen in THE WOLF OF WALL STREET (2013), in a clip from a 1987 episode of "The Equalizer." This is Steve Buscemi's only appearance in a Martin Scorsese film. pic.twitter.com/83KzNda5Ar
— Joe Dator (@JoeDator) March 24, 2023
フークアには「初老の男性が自警団になる」というフワッとした知識しかなかったが、依頼を受けるや「デンゼル・ワシントンが自警団になる男性を演じる映画!? それは面白くなるに決まってる!」と即決。こうして映画『イコライザー』は動き出した。
ちなみにフークアには微妙な評価をされた『ザ・シークレット・ハンター』だが、2021年からリメイク版ドラマ『イコライザー』が放送。主人公を英国紳士からシングルマザーの元CIA工作員ロビン・マッコール(クイーン・ラティファ)に変えた同作は好評を博し、国内では現在シーズン2まで放送されている。
👇【後編】に続く👇
文:ギンティ小林
『イコライザー THE FINAL』は2023年10月6日(金)より全国公開
『イコライザー』『イコライザー2』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「イコライザー イッキ観!」で2023年10月放送