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「ターミネーター」の愛しさと「ロボコップ」の切なさと、「新感染」の心強さ。機動戦士メカ母ちゃんに親孝行 Netflix『JUNG_E/ジョンイ』

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ライター:#デッドプー太郎
「ターミネーター」の愛しさと「ロボコップ」の切なさと、「新感染」の心強さ。機動戦士メカ母ちゃんに親孝行 Netflix『JUNG_E/ジョンイ』
Netflix映画『JUNG_E/ジョンイ』独占配信中

こうして映画について書かせて頂いているが、妻は俺が紹介する映画は絶対に見ない。
一緒に映画館に行っても観る映画は別々と、「現地解散スタイル」を貫いている。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』が公開された時のことだ。

「めちゃくちゃ良い映画だった。家族愛に泣ける」と絶賛していたのだが、妻は目を合わせることもなく、「ゾンビ映画やん。そんなしょうもない冗談いらんから」と全く信じてくれなかった。

数週間して俺の言ってることは真実だと証明されたわけだが、「俺は信用されてないんだな」としょんぼりしたものだ。

僕はこれからどうすればいいでしょうか?

と世の中に我が家の家庭の危機を発表したのはどうでも良いとして、『新感染』シリーズでお馴染みのヨン・サンホ監督の新作『JUNG_E/ジョンイ』がNetflixにて独占配信中だ。

『ターミネーター』の愛しさと『ロボコップ』の切なさと『新感染』の心強さがハイブリッドした一本だった。

 

地球の急激な気候変動により人類は宇宙にシェルターを作り移住。

しかし一部のシェルターが案の定自由を主張、ジオ…違った「アドリアン自治国」を名乗り地球や他のシェルターを攻撃。

連合軍とアドリアン自治国との内戦は何十年も続いた結果、世界は荒廃していた。

連合軍側の軍事AI開発会社であるクロノイド研究所のユン・ソヒョンは、
戦争を終わらせるため最強のアンドロイド兵士を作る計画のチーム長だ。

ジョンイ計画と名付けられた計画は、伝説的な傭兵の脳データを複製、戦闘用AIを完成させ、それをアンドロイドに搭載するというもの。

その伝説的な傭兵というのが子供の頃、肺がんを患っていたユンの医療費を稼ぐために戦い、
35年前負傷して植物人間となった母ユン・ジョンイだった。

Netflix『JUNG_E/ジョンイ』

この世界では脳をバックアップし、アンドロイド化する技術があるが予算に応じて3タイプに分かれている。

人間と準じた扱いを受けれるが高額なAタイプ

結婚や移動の制限があり、データを政府に提出する必要があるが安価なBタイプ

脳のデータを企業に売られる上に、肉体もクローンとして大量生産されるが費用はかからず、家族にもお金が入るCタイプ
※余談だが、もし俺がこの世界で生きていたらCタイプで契約したら、日本中のいたる所で俺のクローンが全裸にされたり川に投げ落とされたりするんだろうなと思った。

ソヒョンの医療費と教育費のためCタイプでクロノイドと契約していたジョンイは、
T-800やジャンゴ・フェットばりに大量生産されていた。

データ収集のため過酷な実験を繰り返しては失敗。

腕を切り落とされたり、分解されては次々と廃棄される機動戦士メカ母ちゃん。

ある日、会長に呼び出されて戦闘用AIの開発中止の連絡を聴かされるソヒョン。

内戦が終結することがわかり、戦後のビジネスとして家庭用AIの開発に舵を切るというお達しだった。

研究所に帰ってくるとメカ母ちゃんがいない。確認したところ、部下の部屋に搬出されて裸同然にされていた。

Netflix『JUNG_E/ジョンイ』

「てめぇ、人の母親を使って何をした!? 変なところがトランザムしてんじゃねーのか?」とブチ切れるソヒョンに対して、部下は
「ジョンイはフィギュア等グッズになるほどアイドル的人気がある」
「だから性的に活用されても価値がある」
「Cタイプで契約したのだから、どうしようが会社の勝手」
と返す。

ソヒョンは絶望しながら、実験で失敗したメカ母ちゃんの廃棄作業をはじめたところ、
メカ母ちゃんの脳のデータに未確認の領域があらわれる。

それは娘への愛だった。

初めて知る母の想いに一人研究室で号泣するソヒョン。

自分のために人生を投げうった母。今度こそ自分の人生を生きて欲しい。

というわけでソヒョンはメカ母ちゃんと脱走を決意。

結果、多くの戦闘用メカと激しい戦闘を繰り広げることになる。

明日のため、自由のため、親孝行が暴走する。

ディストピアとは言えど、劇中で出てくるジョンイのフィギュアがなぜかホットトイズばりの高いクオリティだったり、
脱出方法が「自由になれたとしてもお母さんキツ過ぎだろう!」と後先の事は全く考えていない展開など突っ込みたくなる点はいろいろあるが、それは野暮な話だ。

メカ母ちゃんと軍事用ロボとのハードな戦闘シーンをたっぷり堪能できる上に、
感動的な親子の絆も見れるんだ!文句言うな!

脳が人工的にデータ化されても娘への想いは失わない。ジョンイと、それを聞き号泣するソヒョン親子をめそめそして観賞するのが正しいスタイルだ。

Netflix『JUNG_E/ジョンイ』

アンドロイドにしても格差があり、ジョンイが大量開発されている理由が語られる背景は上手く練られた設定だし、
複製したデータとアンドロイドは果たして自分自身なのか?という哲学的なくだりもある。

さらに時間は約1時間40分、さすがだ。

『新感染 ファイナル・エクスプレス』で「ゾンビと親子愛」というありえないコンビネーションを成功させていたが、今回は「戦闘マシンと親子愛」。掟破りの天才だ。

本作を鑑賞して思ったが、ヨン・サンホ監督には是非とも『ターミネーター』や『ロボコップ』、強いて言うなら『ユニバーサル・ソルジャー』の新作を撮って欲しい。

これまで公開されてきた続編も決して悪くないが、どのシリーズも旧作が偉大というプレッシャーが原因で苦戦しているように思える。

ヨン・サンホ監督なら、常識にとらわれず最高にハートウォーミングかつバイオレンスな作品をリリースしてくれるはずだ。

もし、実際にヨン・サンホ監督がハリウッドに呼ばれたら絶賛してほしい。俺のことを。

文:デッドプー太郎

映画『JUNG_E/ジョンイ』はNetflixにて独占配信中

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