『キングスマン』『ナインハーフ』英ロック界の伊達男ブライアン・フェリーの音楽を堪能

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ライター:森本康治
『キングスマン』『ナインハーフ』英ロック界の伊達男ブライアン・フェリーの音楽を堪能
ブライアン・フェリー『ザ・ベスト・オブ・ブライアン・フェリー』(ユニバーサル ミュージック)
70年代グラム・ロックの一端を担った、ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリー。「イギリス音楽雑誌・Q誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」にも選ばれたフェリーだが、実は彼が映画に提供している曲は数多くある。

 

去る2019年3月11日と13日、英国ロック界のレジェンド、ブライアン・フェリーの日本公演が大阪と東京で行われた。ソロでの来日は2002年以来となる今回のライヴでは、自身のヒット曲やロキシー・ミュージックの代表曲など全23曲を演奏。御年73歳となった今もフェリーのダンディズムは健在であり、次々と披露される往年の名曲には円熟した味わいが備わっていた。ドラマ『ギフト』(97)の主題歌に使われた“TOKYO JOE”も加わったセットリストは、まさに「ベスト・オブ・ブライアン・フェリー&ロキシー・ミュージック」と言うべき充実の内容であった。

70年代初頭から今日に至るまで、ロック・シーンの第一線で活躍しているフェリーであるから、彼の曲が映画で使用される機会も多い。字数の都合上その全てを紹介することは出来ないものの、この場を借りてフェリー/ロキシーの曲が使われた代表的な作品や、個人的に思い入れのある作品をいくつか紹介させて頂きたいと思う。

近年、最も多くの映画ファンが耳にしたと思われるフェリーの曲は、『キングスマン』(14)での“スレイヴ・トゥ・ラヴ”ではないだろうか。彼自身も『キングスマン』のキーワードである“Manners Maketh Man”を体現するアーティストなだけに、この選曲には大いに唸らされた。ちなみに“スレイヴ・トゥ・ラヴ”は、ヒロインが危険な恋に身をやつす『ナインハーフ』(86)でも挿入歌として使われている。

映画のために新たにレコーディングした楽曲では、エリック・クラプトンの“チェンジ・ザ・ワールド”の陰に隠れてしまったものの、『フェノミナン』(96)に提供した“ダンス・ウィズ・ライフ”が珠玉のバラードとなっている。またデヴィッド・クローネンバーグ作品とブライアン・フェリーという異色の組み合わせが実現した、『ザ・フライ』(86)の挿入歌“Help Me”もチェックしておきたい。『ドラゴン・タトゥーの女』(11)でハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルスがカヴァーした“イズ・ユア・ラヴ・ストロング・イナフ?”の原曲は、フェリーが歌った『レジェンド/光と闇の伝説』(85)のアメリカ公開版主題歌である。ほかにも『ハネムーン・イン・ベガス』(92)の挿入歌“今夜はひとりかい?”(エルヴィス・プレスリーのカヴァー)や、『結婚の条件』(88)の“クレイジー・ラヴ”(ヴァン・モリソンのカヴァー)など、スタジオアルバム未収録のレアな曲も多い。

70年代グラムロック・ムーブメントの一翼を担ったロキシー・ミュージックは、「50年代/30年代的グラマーさとSF的未来の結合」をコンセプトとした斬新なサウンドで英国ロック界にセンセーションを巻き起こした。それゆえ『ベルベット・ゴールドマイン』(98)でも初期ロキシーの曲が使われているのだが、“2HB”、“レディトロン”、“ビターズ・エンド”、“ビター・スウィート”がトム・ヨーク、ジョニー・グリーンウッド、バーナード・バトラー、ポール・キンブル、アンディ・マッケイ(ロキシーのサックス奏者)らによって新たにレコーディングされているほか、劇中では“ヴァージニア・プレイン”も聴くことが出来る。また「どんな夢のような家庭だって、悩みを抱えているものさ」と歌われる“イン・エヴリ・ドリーム・ホーム・ア・ハートエイク”は、キム・ベイシンガー扮する幸薄そうな主婦の受難を描いたスリラー『アライブ』(08)の結末にダークな余韻を残していた。

演奏技術の向上を目指した中期ロキシーの代表曲“ラヴ・イズ・ザ・ドラッグ”は『カジノ』(95)で使われたほか、『華麗なるギャツビー』(13)でのブライアン・フェリー・オーケストラによるジャズ・カヴァーや、『エンジェル ウォーズ』(11)でのオスカー・アイザックとカーラ・グギノのデュエットによるカヴァーで鮮烈な印象を残している。『私が愛したギャングスター』(00)のサウンドトラックでは、フェリーのセルフカヴァーによる“マザー・オブ・パール”を聴くことが出来る。

より音楽的に洗練された後期ロキシーの楽曲は、『タイムズ・スクエア』(80)での“セイム・オールド・シーン”や、『マッチスティック・メン』(03)での“モア・ザン・ディス”などの使用例が挙げられるが、“モア・ザン・ディス”は『ロスト・イン・トランスレーション』(03)の劇中でもビル・マーレイがカラオケで歌っており、中年男性のロマンティシズムを感じさせる印象的な場面となっていた。なおソフィア・コッポラは『SOMEWHERE』(10)でも、フェリーがカヴァーした“煙が目にしみる”をエンドクレジットで使っている。

デヴィッド・ボウイやスティングのような俳優活動はほとんど行っていないフェリーだが、『プルートで朝食を』(05)は彼の怪演が観られる貴重な作品である。“レッツ・スティック・トゥゲザー”のミュージックビデオの時のような、細い口ひげを生やしたフェリーの姿はファン必見だろう。
最近はTVシリーズ『Babylon Berlin』(17)への楽曲提供と、キャバレーのシンガー役での特別出演で話題を呼んだブライアン・フェリー。同ドラマとのコラボ企画的な意味合いが強い彼のニューアルバム「BITTER-SWEET」は、自身の曲やロキシーの曲を1920年代風のジャズ・アレンジで「リ-メイク・リ-モデル」した滋味あふれる一枚となっている。

文:森本康治

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