ファンの声援によって映画化が実現した奇跡のアメコミ映画『デッドプール』の魅力を改めて振り返る

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ライター:杉山すぴ豊
ファンの声援によって映画化が実現した奇跡のアメコミ映画『デッドプール』の魅力を改めて振り返る
『デッドプール』©2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
2016年に公開されるや大ヒットを記録し、その後のアメコミ映画の新潮流を作った『デッドプール』。善悪の観念に縛られない自由すぎるキャラクター、デッドプールの誕生エピソードとアンチェインな魅力を改めて振り返る!

ディズニーがフォックスを買収! 今後のアメコミ映画はどうなる?

『デッドプール』©2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
TM and © 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.  All Rights Reserved.  Not for sale or duplication.

すでに多くのメディアで報じられていますが、ディズニーによる20世紀フォックス映画の買収が完了したようです。映画ファンにとっては(制作の可能性が示唆されている)『ボヘミアン・ラプソディー』の続編がディズニー映画になるのか? SF映画ファンにとってはエイリアンやプレデターがディズニー・ファミリーの一員になるのか? というのは興味深いところですが、アメコミ映画好きにとってはどうでしょうか。

20世紀フォックスが映画化権を持っているX-MENやファンタスティック・フォーといったマーベル・ヒーローたちがディズニー傘下になるので、いまディズニーが展開している『アベンジャーズ』映画路線(マーベル・シネマティック・ユニバース:以下MCU)にX-MENらを登場させることができるようになります。つまりウルヴァリンがアベンジャーズ入り! なんてことが可能になるわけです。

これはこれでワクワクするのですが、ファンが心配しているのが“デッドプール”の存在。あの過激な、アメコミ・ヒーロー映画としては珍しいR指定(15歳未満のお子様鑑賞厳禁)キャラ映画を、ディズニーが今後も作ってくれるのだろうか? ということでしょう(笑)。

そう、デッドプールはX-MEN系のキャラなのです。1991年にコミックでデビュー。不治の病におかされた傭兵ウェイド・ウィルソンが助かるために恐ろしい人体実験に志願します。それは、ウルヴァリン(X-MENのメンバーで驚異的な肉体回復・再生能力を持つ)の力を人為的に注入するというものでした。その結果ウェイドは不死身の体を手に入れるのですが、副作用で顔が醜く崩れ、その顔を隠すため赤いマスクを被っているわけです。この時からウェイド・ウィルソンとしての人生を捨て、デッドプールと名乗ります。赤いマスク姿こそ自分の本当の顔だと。

“第四の壁”を超えて読者に話しかける!? 規格外のキャラクター

『デッドプール』©2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

元は傭兵なのでお金次第で荒っぽい仕事をひきうけるし、殺人も辞さない。二刀流の日本刀の使い手で相手をたたっ斬るスプラッタな描写も多い。と、ここまで書くとアクションばりばりのバイオレンスキャラという感じですが、デッドプールがブレイクしたのは“第四の壁”を超えるという力を得てから。“第四の壁”というのは演劇用語で、演者たちが舞台から観客に話しかける演出手法のこと。デッドプールはコミックの中から読者に話しかけるようになったのです。

もともとデッドプールはおしゃべりという設定でしたが、人体実験の副作用でさらにエキセントリックになり、頭の中での会話も増えてきた。それがエスカレートして、ついに読者に向かって口を開いたわけです。こういうぶっ飛んだキャラなので、デッドプールもコミックはバイオレンスとギャグがブレンドされたユニークなものが多い。それゆえ熱狂的なファンが生まれたのです。

そして映画化を望む声が高まり、2016年ついに『デッドプール』が公開されました。コミック同様、デッドプールがスクリーンの向こうから観客に話かけるという手法もちゃんと採用され、流血バイオレンス満載の過激なアクション・エンタテイメント映画に仕上がりました。演じているのはライアン・レイノルズです。

実は、デッドプールの正体である傭兵ウェイド・ウィルソン自体は2009年の『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』に登場しており、ライアン・レイノルズがこの役にキャスティングされていたのです。この『-X-MEN ZERO』自体はシリアスな映画だし、またウェイドもそれほど重要な役ではなく、そもそも劇中ではデッドプールにはならなかったのですが、レイノルズの刀を使ったアクションがカッコよく、ファンの間で彼の出演によるデッドプールの映画化が望まれるようになりました。

20世紀フォックスも一時映画化を検討したのですが、結局このプロジェクトは頓挫。その理由は諸説あるのですが、2008年『アイアンマン』の大ヒットからMCUが始まり、アメコミ・ヒーロー映画がビッグビジネスになっていく中、カルト色の強いデッドプールは敬遠されたのかもしれません。要は映画会社は“当たらない”と思ったのでしょう。しかし2014年あたりから映画化の話が再燃し、まさかの実現。そして、まさかまさかの大ヒットとなりました!

『デッドプール』
ブルーレイ発売中
¥1,905+税
20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

お子さま厳禁の“R指定”ヒーロー映画を“アリ”にした功績

『デッドプール』©2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
TM and © 2016 Twentieth Century Fox Film Corporation.  All Rights Reserved.  Not for sale or duplication.

『デッドプール』が後のアメコミ・ヒーロー映画に与えた影響は大きい。例えば『スーサイド・スクワッド』(2016年)や『ヴェノム』(2018年)といった正統派ヒーローとは真逆の“お行儀の悪いキャラ”もの映画の先駆けとなったこと。そしてヒーロー映画=ファミリー・ピクチャーという常識をぶち壊し、R指定のヒーロー映画が“アリ”になったことです。

※続く『LOGAN/ローガン』(2017年)がR指定映画となりました。さらに、いまホアキン・フェニックス出演で制作されている『ジョーカー』(2019年公開予定)、次のハーレイ・クイン映画『バーズ・オブ・プレイ(邦題未定)』(2020年公開予定)もR指定映画と言われています。

 

アクロバティックなアクションとブラック・ユーモアともいえる流血バイオレンス、そして毒舌ジョーク炸裂のエンタテインメントですが、基本的なストーリーは“愛する人を守るためにデッドプールが立ち上がる”という正統派のヒーロー活劇。後味よく楽しめます。

最後に、この『デッドプール』についての深イイ話をご紹介しましょう。先ほど“まさかの映画化”と書きましたが、一度は映画化が見送られたものの、そのテスト映像がネットに流れ、これを見たファンたちが大騒ぎ。その声が映画会社を動かし、2016年の映画公開につながったのです。

だからライアン・レイノルズは「『デッドプール』はファンの声が作った映画だ」と公言し、至るところで感謝の言葉を述べています。そう、オタクたちのアツい想いが奇跡を起こした名作でもあるのです。

文:杉山すぴ豊

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『デッドプール』

呼んだ? クソ無責任ヒーローですけど、何か。
自己チュウで無責任な“R指定”ヒーロー降臨!!

制作年: 2016
監督:
出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • ファンの声援によって映画化が実現した奇跡のアメコミ映画『デッドプール』の魅力を改めて振り返る