“本能寺の変”当日に密着取材⁈『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』数億円の茶器は今どこに?

“本能寺の変”当日に密着取材⁈『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』数億円の茶器は今どこに?
『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』
デジタル配信中
©2013 TSH Film Partners

高3の秋とパンチパーマ

世界一、いや宇宙一どうでもいい話なのだが、最近わたしは髪の毛を伸ばし始めている。散髪にも3ヶ月は行っていない。私にとって3ヶ月はなかなかのもので、いつもなら最低でも月に1~2回は髪を切りに行って短髪のスッキリした頭にしていたのだが、それが3ヶ月も行っていないのである。正直この先どこまで伸ばすのか、伸ばしてどんな髪型にするのかまでは決めていないのだが、とにかく思いっきり伸ばしてみようと思っている。

高校まで野球をやっていたせいもあるが、子供の頃はずっと丸坊主頭だった。お袋が「散髪代がもったいないから」と買ってきた家庭用バリカンで月に1回、玄関先で頭からゴミ袋をかぶり、慣れない手つきのお袋に刈ってもらっていたのだ。あの頃はファッション坊主などの文化もなく、坊主頭には全く市民権がなかった。小中学生の頃ならまだいいが、高校生になると坊主頭は野球部か柔道部にしかいなくなる。

友達がいろんなムースやジェル、スプレーなどの整髪料をつけて髪のオシャレを楽しみはじめた頃、われわれ坊主頭は、せいぜいテクノカット風にもみあげを斜めにするくらいしかオシャレのしようがなかったのだ。

高校3年生の秋、部活も終わり髪もだいぶ伸び始めた頃、お袋が散髪に行って来いと言うので、お金をもらい、駅前にあったお客が殆どオジさんばかりの床屋に初めて飛び込み、人生初のパーマをかけてもらうことにした。伸びたといってもそこまで長くはないと思った私は、床屋のマスターに「アイパーをかけてください」と注文した。アイロンパーマならコテでクッと挟んで、後ろにグッと引っ張れば短めのショートリーゼントの様になると思って注文したのだ。しかし、床屋のマスターはなぜかコテで私の髪をくるくる巻き出した。私も初めてのパーマなので、これは最後に髪を洗って、ドライヤーで乾かせばシュッと後ろに伸びて、短めのリーゼントになるものだろうと思っていたが、出来上がったのは完全なパンチパーマだった。

頭の上も横も後ろも、くりくりのパンチパーマ。奈良の大仏様の様なパンチパーマの完成だ。お店を出ると、たまたま同級生にばったり遭遇し、私の頭を観るやいなや指をさして笑われた。それもそうだ、高校3年生の頭がゴリゴリのパンチパーマなのである。もちろん学校でもパンチパーマは大爆笑をとり、先生にこっぴどく怒られたことは言うまでもない。

そんな髪の思い出からのオススメ作品として、髪に特徴のある作品を紹介しよう。2013年公開の『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』だ。

『劇場版タイムスクープハンター』の“リアルちょんまげ”に拍手!

この作品は元々、NHK総合で放送されていたドキュメンタリー風歴史教養ドラマだった。それが人気を博し、劇場公開の映画版も制作されたのである。

要潤さん演じる、未来からやって来た時空ジャーナリスト・沢嶋雄一がいろんな時代にタイムワープして、様々な取材対象者に密着取材をするというモキュメンタリー手法で繰り広げられるのが、この作品の面白いところ。映像の撮り方も、時空ジャーナリスト沢嶋が自らカメラを手に取材しているという体裁で、よりリアルな感じが出ている。

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沢嶋は、未来に存在する架空の組織「タイムスクープ社」の第二調査部に所属している。この第二調査部は名もなき人々の営みを調査しており、歴史上の大事件や有名人物の調査を行う第一調査部とは取材対象が分かれている、という設定も面白い。なので、この劇場版でも戦国時代、しかも織田信長が家臣の明智光秀に討たれた“本能寺の変”の当日にもかかわらず、当時の有名武将は誰一人として登場しない。唯一、実在する人物は、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さん演じる博多の豪商、島井宗室だけだ。

『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』
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史実として、宗室は安土城で織田信長に謁見し、博多での商売を保護してもらう約束をつけ、その引き換えに自身が持っていた茶器の一つ“楢柴肩衝(ならしばかたつき)”を譲ることになっていた。その後、信長と一緒に本能寺に宿泊し、あの謀反に巻き込まれているのだ。映画の中では、楢柴肩衝を持った島井宗室を博多まで無事に送り届けることを託された織田方の侍、矢島権之助(演じるのは時任三郎さん)に、沢嶋が密着取材を行うというストーリーなのだ。

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さらにこの作品の面白いところは、テレビ版のときからほとんどの役者さんが、頭のてっぺんを剃り上げる本物の丁髷(ちょんまげ)、つまり“月代(さかやき)”にして出演しているのだ。聞くところによると、役者さんたちはこの作品に出られることに喜んで、進んで頭のてっぺんを剃り、撮影が終わると坊主頭にして帰っていったという。カツラではなく、実際の丁髷で撮影したいという監督の要望に応えた役者魂が素晴らしい。私はそんな『劇場版タイムスクープハンター』が大好きで、ぜひ続編を期待している。

天下三肩衝&三名槍……戦国“三大アイテム”トリビア!

さて今回の戦国雑学は、本作にも登場する茶器・楢柴肩衝について触れてみよう。楢柴肩衝とは抹茶を入れる茶壷のことで、“初花肩衝(はつはなかたつき)”、“新田肩衝(にったかたつき)”と並んで天下三肩衝と呼ばれた一つ。この楢柴肩衝は、もともと戦国時代初期の室町幕府八代将軍・足利義政の所有物だったが、義政の死後は主を転々とし、博多の商人・島井宗室が手に入れたのだ。それを織田信長が欲しがったので献上しようとしたが、本能寺の変で実現しなかった、というわけである。

その後も何人かの戦国大名から「大金を出すので譲ってほしい」と言われるのだが、宗室はこれを断り続ける。ちなみに楢柴肩衝の当時の価値を現在に換算すると、数億円以上と言われている。そんな名茶器もやがて豊臣秀吉の手に渡り、秀吉は楢柴肩衝、初花肩衝、新田肩衝の天下三肩衝をコンプリートしているのだ。さらに秀吉の死の間際に、楢柴肩衝は徳川家康に授けられ徳川将軍家の持ち物となるのだが、1657年の江戸時代初期、明暦の大火の際に破損し修復され、その後は行方がわからなくなっているという。なお現在は、初花肩衝は東京の徳川記念財団に、新田肩衝は水戸の徳川ミュージアムに所蔵されている。もし楢柴肩衝がまだ存在して、誰かが所有しているのならば、ぜひ天下三肩衝を並べて展示してもらいたいものだ。

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最後にもうひと雑学。戦国時代の天下三名槍についても書いておこう。この三名槍とは、御手杵(おてぎね)、日本号(ひのもとごう)、蜻蛉切(とんぼきり)のことだが、中でも私が好きなのが蜻蛉切。徳川四天王・本多忠勝が愛用していた槍で、戦場で立てかけていた槍の穂先に飛んできたトンボが真っ二つに切れたことが、蜻蛉切と呼ばれるようになった由来なのだとか。実は私は以前、この蜻蛉切の本物を江戸東京博物館で開催された大徳川展で一度だけ見ている。あの時は戦国好きがたくさん来ていて、蜻蛉切の前には黒山の人だかりとなっていて、なかなか順番が回ってこなかったことを覚えている。この蜻蛉切、2019年時点では個人所有だが、静岡県三島にある佐野美術館に寄託されている。

次に、日本号は別名「呑み取りの槍」とも言われており、その由来は、もともと天皇家の所有物だったものを、正親町(おおぎまち)天皇から室町幕府十五代将軍・足利義昭に譲られた後、信長~秀吉へと渡り、豊臣家臣の福島正則に与えられた。正則はこの槍を家宝としていたが、ある日、使者として正則の屋敷を訪れた黒田官兵衛の家臣・母里友信(もりとものぶ)の手に渡ることになる。正則は酒豪として有名だった友信に何度も酒を勧めたが、使者として来ていることを理由に断り続ける友信に次第にイライラし始め、「黒田家には豪傑はおらぬ!」と馬鹿にし、大きな盃に酒を注いで「これを飲み干したら何でも欲しい物をやる!」としつこく酒を強要。すると友信はその酒を一気に飲み干し、まんまと日本号の槍をもらったという話から「呑み取りの槍」と呼ばれるようになったのだ。ちなみにこの逸話を元に、福岡の民謡“黒田節”では「~酒は呑め呑め~呑むならば~日本一のこの槍を~飲み取るほどに呑むならば~これぞ真の黒田武士~」と歌われている。そんな日本号は現在、福岡市博物館の所蔵だ。

最後に御手杵。この槍は形が変わっており、槍の穂の長さが138cmと、かなり長い。そのため槍の鞘も長く、杵(お餅をつく時の杵の縦バージョン)のような形をしていたので、そこから名付けられたと言われている。もともと下総国結城の大名・結城晴朝が作らせ、結城家から川越松平家に受け継がれ、代々松平家の家宝として所蔵されていた。その後、昭和20年に東京・大久保にあった松平邸の所蔵庫に保存されていたが、東京大空襲で焼夷弾の直撃を受け焼失してしまう。戦後、焼け残った御手杵の復元を試みたが、ただの鉄の塊となっていたため不可能だったそうだ。

この日本三名槍も揃って見ることができないのだが、もし私がこの先、タイムスクープ社に入社できたなら、間違いなくこの槍の取材をするだろう。

文:桐畑トール(ほたるゲンジ)

『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』はU-NEXTほか配信中

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『劇場版タイムスクープハンター 安土城 最後の1日』

あらゆる時代にタイムワープして人々の生活を記録する時空ジャーナリストの沢嶋雄一。「本能寺の変」直後の京都を取材していた彼は、当時存在しないはずの武器で襲われて茶器を奪われる。彼は茶器を追って4つの時代を往来し、安土城消失の真相にたどり着く。

制作年: 2013
監督:
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  • BANGER!!!
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