シーツ姿の幽霊が慕情を誘う『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』

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ライター:BANGER!!! 編集部
シーツ姿の幽霊が慕情を誘う『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』
『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』©2017 Scared Sheetless, LLC. All Rights Reserved.
「死んだら人間どうなる?」誰もが一度は考えるであろう永遠のテーマに、新たな視点を与えてくれるかもしれない映画『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』が話題を呼んでいる。

寡黙な演出、時空を超える慕情

シーツをかぶった古典的な幽霊がぽつんと佇むメインビジュアルからして、誰もが「これは一筋縄ではいかない作品だぞ……!」と予想したであろう、デヴィッド・ロウリー監督の意欲作『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』が公開中だ。

交通事故で亡くなった夫(ケイシー・アフレック)が、残された妻(ルーニー・マーラ)のもとに幽霊となって現れ彷徨う……という筋書だけ聞けば、いわゆる『ゴースト/ニューヨークの幻』系ラブストーリーか、あるいは心霊ホラーをイメージするかもしれない。

実際、夫婦が深く愛し合っている描写はあるしホラー的な要素もないことはないのだが、なにしろ本作の幽霊はいわゆる“オバQ”的なルックスの持ち主である。しかも、夫の死を嘆き悲しむ妻は霊の存在を感じることすらできない。その結果、異質なビジュアルと静謐な佇まいとのギャップが観る者を不思議な感覚へと誘う、新鮮な驚きに満ちた怪作に仕上がった。

映画史上最長の“パイ貪り”シーン

まず定番の16:9ではなく、四隅が丸くカットされたスクウェアなスクリーン(アスペクト比1.33:1とのこと)を採用していることに気がつくだろう。最初は違和感を感じるかもしれないが、なんだか古いスライド写真をカシャカシャと観ているかのようで、長回しシーンの多い本作にとてもマッチしている。

セリフはとても少なく、夫婦のやり取りも大半が二言三言の言葉をかわすだけで、全て足しても10分に満たないほどの寡黙っぷり。説明的なセリフは一切ないし、もちろんナレーションもなし。そんな中、約4分間にわたって大きなパイを黙々と貪る妻の姿には面食らうはずだ。

ちなみに最も長いセリフを与えられているのは、Prognosticator(=予言者)という名の暗喩的なキャラクターをウザ味たっぷりに演じたウィル・オールダム。約6分半にわたって講釈を垂れる彼は、ボニー“プリンス”ビリーという名義でも活動するミュージシャンであり、十代の頃から俳優として多くの映画に出演している。

ケイシー演じる夫もミュージシャンという設定のようで、本作のスコアを手がけたダニエル・ハート率いるDark Roomsによる劇中歌「I Get Overwhelmed」を作曲する様子や、それを妻が聴くシーンが印象的に挿入される。寓話的な物語と、サン・ラックスやボン・イヴェール、アクティブ・チャイルド風の今っぽいサウンドとのバランス感にはやや違和感を覚えるものの、死別した夫婦をつなぐ重要なファクターとして非常に効果的な役割を果たしていると言えるだろう。

そんな『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』に、ロウリー監督が敬愛を公言するアピチャッポン・ウィーラセタクンや、近年のテレンス・マリック作品のテイスト、もしくは小津安二郎作品を想起する人もいるかもしれない。とにかく切なく淡々とした展開は好みが分かれそうなところだが、このユニークかつ独創的な世界観をぜひ劇場で体験してみては。

『A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー』公式サイト

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