燃え殻&森義仁「“つまらない大人”という呪い」Netflix映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』インタビュー【後編】

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ライター:BANGER!!! 編集部
燃え殻&森義仁「“つまらない大人”という呪い」Netflix映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』インタビュー【後編】
森義仁 燃え殻

SNSを中心に大きな話題を呼び、やがてベストセラーとなった自伝的WEB小説が、Netflixオリジナル映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』として2021年11月5日(金)より、全世界配信と同時に劇場公開される。

90年代のサブカルチャーをふんだんに盛り込んだ“エモい”恋愛小説で一躍人気作家となった原作者・燃え殻と、待望の実写映画化に抜擢された監督・森義仁。世代を超えて“共感”を呼び起こした『ボクたちはみんな大人になれなかった』について聞いた、インタビュー後編をお送りする。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

「原作のコアな部分を捉えるべきだと思っていた」

―映画版の主人公・佐藤はぶっきらぼう増しというか、原作よりもくたびれた感じもあって、自分から女性を誘うチャラさもありつつ、卑屈度も高い。そういったプラス要素もあったように見えましたが、そこは燃え殻さんのイメージと遜色なかったですか?

燃え殻:なかったですね。小説でも最初はチャラくはしていたんです、過去の自分が「童貞で……」みたいなところの真逆に飛ぶために。なので、全く違和感はなかったですね。もう20代から40代までの森山(未來=佐藤)さんに関していうと、むしろ違和感がないのが怖い(笑)と思いました。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

―お二人でキャタクターについて詰めていったわけでもなく?

燃え殻:森山さんって、すごく人のことを見る人で。僕、左利きなんですけど、一度飲みに行ったときに「あ、左利きですか?」とか言うんですよ。そうやって、ちょっとずつマネしようとしてくる。役作りというよりも、ある種“この生物を見ている”みたいな感じで。

―トレースされた?

燃え殻:トレースしていただいた、感じがしましたね。出来上がった映画を観たときに、もちろん容姿とかじゃなく……「なんか似てんな」と思いました(笑)。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

―大島優子さん演じる石田恵は映画オリジナルキャラですが、彼女の存在によって、どんな作用を狙ったのでしょうか?

:まず脚本の構成を、原作のように少しずつ回想していくのではなく、2020年からどんどん遡っていく構成にしたんですが、その“あいだ”をちゃんと描きたいなと。そう思ったときに、佐藤にはかおりっていう絶対的な人がいて、スーっていう幻みたいな人がいたけれど、絶対にその後の恋愛もあるよね、っていう。やがて佐藤自体も“汚れた大人”になってはいくけれど、同時に社会的地位は上がっていくわけで、やっぱり結婚とか離婚、そういったニオイがあったほうがいいよねということを、脚本家の高田(亮)さんと話していたんです。

「なかなか結婚できない」というこの業界の“あるある”は僕の経験でもあるんですけど、色々な結果がある中で「結婚」というワードは感じさせたかった。結婚するにしてもしないにしても、そういうことって大人として生きていれば自然と考えるわけで、佐藤という人が無意識にズレた道を歩いている、その指標にできる存在として恵が分かりやすい効果を現すんじゃないか、っていうところからですかね。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

―佐藤の盟友である関口賢太(東出昌大)も、小説版より直接的な誘導役というか、自身で選んだ道を歩んでいく人間として描かれていますね。

燃え殻:同じ釜の飯を食った人間が、出ていく/出ていかないという選択をする……僕らはほとんど団子みたいな感じになって生きてきてたので、ああやって辞めていく人間もたくさんいたんです。その時の心情としては、「俺だって……」と「いや、もうちょっと一緒にいようぜ」の両方なんですが、その“もうひとつの自分”が選ばなかった選択肢が関口の歩んだ人生だった、みたいな。

それは小説でも書きたかったことなんですが、映画ではもっとクリアに見えた。「あ、自分が書きたかったワードはこれだ」って、それじゃ小説家としてダメなんだけど(笑)、そう思いましたね。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

―そういった改変ポイントが、無意識に自覚していた部分として、映像化によって形をもって立ち上がってきた?

燃え殻:そうですね。

:初監督作でこんなことを言うのもアレなんですが、原作ものだけどすごく共感できるし、原作もの映画じゃないという感覚がすごくありました。特に後半の方は、原作はこうだからこうする、っていう発想がほぼなくて。

―共感できるという部分では、読後に「僕/私の話を聞いてくれませんか」「僕/私の場合はこうだったんです」みたいな気持ちになることが、本作がベストセラーになった理由の一つだと思いました。そういった作品だけに、映像化の際には「なんか思ってたのと違う」と感じてしまう人もいるものですが、本作に関しては意外とそういった部分も、それほど大きな問題ではないのかなと。

:僕自身が原作のコアな部分を捉えるべきだと思っていたので、もちろん90年代の匂いとかはしっかり再現しながらも、変な言い方になりますけど“人間としての共感ポイント”を映像化するというか。いい意味で原作を無視しながら作ったし、燃え殻さんも、それをなんとなく許してくれている気はしたので……(笑)。

燃え殻:それはもう、そうですね。

:むしろ燃え殻さんが、そういうものを観たいんじゃないかなと勝手に思ってたというか。

森義仁 燃え殻

―燃え殻さんが、ご自身の経験をベースに小説という形で“提案”して、それを読んだ人たちがそれぞれ「自分はどうだったかな」と省みるというか、“自分を投影するコンテンツ”になっているような気もします。

燃え殻:あぁ、そうかもしれないですね。“問い”みたいなものというか。

:映画版でもそう思いました?

―おもしろい小説とおもしろい映像化は、どちらを先に体験しても成立するものだと思うんですが、今回の改変ポイントも、要所に“90年代の絶妙にダサくてグッとくるポイント”をちゃんと置いてくれているので、むしろ改変に気づかない人もいるのでは、と思いました。

:そういう意味では、自分でも覚えていないくらい変えた部分はたくさんあって、映像化したかったけどできなかったこともいっぱいあったんですよ。あの“待ち合わせの場所”も渋谷のど真ん中にすべきだったけど……とか。だけどコアな部分だけは捨てなかったので、結果的にはいい意味で“濃く”なった気がしましたね。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

「“つまらない大人”というキラーワード」

―本作はcakes掲載のWEB小説からNetflixオリジナル映画となったわけですが、WEB版からの小説出版、Netflixからの劇場公開という、順序が逆というか媒体が遡るというか……。

燃え殻:ははは。

―括りが大きすぎる質問で申し訳ないんですが、燃え殻さんは、エンタメコンテンツが今後どうなっていったらおもしろいと考えていますか?

燃え殻:でかいっすね……(笑)。ただ今回は、小説で終わらせなかったことが本当に良かったなと思ってます。いま小説も、例えば音声だったり色々な形を試そうとしていると思うんですけど、そうあるべきだと思っていて。日々の生活において、時間とか様々な制約がある中でこれだけエンタメに溢れているわけだから、何かしらのきっかけで気になってくれたらいいなと。小説からでもいいし、映画からでもいい。これが漫画になったらどうなるんだろう、これが地上波の夜だったらまた違うのかな? とか。

切り取り方はそれぞれ違うと思いますが、そういう形でコンテンツとしてグルグル回るみたいなことって、自分が観たいからでもあるんですけど、僕としては理想なんですよ。『ボクたち~』に関して言うと、それがとても幸福な形で実現した気がしますし、これからもそういうものが出てくるような気がしています。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

―映画は「46歳、つまらない大人になってしまった」という言葉から始まりますが、お二人が思う「おもしろい大人」とは?

燃え殻:おもしろい大人……なんだろうな……。

:あれは僕が考えたんですけど、原作にはないんですよ。以前、ラジオに出演したときにも質問されて答えられなかったんですけど、それって“分からない”ことじゃないですか。でもこの映画を観るにあたって、そういうものを模索してほしいという気持ちがあって。「大人ってなんだろう」「僕/私って、どうなっていくのかな」「どんな風に生きてきたのかな」とか……。

ただ、ああいう言葉は世の中の人に異常に刺さる気がしちゃって(笑)。もちろん大人っぽい高校生も子どもっぽい40代もいるんですけど、そういう自分の考えや生き方をちょっと考えるきっかけになるといいなと思って。この「つまらない大人」っていうのは結構なキラーワードで、その言葉だけで「自分のことだ」って思っちゃう人、世の中にめちゃめちゃいるんじゃないかなと。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

燃え殻:かおりが言う「おもしろい」みたいな、人から言われる言葉に近いというか。「つまらない大人だね」って言われたら「つまらない大人なのか、俺は」って思ってしまうじゃないですか。その“他人からのジャッジ”で僕らは決まってると思うんです。

たいしておもしろくもないのに「君はおもしろいよ」って言われて、その呪いで一生懸命がんばる。それと一緒で、「お前はつまらない大人だよ」って言われないために、その呪いをかけられないために一生懸命がんばる、みたいな。でも薄々思うんですよ、「あれ? なんか俺すげえ迎合してるな、世の中に」とか。でも「まだ人から言われてないからノーカウント」って思いながら(笑)。

『ボクたちはみんな大人になれなかった』©2021 C&I entertainment

:他人に対しては、なかなか言えない言葉ですよね。

燃え殻:言えないですよね。でも、みんなつまらない大人だけど、どのくらい他人にバレてるのかな? っていうところもあるじゃないですか。だから誰もが、周囲にバレないようにバレないように……ってやってるんじゃないかな。

:すごく難しいですね。

燃え殻:うん、難しい。

森義仁 燃え殻

『ボクたちはみんな大人になれなかった』は2021年11月5日(金)よりシネマート新宿、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほかロードショー&Netflix全世界配信開始

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『ボクたちはみんな大人になれなかった』

1995年、ボクは彼女と出会い、生まれて初めて頑張りたいと思った。「君は大丈夫だよ。おもしろいもん」。初めて出来た彼女の言葉に支えられがむしゃらに働いた日々。

1999年、ノストラダムスの大予言に反して地球は滅亡せず、唯一の心の支えだった彼女はさよならも言わずに去っていった――。

志した小説家にはなれず、ズルズルとテレビ業界の片隅で働き続けたボクにも、時間だけは等しく過ぎて行った。そして2020年。社会と折り合いをつけながら生きてきた46歳のボクは、いくつかのほろ苦い再会をきっかけに、二度と戻らない“あの頃”を思い出す……。

制作年: 2021
監督:
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