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「午後ロー」作品のモットーは“観終わってすっきり爽快!”最高視聴率はあの映画!(2/2)

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ライター:#BANGER!!! 編集部
「午後ロー」作品のモットーは“観終わってすっきり爽快!”最高視聴率はあの映画!(2/2)
「午後のロードショー」2019年4月25日(木)放送:2日連続!トニー・スコット監督作!『スパイ・ゲーム』©2001 BEACON COMMUNICATIONS,LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
ときに予期せぬ“心の1本”との出会いを与えてくれるテレビ東京で平日13:35~放送されている、地上波映画枠「午後ロードショー」。そんな“午後ロー”での常連作品、さらには番組担当者のアツい想いを、午後ローファン代表として市川力夫氏が聞き出す!

「爆破するぞ! ドーン!!」……の直前にはCMにいかないように

「午後のロードショー」前プロデューサー夏目健太郎さん(写真左)/現在はBSテレビ東京 編成局、現プロデューサー渡邉一仁さん(写真右)/テレビ東京編成局 映画部

―決められた放送枠に映画を収める作業というのも難しいことだと思うんですが、カットする場面というのはどうやって決めていくんでしょうか?

渡邉(「午後のロードショー」現プロデューサー):私たちはプロデューサーという形で番組に関わっているんですが、ディレクターが何人かいまして、ディレクターと相談しつつ決めていますね。

夏目(「午後のロードショー」前プロデューサー):あとは「木曜洋画劇場」で一度放送していた作品だったりすると、配給会社さん的にもカット案として一度OKを出しているものなので、そのまま放送することはあります。

渡邉:一度地上波で放送された作品というのは、配給会社さんの方で2時間枠にカットされた素材を持っていたりすることがあるんです。

―そうなんですね! あと、テレビ放送ならではですがCMが入るタイミングはどうやって決めていくんですか?

夏目:とにかく「あざとくないように」というのは決めていました。なのでシーンの切れ目で自然な形でCMに行くようにしています。例えば「爆破するぞー! ドーン!」の「ドーン!」の直前にはCMにいかないようにしています。

―バラエティ的に引っ張るようなことはしないんですね。

夏目:そこをあざとくやると視聴者の方々に嫌われちゃいますからね(笑)。それと、爆発の前なんかでCMに入ったりすると、作品の流れを壊すことになりかねないですからね。

『シャークネード』放送中に竜巻が発生! 災害・事件などでやむなく差し替えも……

―昨今ではコンプライアンスが厳しくなってこれまで普通に放送していた映画が放送できなくなったことなどはありますか?

夏目:それこそ昔は『エマニエル夫人』がバンバン放送されていましたからね。

―たしかにそうですよね。例えば女性の乳首が写ってるとアウト、などベッドシーンなどのカットの基準などはあるんでしょうか?

渡邉:そういう流れはありますね。ただ絶対にダメかと言われるとそうでもないんです。

―え!

夏目:あくまで局側の自主規制ですね。ただ、それがキッカケで話題になってもネガティブキャンペーンになってしまうので、ネガティブな方向で話題にならないように気は使います。「午後ロー」はせっかく良い枠として皆様から愛されていますので、たまたまテレビをつけて観た人が「けしからん!」ということで騒がれるともったいないことになってしまいます。

―菅原文太さんや高倉健さんの追悼特集では、なかなか地上波では放送しにくいであろう『トラック野郎』シリーズや『網走番外地』シリーズなどが放送されて映画ファンは驚きました。

夏目:『トラック野郎』シリーズについては、シリーズおきまりのソープランドが登場しない作品を選んでいます。『網走番外地』については作品本位で選びましたが、言葉の問題や過激な暴力シーンなどを配慮し、一部カットしたものもありました。

―バイオレンス描写の規制に関してはどのようなことを気をつけているんでしょうか?

渡邉:例えば劇場公開の際にR15指定がついていても「午後ロー」で放送することはあるんです。でもその場合、例えば銃撃戦の最中に撃たれて手がふっ飛んだりするような描写はカットしたりしています。

夏目:体の切断面が見えたり、パーツがなくなるものはなるべくカットする方向ですね。

渡邉:ただそれもケースバイケースといいますか。例えば頭を撃たれてもグロく見えるのか、見えないのか。そこを基準に考えています。

―明確になにかルールに則っているわけではなく、そのシーンの演出にもよるし、観た人がどう受け取るかということを重視している、ということですか?

夏目:おっしゃる通りです。放送禁止用語などもそうですね。なるべく避けるけど、作品の時代背景的にどうしてもカットできないものがある場合もあります。そういった場合は我が局にも審査部というのがありまして、そこに相談しつつ慎重に放送しているんです。

―アクション映画が多い「午後ロー」なので、そのあたりの苦労は多そうですね。

「午後のロードショー」2019年4月26日(金)放送:2日連続!トニー・スコット監督作!『ラスト・ボーイスカウト』  © Warner Brothers Entertainment, Inc.

夏目:そうですね。ほかには、放送する映画に似た事件が起きてしまうとすぐに差し替えています。とくに被害者のいる事件では、事件を思い起こさせるようなことがあってはならないので配慮しますね。

―過去に急遽の差し替えってどれぐらいあったんでしょうか?

渡邉:だいたい年に1回はありますね。

―そんなにあるんですか!

渡邉:一昨年『シャークネード』放送中に竜巻が起きてしまい、ちょうど画面に竜巻が出ているシーンの最中に現実の竜巻注意情報が出まして……。ツイッターで騒ぎになったりとかはありましたね。あと『エンド・オブ・ホワイトハウス』の放送2日前に北朝鮮がミサイルを撃ってしまいまして……。

―なんとタイムリーな……。北朝鮮のテロリスト集団がホワイトハウスを襲う映画ですもんね。

渡邉:さすがにそのまま放送すると社会不安を煽るということで差し替えました。

最高視聴率を記録したのは……意外にもこの作品!

―ちなみに、「午後ロー」の長い歴史の中でいちばん視聴率が取れた映画って何でしょうか?

夏目:エディ・マーフィの『ゴールデン・チャイルド』が6.8%(ビデオリサーチ 世帯視聴率 関東地区)を取ったことがあるんです。

―意外です! そこまで人気のある作品とは思えないのですが……。

夏目:2004年12月29日なのですが、その日は雪の日だったんです(笑)。

―年末だし、みんな家でテレビを観ていたんですね(笑)。逆に、まったく誰も観てない……という作品ももちろんあるわけですよね?

夏目:僕が担当していた当時に一度だけ0.いくつとか出したことありますね……。

渡邉:え! いまはそこまで低いことはさすがにないですね(笑)。

夏目:そのときはさすがに上からもお叱りを受けましたね(笑)。ジャック・ニコルソンのコメディ調ロードムービーも数字的に芳しくなかったです。

―では、これまでいちばん放送回数の多い作品はなんですか?

夏目:一番放送回数が多いのはセガールの『沈黙の要塞』で7回ですね。次に『アウト・フォー・ジャスティス』などが入ります。シュワルツェネッガーの『コマンドー』も、おそらく5回ぐらいは放送してると思います。

―やはりシュワルツェネッガーだったりセガールだったり、スターが立っているアクション映画が人気ですか?

夏目:そうですね。やはり視聴者の方々も安心感があるでしょうし、こちらとしても安心感があります。シュワルツェネッガーにしろセガールにしろ、基本1人で巨大な敵に立ち向かっていくじゃないですか。『暴れん坊将軍』とか『破れ傘刀舟悪人狩り』とか、日本人に馴染み深い時代劇にも通じるような楽しみ方ができますから。観終わってスッキリ感がある作品が人気ですね。『ガントレット』や『シノーラ』など、イーストウッド作品も強いです。

―ここ数年、ツイッターなどのSNSで視聴者が実況しながら観るような、新しい映画の見方もでてきています。そういったことが作品選びに影響したりすることはありますか?

渡邉:そうですね。SNSの反響を見込んで放送する場合も出てきています。昨年の夏ぐらいから「午後ロー」公式ツイッターも始めて、秋ぐらいに『コマンドー』を放送したんですが、そのときはかなり盛りあがりましたね。

―個人的にも大好きですが、『コマンドー』ってなんでそんな盛りあがるんですかね(笑)。

渡邉:映画自体もさることながら吹替が素晴らしいんですよね。『コマンドー』ファンって吹替を完璧に覚えている人がけっこういて、「このあと、◯◯◯◯◯が来る!」ってツイートが溢れかえったりしていました(笑)。それと、『トップガン』も実況が盛りあがりましたね。前に放送したときは、在日米軍の広報部の方達が「いま『トップガン』をやってる!」みたいなことをツイートしてくれたり(笑)。そういうことが起きると、時々ネットの検索ワードランキングや話題のツイートランキングなどで上位に入ったりしてますね。

視聴者との“キャッチボール”こそがテレビ放送の醍醐味

「午後のロードショー」2019年4月23日(火)放送:海洋パニック大作!『ポセイドン』© Warner Brothers Entertainment, Inc.

―地上波の映画枠が各局なくなってきている中で、自宅で映画を観る手段は配信サービスなどに変わってきています。でも、個人的には「偶然テレビで観ちゃった」という事故にも似た映画との出会いって忘れがたいものが多くて、それこそがテレビ放送の醍醐味だと思っているのですが、こういう世の中だからこそテレビで映画を放送する意義みたいなものは感じておられますか?

夏目:そうですね。DVDレンタルや配信だと、映画ってたくさんあってどれを選んで良いかわからない人がいると思うんです。でも、こちら側が「これはいかがでしょう?」と提案することで、「たまたま観たら面白かった」という方もいっぱいいると思うんです。テレビって一方的に提供する立場にはなってしまいますが、視聴者の方々は「面白い」「つまらない」などそれぞれにとっての感想が生まれます。提供する側と受け取る側、この間でキャッチボールが生まれることがテレビ放送の醍醐味だと思いますね。

渡邉:世界中から日本に入ってくる映画って、ものすごい数があるんですよね。その中から劇場公開、さらにDVD化と絞られていって、そこからさらに絞られて「午後ロー」での放送なので、ある意味厳選に厳選を重ねているんです。なので、もちろん観る人によってツボにはまらないケースもあると思うのですが、「午後ロー」でかかる映画はある一定のクオリティ、面白さは保証できる映画たちだと思っています。こちらとしては普段映画をあまり観ない方達にも観ていただきたくて試行錯誤を繰り返しています。あと、最近では過去の名作、例えば去年の年末には『荒野の七人』や2019年2月に『大脱走』を放送時間を3時間に拡大して放送しました。そういったものが若い世代にも確実に届いていて、若い方々が「スティーヴ・マックィーンかっこいい!」といったツイートをしてくれているのを観たときは嬉しかったですね。

―テレビでの映画放送って未来の映画ファン、もっと言うと未来の映画監督を産むキッカケになっていたりしますよね。

夏目:昔は『大脱走』といえばテレビでは定番の映画だったんですが、今では観る機会がほとんどなくなってしまっていますからね。そういう機会を作れるというのは嬉しいことですよね。

―大人になればなるほど“午後2時から家で映画を観られる”ということが、いかに贅沢なことかわかってきましたので、いつまでも続いて欲しい! というのが一ファンとしての気持ちです。今日はありがとうございました!

取材・文:市川力夫

「1日10本立ても……」『午後ロー』作品チョイスの知られざる真実!(1/2)

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