凶悪犯罪者(と加齢)と闘うスーパーコップ映画!『ダルバール 復讐人』 80年代の“ワルい”ラジニカーント再び!!

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ライター:安宅直子
凶悪犯罪者(と加齢)と闘うスーパーコップ映画!『ダルバール 復讐人』 80年代の“ワルい”ラジニカーント再び!!
『ダルバール 復讐人』

2018年本国公開の『ロボット2.0』から約2年ぶりに、ラジニカーントの新作『ダルバール 復讐人』が劇場公開されます。メガホンをとるのは『アキラ』(2016年)、『サルカール 1票の革命』(2018年)のA・R・ムルガダース監督。タミル語映画界を代表するヒットメーカーの一人ですが、ラジニ作品を手掛けるのは初めて。この二人のコラボから何が生まれるのか、公開に当たっては現地でも期待がふくれ上がっていました。

『ダルバール 復讐人』

伝説の“あのジングル”はどうなった?

まずはオープニング、ラジニ映画でお馴染みの「SUPER STAR RAJNI」のロゴの登場。これは1982年の『アンナマライ』から始まったもので、以降は監督が変わっても引き継がれる名物となっています。しかし、本作冒頭ではロゴが表示されても無音。「ヘイ! ヘイ!」から始まる有名なお囃子はありません。

これは寂しいのではと思っていると、本編でひっくり返されます。サントーシュ・ナーラーヤナンと並ぶ、現在のタミル語映画界のトップ音楽監督アニルドが、劇中BGMとして、さらにはソングの間奏として、かつてないクールさでこのジングルを展開しています。現地公開時には劇場が大いに沸いたことでしょう。

『ダルバール 復讐人』

勧善懲悪の活劇とほろ苦い加齢の悲しみ

ストーリーは、ムンバイ市の警察本部長として赴任したアーディティヤ・アルナーチャラム(ラジニカーント)が、麻薬取引と人身売買のマフィアと戦ううちに、27年前の3月12日に起きた忌まわしい事件の首謀者である大元締めの男と直接対決することになるというもの。ちなみに本作とは無関係ですが、1993年3月12日というのは、ムンバイで実際に起きた無差別連続爆弾テロ事件の日付です。

彼は、一人娘のヴァッリ(ニヴェーダ・トーマス)と暮らすやもめですが、偶然出会ったインテリア・デザイナーの女性リリー(ナヤンターラ)に心惹かれるようになります。リリーは33歳ぐらい、対してアーディティヤは50代半ばというあたりでしょうか、スマートウォッチで常に体調をモニタされている初老の男として描かれます。

『ダルバール 復讐人』

本作のメインプロットは、正義の警察官と冷酷無比な犯罪者との闘いという勧善懲悪なのですが、サブプロットとして年齢との戦いという要素もあり、年齢を理由にアーディティヤが拒絶される複数の場面ではホロリとさせられます。これまで多く作品で年齢不詳の超人を演じてきたラジニカーントが、老年の入り口(それでも実年齢よりはずっと若いのですが)にあるキャラ設定で、しかもそれによってチャレンジを突き付けられるというのは珍しいことです。

80年代のギラつく悪役の面影

さて、勧善懲悪と書きましたが、本作には1980年代にラジニが演じたギャング像への郷愁を誘う楽屋落ちも同時に見られます。ハードな殺人マシーン・モードでギャングたちを大物も小者も容赦なく叩き潰し、あっけにとられる周りに対して「俺様は元は悪役よ」とうそぶくカッコいいシーン。これは俳優ラジニが悪役から出発したことを言っています。

『ダルバール 復讐人』

ラジニはトップヒーローとなってからも、時にギラギラとした犯罪者やクールなドンの役を演じてヒットを飛ばしてきました。その路線の代表作は『Billa』(1980年:未公開)、『Ranga』(1982年:未公開)、『バーシャ! 踊る夕陽のビッグボス』(1995年)です。シャンカル監督とラジニのコラボの『ボス その男シヴァージ』(2007年)でも、物騒な演出のソング「Athiradi」の中で「俺はビッラでランガでバーシャなのさ」と歌われていました。

実はビッラ&ランガとは、1978年にデリーで実際に起きた誘拐殺人事件の二人の犯人の名前です。ラジニはこの事件の記憶もまだ新しい時期に、忌まわしい響きを持った名前をもつ犯罪者を演じていたのです。本作では、ビッラ&ランガがどんな形で出てくるのか注目です。

見どころ盛りだくさんのお祭り映画

その他にも、 『チャンドラムキ 踊る!アメリカ帰りのゴーストバスター』(2005年)で大抜擢されラジニの相手役を演じた新人女優ナヤンターラが、歳月を経て「レディ・スーパースター」となり再びラジニの前に登場すること、2020年9月に新型コロナウイルス感染症で惜しくも亡くなった不世出の大歌手S・P・バーラスブラマニヤムの声が聞ける「やってやれ!」ソング、ヴァッリ役のニヴェーダ・トーマスの心揺さぶる演技など、エモーショナルな要素も盛り沢山。さらにはムルガダース監督お家芸の、現在のタミルナードゥ州の政治に対する容赦ない批判などもトッピングされ、見どころがてんこ盛りで書ききれません。

『ダルバール 復讐人』

ラジニ映画の祝祭感に合わせて、本稿もパンチライン(決め台詞)、それも謎系の一発で〆たいと思います。「バンコクのお巡りさんのラジニ芸を見逃すな!!」

文:安宅直子

『ダルバール 復讐人』は2021年7月16日(金)より2週間限定公開

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『ダルバール 復讐人』

政府高官にその手腕を見込まれ、ムンバイ市警察長官に就任したアーディティヤ・アルナーチャラム。最愛の娘ヴァッリとともに赴任したが、ムンバイでは麻薬がはびこり、女性を誘拐し、売春を強要する事件が多発していた。州副首相の娘らも誘拐され、捜査にあたったアーディティヤは、この機に麻薬密売組織の壊滅をめざして徹底的に摘発する。そのため組織の恨みを買い、娘と共に襲われる。大切な者を奪われたうえ犯人が特定できない状況に、怒りを爆発させたアーディティヤは警察官としての正義を捨て、復讐人と化す!

制作年: 2020
監督:
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  • BANGER!!!
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