『ボヘミアン・ラプソディ』最多4賞、3作品が3賞ずつ分け合う!激戦の第91回アカデミー賞を振り返る

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ライター:齋藤敦子
『ボヘミアン・ラプソディ』最多4賞、3作品が3賞ずつ分け合う!激戦の第91回アカデミー賞を振り返る
亡きフレディ・マーキュリーに代わってアダム・ランバートが歌うクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」で幕を開けた授賞式は、確実視されたグレン・クローズが主演女優賞受賞を逸し、本命『ROMA/ローマ』を抑えて『グリーンブック』が作品賞をさらい、初の栄誉に驚喜するスパイク・リーが波乱の回を締めくくった。

ネット配信作が長編で賞を獲るのは、そう遠くない未来か?

HOLLYWOOD, CALIFORNIA – FEBRUARY 24: Alfonso Cuaron accepts the Best Director award for ‘Roma’ onstage during the 91st Annual Academy Awards at Dolby Theatre on February 24, 2019 in Hollywood, California. (Photo by Kevin Winter/Getty Images)

今年の注目は、最多10部門ノミネートの『ROMA/ローマ』がどこまで受賞数をのばすかにあった。初のネット配信作品として、2018年のヴェネツィア映画祭で金獅子賞を受賞以来、快進撃を続けてきた作品だが、結果的にアルフォンソ・キュアロンの撮影賞と監督賞、それに外国語映画賞の3賞に終わり、肝心の作品賞は『グリーンブック』にさらわれてしまった。
実は、2019年2月のベルリン映画祭でも初めてNetflixが製作したイサベル・コイシェの『エリサとマルセラ』がコンペに登場したのだが、そのプレス上映の際、NetflixのNのマークが出た途端にブーイングが出て、ネット配信映画が必ずしも歓迎されているわけではない雰囲気を感じた。映画館で上映する手間をかけずに収入が得られるネット配信は、ハリウッドの大手スタジオにとっては手強い競争相手だ。今回はスピルバーグのネット配信映画批判も投票に影響したはずだ。とはいえ、短編ドキュメンタリー部門ではNetflix製作の『ピリオド 羽ばたく女性たち』が受賞しているし、資金を集めるのに苦労している映画監督にとっては救世主的存在であり、いずれネット配信映画が長編でも作品賞を受賞する日が来るだろう。

授賞式の前半は、“白いアカデミー”と揶揄された3年前が嘘のよう。『ビール・ストリートの恋人たち』のレジーナ・キングの助演女優賞を皮切りに、『ブラックパンサー』が美術、衣装デザイン、作曲の3賞、『グリーンブック』のマハーシャラ・アリが助演男優賞、『ブラック・クランズマン』のスパイク・リーらが脚色賞と、ブラックパワーが炸裂した。
結果的には取りやめになったが、人気映画部門の新設が取りざたされるくらい、ヒットした映画の栄誉をたたえたいと考えている会員たちの票が『ブラックパンサー』と『ボヘミアン・ラプソディ』という2本の大ヒット映画へ流れたように思われる。
特に『ボヘミアン・ラプソディ』の世界的な大ヒットとクイーンの人気再燃は賞の追い風になった。製作途中から何度もトラブルが噂され、撮了間際に監督のブライアン・シンガーが解雇されるという事件もあって、ポストプロダクションがどれほど大変だったかは想像に難くなく、録音、音響編集、編集の3賞は当然だったが、ラミ・マレックの主演男優賞までは想像できなかった。これもフレディ・マーキュリーのカリスマ性とトラブルのおかげと言ったらマレックに失礼か。

スパイク・リーには心から賛辞を送りたい

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Finally.

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ノミネート数では『ROMA/ローマ』と並んでいた『女王陛下のお気に入り』だが、結果的にはオリヴィア・コールマンの主演女優賞のみに終わった。とはいえ、絶対本命と言われたグレン・クローズを抑えての受賞はとても大きい。作品を気に入った人たちの票が彼女ひとりに集中した感があった。気さくな人柄が滲み出たオリヴィア・コールマンの感動の受賞スピーチと、嬉しさのあまりサミュエル・L・ジャクソンに飛びついたスパイク・リーが授賞式のハイライトだった。
スパイクはLOVE(愛)とHATE(憎しみ)という文字をかたどった金色のナックルを手にはめていたが(もちろん『狩人の夜』のロバート・ミッチャムへのオマージュだ)、LOVEの手しか見せなかった。あんなに嬉しそうなスパイクを見るのは初めてだった。89年カンヌ映画祭の『ドゥ・ザ・ライト・シング』無冠から30年。本当に長かった。スパイクに心からおめでとうと言いたい。

文:齋藤敦子

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