結婚願望ゼロだけど卵子提供!? 映画『Eggs 選ばれたい私たち』がアラサー女子たちの決意と葛藤を優しく描き出す

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ライター:髙橋直樹
結婚願望ゼロだけど卵子提供!? 映画『Eggs 選ばれたい私たち』がアラサー女子たちの決意と葛藤を優しく描き出す
『Eggs 選ばれたい私たち』©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

29歳・派遣OL「私のタマゴ、提供します!」

子どもが授からない親に対して卵子を提供することをエッグドナー(卵子提供者)という。適正年齢は20~30歳まで、健康体であること。日本では認められていないため、ハワイやアジア諸国で施術されることが多い。卵子を提供する見返りに50万円もの報酬が手に入り、お小遣い付きで海外旅行が楽しめるという寸法だ。

『Eggs 選ばれたい私たち』©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

主人公の純子(寺坂光恵)は、東京で独り暮らしする派遣OL。現在29歳、彼氏なし、結婚にも興味がない。家庭を作らなければ、当然出産や育児に翻弄されることもない。でも、老後のことはちょっと気になる。給与明細を見つめながら、求人雑誌をめくってみたり。独身主義者を自認する彼女だが、一生“おひとり様”のままかもしれないことにやましさを感じ、エッグドナーに応募を決める。

『Eggs 選ばれたい私たち』©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

面接を終えた帰り道、予期せぬ場所で従姉妹の葵(河合空)と鉢合わせ。元カノと別れたばかりの彼女は「ワタシはレズ」とカミングアウトし、「今夜、寝る場所がないから泊まらせて」とねだる。こうしてドナーに選ばれたい2人の同居生活が始まることに。30歳の大台まであと3ヶ月、迷える純子が動き出す。

『Eggs 選ばれたい私たち』©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

女性にとっての「真の豊かさ」って、どんなことなのだろう

『Eggs 選ばれたい私たち』の後に、「女ってなんだろう……」と問いかける映画『めし』(1951年)を観た。

原節子が演じる三千代は、東京で結婚し夢ある新婚生活を送るはずが、夫の転勤で大阪の長屋で暮らす妻である。毎日朝食を作り、部屋を掃除した後は洗濯、夕刻には買い物に出かける。新しい電化製品に目が留まるが、買う気はない。すれ違う隣人たちに挨拶し、財布の紐を固くしてどの店が安いかを品定めする。夫と2人で映画を観たり、どこかに出かけるなんてこともない。この後もずっと“めし”を用意し続ける日々が続くのか。私って、否、女って一体なんなのだろう……。こんな疑問を胸に秘めている。

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ある日、やりどころのない気分を抱えている妻と証券会社で生真面目に働く夫(上原謙)の前に、姪っ子(島崎雪子)が現れ「家出した」と無邪気に笑う。若い彼女が居候を始めると、妻の心は更にざわめく。三人で出掛けようと言われても躊躇し、姪っ子に対する夫のまなざしも気になる。

三千代が同窓会に着ていく服は嫁いだ頃のものだ。級友から変わらないねと言われても、自分のことは自分が一番分かっている。このままだと、何もしない間に老いてしまうだけ。意を決した彼女は、知人からお金を工面して実家へと向かう。そして、呉服店を営む家族の元に帰るなり眠り続ける。布団にくるまった彼女の姿は、82年生まれのキム・ジヨンに重なった。特別なプレッシャーは感じていないはず。だけど、やることだらけの妻は心穏やかに眠ることすらできないのか……。

“若さ”にはタイムリミットがあるって、マジ!?

川崎僚監督は、日本ではまだ馴染みのない代理母の在り方を入り口に、変化する純子の意識と現代社会を生きる女性たちの“あるある”を浮かび上がらせていく。

実家から離れて暮らし、自由気ままな毎日を過ごしているように見える純子だが、現実はじわじわと忍び寄る。どうやら若さにはタイムリミットがあるらしく、就職や結婚、育児など、トライできることが日々減じていく。職場では相も変わらず“お茶くみ”させられるし、旧友は出産間近だったり、仕事の忙しさに喜びが見出せなくなったとぼやいたりと、“痛くなる手前”の現実を抱えている。25歳の居候、若さ漲る葵の一挙手一投足が過敏になった意識に更に拍車をかける。シングルライフは良いとしても、何かが足りない。でも、それがどんなことなのか分からない。

『Eggs 選ばれたい私たち』©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

戦後復興中の日本で妻として生きる三千代の胸中と、1982年生まれのキム・ジヨンの葛藤が、もはや若くないと自覚している純子の今に重なる。成瀬巳喜男監督作『めし』の公開から70年、『82年生まれ、キム・ジヨン』(2019年)、そして『Eggs 選ばれたい私たち』へとつながった。そうか、時を越えて映画は頑張る女性を応援し続けてきたのだ。ガンバレ、純子!

『Eggs 選ばれたい私たち』©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

最後にもうひとつ。本編の後半にある不意に訪れる“触れあい”のシーンが印象的だ。誰もがマスクを着用し、人と人との触れあいが損なわれている今だからこそ、心の渇きにささやかな潤いを与えてくれる。女性監督ならでは、実体験を基にした温もりある描写が心に染みた。

『Eggs 選ばれたい私たち』©「Eggs 選ばれたい私たち」製作委員会

文:髙橋直樹

『Eggs 選ばれたい私たち』は2021年4月2日(金)よりテアトル新宿、以降全国順次公開

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『Eggs 選ばれたい私たち』

派遣で事務の仕事をしている近藤純子(29)は独身主義者。将来、結婚する気も、子どもを産む気もない。しかし、このまま独身を貫き、10年後20年後に子どもを産まなかったことをいつか後悔するのかもしれないと考え、その後悔が少しでもやわらげばと思い、エッグドナーに登録することにした。

エッグドナーとは、子どものいない夫婦に卵子を提供するドナー制度のこと。プロフィールを提出して、選ばれれば、ハワイやマレーシアなどの海外で卵子を摘出し、謝礼金がもらえる。年齢制限の30歳までわずか数ヶ月だったが、純子は登録することにした。

その登録説明会で、純子は偶然、従姉妹の矢野葵(25)に再会する。彼女は恋人と別れて同棲していた家を出て、行くところがないという。その恋人というのが女性だと知り、驚く純子。レズビアンの葵に対して「偏見はない」と伝えるが、ぎこちない雰囲気になってしまった。

そんな葵に、エッグドナーに登録したことを母親に内緒にする代わりに居候させて欲しいと言われ、純子は断れなかった。こうして、二人の奇妙な共同生活が始まった。

久しぶりの再会ということ、そして葵の少しワガママな態度から、二人の生活はなかなかうまくいかなかった。そんなある日、二人は偶然、同じ時期に生理になった。

葵が「生理はムダだ」というのを聞き、純子はレズビアンの葵も自分も子どもを産まない=女性としての役割の一つを果たさないという意味で、同士であることに気付いた。

それをきっかけに二人は意気投合し、ともにエッグドナーに選ばれ、遺伝子上の母になることで、生物学上の女としての義務を果たそうと誓い合ったのだが……。

制作年: 2018
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