「頭蓋骨穴開け」で何が見える? 綾野剛主演『ホムンクルス』がジョン・レノンも望んだ“トレパネーション”の不思議を暴く

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:市川力夫
「頭蓋骨穴開け」で何が見える? 綾野剛主演『ホムンクルス』がジョン・レノンも望んだ“トレパネーション”の不思議を暴く
『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

山本英夫先生の名作漫画が再び映画化

『おカマ白書』(1991年)『のぞき屋 NOZOKIYA』(1995年)『援助交際撲滅運動』(2001年)『殺し屋1』(2001年)と、次々に作品が映像化されてきた漫画家・山本英夫先生の漫画『ホムンクルス』が実写化! ファンならば誰もが連載当初から「いつかは実写化されるだろうな……でも……難しいぞ……」と思っていたあの作品が! しかも監督は『犬鳴村』(2019年)『樹海村』(2021年)と立て続けに絶好調な清水崇! 時は来た!!

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

頭蓋骨に穴を開ける「トレパネーション」とは?

新宿の高級ホテルと、向かいにある路上生活者で溢れかえる公園……そのちょうど真ん中の道路で車上生活を営んでいるのが本作の主人公・名越進(綾野剛)。どういうわけか感情を失っている彼は、まともに社会生活が送れない。かといって完璧な路上生活者にもなれない。どちらに寄っても厄介者扱いされ、今日も愛車マツダ・キャロル360の中で寝るばかりだった。そんなある日、名越のもとに独特なファッションセンスの研修医・伊藤学(成田凌)が話しかけてくる。

「頭蓋骨に穴を開けさせてほしい」!!!???

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

というわけで、いきなり人体実験からスタートする本作。頭蓋骨に穴を開ける行為は「トレパネーション」と呼ばれるもので、ようは脳の活性化を図るもの。怖いです。記録によると、古代から存在する超特殊な医術だとか。

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

そして、あれよあれよという間にキュイィィィィンとドリルの不快な音が鳴り響き、名越の眉間にぽっかりと穴が空くのでした。そして「トレパネーションすると何が起きるか」を試すため、伊藤より1週間にわたって数々の実験を試みることを告げられる名越。しかし、名越はすぐに気付いた。左目だけで世界を見ると、街ゆく人間の姿が異様な形になっていることを……。

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

映画オリジナル展開も! 違和感なくアップデートされたSNS時代の『ホムンクルス』

原作も映画化も大傑作だった『殺し屋1』にも通じる「洗脳」や「思い込み」、「記憶の操作」といった心理的なテーマをさらに深掘りしているのが原作の『ホムンクルス』。『殺し屋1』は途中からキャラクターたちの精神状態などを監修するというような名目で、精神科医・名越康文氏が原作ブレーンとして参加しているのですが、『ホムンクルス』では名越氏の名前がそのまま主人公の名前になっています。

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

そして『ホムンクルス』での名越は、左目で見た人物の深層心理が視覚化されるという特殊な状態になり、彼らと対峙することで当の本人すら蓋をしている「闇」=「病み」に向き合う形となるわけです。それはもう完全にカウンセリングですね。

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

映画では、そんなこんなの原作要素を驚くほど忠実に再現しています。改めて映像として観ると、穴を空けて異形と出会うという不条理は「不思議の国のアリス」的構造だったことがわかりますね。安部公房「壁 S・カルマ氏の犯罪」などの影響も感じさせますが、そのあたりはどうなんでしょう。山本英夫先生に聞いてみないとわかりません。そして、舞台設定は今現在なので、2003年〜2011年の連載当時からはだいぶ変わったSNSの在り方など、ところどころ違和感なくアップデートもされていました。

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

しかし劇中、岸井ゆきの演じる謎の女が登場するあたりからは映画オリジナルの展開が! そして原作にもあった名越の素性に関するミステリーに謎の女が絡んでいくわけですが、その果てに「なぜ生きているのか」「俺は誰なんだ」という実存的な問いにまでタッチします。

ちなみにトレパネーションについては、『ア・ホール・イン・ザ・ヘッド』(1998年)というドキュメンタリー映画が存在し、日本でもDVD化されています。映画『ホムンクルス』にもチラッと出てくるアマンダ・フィールディングという有名な実践者や、あのジョン・レノンが「穴を開けてくれ」と言っていたというエピソードなど、まぁとんでもなく面白いエピソードがてんこ盛り。でも、くれぐれも深追いはお気をつけて……。

文:市川力夫

『ホムンクルス』は2021年4月2日(金)より全国公開

『ホムンクルス』©2021 山本英夫・小学館/エイベックス・ピクチャーズ

Share On
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

『ホムンクルス』

一流ホテルとホームレスが溢れる公園の狭間で車上生活を送る名越進。過去の記憶も感情も失い、社会から孤立していた。そこに突然、奇抜なファッションに身を包んだ研修医・伊藤学が目の前に現れる。

「頭蓋骨に穴を空けさせて欲しい」
「あなたじゃなきゃ、ダメなんです」

突然の要求に戸惑う名越だったが、 “生きる理由”を与えるという伊藤の言葉に動かされ第六感が芽生えると言われるその手術<トレパネーション>を受けることに。術後、名越が右目を手で覆い、左目だけで見たのは、人間が異様な姿に変貌した世界だった。その現象を「他人の深層心理が、視覚化されて見えている」と説く伊藤。彼はその異形をホムンクルスと名付けた―。

ホムンクルスと化した人々の心の闇と対峙していく中で、名越の過去が徐々に紐解かれ、自らの失った記憶と向き合うことに。果たして名越が見てしまったものは、真実なのか、脳が作り出した虚像の世界なのか? 取り戻した記憶に隠された衝撃の結末とは!?

制作年: 2021
監督:
出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • 「頭蓋骨穴開け」で何が見える? 綾野剛主演『ホムンクルス』がジョン・レノンも望んだ“トレパネーション”の不思議を暴く