ジョン・ウェイン主演『大列車強盗』は“老い”がテーマのほのぼの西部劇

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ライター:市川力夫
ジョン・ウェイン主演『大列車強盗』は“老い”がテーマのほのぼの西部劇
『ジョン・ウェイン 大列車強盗』ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
今回ご紹介するのはミスター・西部劇、ミスター・アメリカとまで呼ばれたジョン・ウェインの作品。といっても、1979年に亡くなっているので存在すら知らない人もいるかもしれません。

アメリカが誇る大映画人、ジョン・ウェイン主演作

『マッドマックス』シリーズで知られるジョージ・ミラーが偏愛し、映画を撮るたびに参考にしているという映画『駅馬車』(1939年)の主演としてなら知っているかもしれません。はたまたクエンティン・タランティーノがオールタイムベストに挙げる『リオ・ブラボー』(1959年)の主演としてか、戦争映画に出まくって右翼的な発言をしていた映画スターとしてか……。とにかく、ジョン・ウェインはかつてのアメリカが誇ったアクション・スターであり、映画プロデューサーでもあり、映画監督でもあるという大映画人なのでした。

で、今回ご紹介するのは、ジョン・ウェインが66歳のときに主演した作品『大列車強盗』(1972年)。この後の『ダーティハリー』ライクな刑事もの『マックQ』(1973年)や『ブラニガン』(1975年)と比べても、ハッキリ言ってかなり地味な作品なのですが、“「老い」を意識した男たちの悲しき戦い”という内容は、ひょっとしたらシルヴェスター・スタローン監督主演作『エクスペンダブルズ』(2010年)に影響を与えているんじゃない? という西部劇なのです。

南テキサスのド田舎町、というか「ほぼ砂漠」といってもいいぐらい何もない場所にポツンと佇む鉄道駅。そこに集まった5人の西部の男たちはどいつもこいつも薄汚いが「腕に覚えあり」といったイイ面構えをしていた。そして間もなく、黒煙を撒き散らしながら列車が到着。出てきたのはガタイはいいが年老いた西部の男レイン(ジョン・ウェイン)と、少々ケバ目な美女・ロウ夫人(アン=マーグレット)だった。

レインが連れてきたロウ夫人の亡き夫マットは、生前列車強盗でがっぽり稼いでいた。そしてメキシコのとある場所に金塊50万ドル相当を隠したまま死亡。そこで、夫人はレインら腕の立つ男たちを雇って金塊を探しだし、「鉄道会社にそっくりそのまま返したい」という。

「なんでも、ひとり息子を列車強盗の息子にさせたくねぇんだとさ」
「ちくしょー! イイ話じゃねぇの!」

気のいい西部の男たちはひと肌脱ぐことにした。ギャラは5万ドル。悪い話じゃない。早速、金塊探しの旅が始まった。

老人たちの老人たちによる人間臭い西部劇ヒーロー

『ジョン・ウェイン 大列車強盗』ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

というわけで、幕を開けた七人の金塊探し。しかし、レイン含む7人中3人はもう立派な老人の域。なのでそうサクサク進むはずもなく、川を渡ろうとすればロウ夫人が溺れたり、ダイナマイトを積んだロバが盗まれたりと、それはもうハードな道のり。おまけに亡きマット・ロウと共に列車強盗をやっていた無法者集団が総勢20名で攻めてくる。さらに、たったひとりでレインたちを付け回す謎の男も登場。

「こうなったら迎え撃つしかねぇ……」

前述のとおり本作のテーマはズバリ「老い」。なので随所に「老い」に関するセリフが満載。例えば中盤、罠を張って敵を迎え撃つ直前の緊張状態の中で「昔は2週間飲み続けても大丈夫だったのに、最近では1週間飲んだら寝込む。酒で年がわかるんだ」など、荒野の荒くれ者らしからぬ発言が。ほかにも、誰かが「お前、女のほうは最近どうなんだ?」と振られると、「誰にも言うなよ。この前、女と一晩中過ごしたんだ。女の弾くピアノを聴いてな……」と、なんとも赤裸々な老いトークが弾むのだった。きわめつけは、終盤になってロウ夫人がレインへの恋心を吐露すると、「この年ではお相手できないよ」と素直に辞退……。

これら独特なユーモア溢れるやり取りは、本作の監督・脚本であるバート・ケネディの持ち味。西部劇が下火になっていく60年代から70年代初頭までに数多くの西部劇を撮った監督で、その作風は同時期に苛烈なバイオレンス西部劇を撮っていたサム・ペキンパーと相反するほのぼの系。しかし、従来の「いつでも正しく強い立派な男」という西部劇ヒーロー像とは一味違う人間臭さを描いていたのだった。

酸いも甘いも噛みしめた、背中で語る男の美学……のはずが!?

※この先、結末に触れています。

『ジョン・ウェイン 大列車強盗』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

そんなこんなで美女の申し出も断り、追っ手も蹴散らし、金塊50万ドル分+手柄の5万ドルもすべて未亡人にプレゼントする気前のよすぎる男たち。ちょっと待て、タイトルの『大列車強盗』って、ロウ夫人の亡き夫が強盗だったというだけ? タイトル詐欺か……。そんな観客のとまどいもそっちのけ、列車に乗るロウ夫人に背を向け、見返りを何も求めない男の美学が荒野に華々しく炸裂し、美しすぎるラストを迎えようとした……その時! それまで単独でレインらを追ってきた男が姿を現し、ニヤニヤ笑いながら言う。

「ご苦労なこった。マット・ロウは生涯独身だったんだよ。あのロウ夫人と名乗っていた女はマット・ロウが死んだ売春宿で働いていた女だぜ」

どんでん返しといえるかどうかはわからないですが、たった一言ですべてのちゃぶ台をひっくり返されるラスト。これまで美しき未亡人相手にすかしまくっていた言動はすべてがみっともなくなり、命をかけた男たちの熱い戦いはなにもかもが無駄骨。『エクスペンダブルズ』よりも報われなかった男たちは、エンドロールが出ている中、即座に踵を返し走る列車を追うのだった……。

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『大列車強盗』

亡くなった夫がかつて列車強盗で奪った金塊を持ち主に返したいという、若く美しい未亡人の頼みに手を貸すことにしたレインと仲間たちは、早速、金塊のありかを知る彼女と共にメキシコ奥地へ向けて出発する。だがそんな一行の後を、武装した20人あまりの屈強な男たちが追っていた。

制作年: 1972
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脚本:
音楽:
出演:
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