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母が体験する「最悪の事態」描く人間ドラマ Netflix『私というパズル』 ヴァネッサ・カービーが壮絶な陣痛・出産シーン熱演

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ライター:#野中モモ
母が体験する「最悪の事態」描く人間ドラマ Netflix『私というパズル』 ヴァネッサ・カービーが壮絶な陣痛・出産シーン熱演
Netflixオリジナル映画『私というパズル』独占配信中

ヴァネッサ・カービー、ヴェネツィアで主演女優賞獲得!

これ以上ないほどに悲痛な、しかし決して珍しいことではない不幸に見舞われた女性が、時を経て苦しみと折り合いをつけるまでを描く『私というパズル』。Netflixオリジナルシリーズ『ザ・クラウン』(2016年~)のマーガレット王女役で知られるヴァネッサ・カービーが第78回ゴールデングローブ賞にノミネートされ、第77回ヴェネツィア国際映画祭で主演女優賞を受賞したことでも話題の作品だ。

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妊娠中のマーサ(ヴァネッサ・カービー)は臨月に入り、自宅出産を計画している。建築現場で働くパートナーのショーン(シャイア・ラブーフ)も彼女をサポートし、赤ちゃんの誕生を心待ちにしていた。ある夜、マーサは産気づくが、それまで信頼関係を築いてきた助産師はたまたま別のお産に呼ばれていて来られないという。そこでやって来た代理の助産師イヴ(モーリー・パーカー)の付き添いのもと、マーサは娘を産む。しかし喜びもつかの間、幼い命は儚く消えてしまうのだった。

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大きな喪失を経験し、深い悲しみに沈むマーサとショーン。亡き娘の葬儀を手配し、職場に復帰し、穏やかな日常を取り戻そうとするのだが、ふたりは次第にすれ違い、精神的に追い詰められていく。さらにマーサの母エリザベス(エレン・バースティン)は、「死産は助産師の過失であり、法廷で責任を問うべきだ」と主張し、マーサは気持ちの整理がつかないまま証言台に立つことになってしまう。

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ありふれているけれど、これまであまり語られてこなかった局面のひとつ

それぞれが悲しみを抱え、よかれと思って行動した結果、妊娠・出産において心理的にも肉体的にもいちばん大きな負担を課されてきたはずのマーサが置いてけぼりになってしまう展開は、本当に恐ろしく胃が痛くなる。まさに地獄の様相なのだが、そこまでどぎつく下世話な印象にはならないのは、やはり出演者たちの抑えた演技の力なのだろう。ベンジャミン・ローブの撮影とハワード・ショアの音楽も、落ち着いた格調高さを保つのに貢献している。

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監督はハンガリー出身のコルネル・ムンドルッツォ。『ジュピターズ・ムーン』(2017年)、『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)』(2014年)が日本でも公開されている。脚本はこれら2本と同じくカタ・ヴェーベル。ふたりは夫婦なのだそうだ。製作総指揮にマーティン・スコセッシが加わり、現代のアメリカを舞台にしている。

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できれば経験しないで済みたい、つらい事態を真正面から描いた映画である。しかし、それも人生の「ありふれているけれど、これまであまり語られてこなかった局面」のひとつなのだ。映画の序盤20分をかけて映し出される陣痛から出産の過程は、極度の緊張が張り詰めて目を覆いたくなってしまう。現実には20分どころか、陣痛開始から分娩まで10時間以上かかることも少なくないというから、お産がどれだけ危険な大仕事なのか察せられるというものだ。妊娠・出産の当事者になり得ない人々が、こうした映画を観ることで妊婦や母親の経験への理解を深め、また「現時点で“母親”ではない女性も子どもを失う経験をしているかもしれないし、これからするかもしれない」と想像しやすくなるとしたら、それはいいことなのではないだろうか。

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文:野中モモ

『私というパズル』はNetflixで独占配信中

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『私というパズル』

苦しい自宅出産の先に待っていたのは、予想もしなかった大きな悲しみ。失意の中、パートナーや家族にも心を閉ざす女性は、やり場のない感情に飲み込まれていく。

制作年: 2020
監督:
脚本:
出演: