ベトナム戦争から“抹消”された衝撃の実話を映画化!『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

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ライター:関根忠郎
ベトナム戦争から“抹消”された衝撃の実話を映画化!『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』
『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

ベトナム激戦地に埋もれていた究極の感動秘話
【惹句師・関根忠郎の映画一刀両断】

20世紀には幾つもの戦争があった。第一次世界大戦(1914~1918年)を始め、日中戦争(1937~1945年)、第ニ次世界大戦(1939~1945年)、ベトナム戦争(1955/1965~1975年)等々に加え、世界各地での内戦、地域紛争の数々は枚挙に暇がなく、人類に争いのタネは尽きることが無い。

思い起こせばベトナム戦争は、ホー・チ・ミンが率いるベトナム民主共和国(北ベトナム)とベトナム共和国(南ベトナム)との戦闘が長きに亘り膠着。特にアメリカの介入によって、資本主義・自由主義陣営と共産主義・社会主義陣営との間で代理戦争の様相を呈した悲惨なハード・ウォーだった。アメリカ国内では世論が二分。特に若者の間で激烈な反戦運動が展開、これが大きく世界中に拡がったことでも知悉され、多くの人々の心を揺さぶった。

本作『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は、ベトナム戦争後30年余も埋もれていた実在の若き空軍医療兵、ウィリアム・H・ピッツェンバーガー(愛称:ピッツ)の勇気と献身と戦死の秘話を掘り起こした実話映画の最新傑作。全篇、比類ない感動が脈打つ異色の戦争映画である。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

大国アメリカが介入したベトナム激戦地で何が起きていたのか!?

南ベトナム兵(べトコン)が多数潜むジャングル戦に挑んで窮地に陥るアメリカ第1歩兵師団。凄まじい銃撃戦で次々と負傷し斃れる同胞を救おうと、ヘリコプターで激戦地に降り立つ空軍医療兵ピッツェンバーガー(ジェレミー・アーヴァイン)。彼は負傷兵たちを手早く応急手当てしてヘリに乗せ、自らはジャングルに残る。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

頭上のヘリから呼び戻す仲間の絶叫も聞かず、歩兵師団ともに戦闘に加わったためにピッツは戦死。その義務感と犠牲的精神の下に殉じていく気高さは、見る者に息詰まるような衝撃と感動を撃ち込んでくる。このシークェンスは蓋し絶品。ビシビシと弾け飛ぶ銃弾による交戦場面は凄まじいばかりの臨場感だ。機銃音と共に倒れ伏す兵士のリアルな弾傷と戦死。恰も飛び交う銃弾が視覚を過ぎるが如き錯覚さえ起こさせる痛撃感は、この上なく戦争の酷薄さをも訴求する。

この医療兵ピッツェンバーガーの戦争秘話の発見から立ち上げた綿密な取材と真実の探究。その上で独自の映画化を志した脚本&監督トッド・ロビンソンの才能と真摯な作品創りには最大の讃辞を贈りたい。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

医療兵W・H・ピッツェンバーガーの英雄的行為に「名誉勲章」を!

戦死した相棒ピッツェンバーガーの、誰にも真似のできない行為を忘れることができないタリー軍曹(ウィリアム・ハート)は、長年の間、戦友ピッツの名誉勲章受勲を要請し、アメリカ国防省に掛け合ってきた。然しながら何故か長年、その願いは当局から刎ねられていた。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

だがタリーの熱意が通じて、ペンタゴンの若いエリート官僚・ハフマン(セバスチャン・スタン)が上司の指示を受け、ピッツの功勲を追跡調査すべく、かつて戦場でピッツに救出されて生還した陸軍歩兵ビリー(サミュエル・L・ジャクソン)とモントーヤ(エド・ハリス)、あるいは帰還して長くPTSDに苦しむジミー・バー(故ピーター・フォンダ)、そして戦後もベトナムに留まって生き続けるキーパー(ジョン・サヴェージ)等々に遭うべく巡り歩く。無論、ピッツの年老いた父フランク(故クリストファー・プラマー)とも面会する。堅実強固、見事なキャスティングの成果が痛感される。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

ついでながら(いや、ついでどころか)これは極めて感動的な場面なのだが、モントーヤがピッツから死の間際に託された恋人への手紙を、その女性に手渡すシーンには落涙する観客も多いことだろう。センシブルにさりげない演出で見せるトッド・ロビンソンの手腕が素晴らしい。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

こうしたハフマンの《聴き取り旅》の道筋は、今は老いた退役兵士たちを訪ね歩いて、やがて真実を一つ一つ知り得たプロセスと連動して、彼の人間的充実につながっていく。映画とは、その入り口(オープニング)から出口(エンディング)まで、登場人物の心の変化、成長と共に、観客もまた心を動かされ自身の変化に気づいていく。映画には入り口と出口がある。その確かな振幅の揺れと幅が大きければ大きいほど、感銘深い映画体験になることになるだろう。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

コロナ禍の世界にもジャストミート! 人が人に会いに行くことの素晴らしさ

四角形のスクリーンを見つめてみれば、そこでは人が人と会って、語り合い、微笑みを交わし合う。そして思いがけない発見もあり、余情も充分味わえる。戦争を題材に置いた作品で、このような確かな高揚を覚えたのは幸運だった。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

人が人に会いに行く。この素晴らしさ。人が人に接して真実を語り合うプロセス。その思いがけない成果が、この映画には鮮やかに澄み渡っている。そろそろ1年に及ぶコロナ禍の下、世界中の多くの人々に課せられたソーシャル・ディスタンスの制約を思うとき、明らかに映画とは、人と人とが作る密度であり、語らいである。今の世界にジャストミートする作品だ。新型コロナウイルスの1日も早い終息を願って筆をおく。

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』© 2019 LFM DISTRIBUTION, LLC

文:関根忠郎

『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』は2021年3月5日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開

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『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』

1999年、ペンタゴン空軍省の官僚のハフマンは、30年以上も請願されてきたある兵士の名誉勲章授与の精査を行うことになる。1966年のベトナム戦争下、空軍落下傘救助隊のピッツェンバーガーは敵兵の奇襲を受け孤立した陸軍中隊の救助にヘリで向かうが、あまりにも激しい戦闘のためヘリは降下できなかった。すると彼はその身一つで地上に飛び降り、自らの命は顧みず負傷兵たちを救出していくが、ついに銃弾に倒れてしまう。

戦後、ピッツェンバーガーの両親と戦友タリーは、彼の功績は、名誉勲章授与にふさわしいと何度も軍に働きかけるも却下され、彼の武勲は叶わないままだった。

はじめは気乗りしないハフマンだったが、歴史に埋もれた英雄を知る退役軍人たちの証言を求めてアメリカ各地からベトナムのハノイまで調査を進める。やがて、ピッツェンバーガーの並外れた勇気ある行動を知るに及んで、大きく心を動かされる。そして、彼に名誉勲章が授与されなかった背景に驚くべき陰謀が隠されていたことに気がつくのだった……。

制作年: 2019
監督:
出演:
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