北朝鮮拉致問題を映画化『めぐみへの誓い』 金賢姫役の小林麗菜が監督・野伏翔の“強い想い”を訊く

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ライター:BANGER!!! 編集部
北朝鮮拉致問題を映画化『めぐみへの誓い』 金賢姫役の小林麗菜が監督・野伏翔の“強い想い”を訊く
『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

2002年に北朝鮮に拉致された被害者5名が24年ぶりに日本の土を踏んでから、18年。いまだ実現しない被害者帰国を求める運動を決して後退させてはならない、そんな決意が込められた映画『めぐみへの誓い』が2021年2月19日(金)より公開される。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

そのタイトル通り、1977年に拉致された横田滋さん・早紀江さんの娘、めぐみさんの半生を描く本作。田口八重子さんら同じく拉致被害者たちとの北朝鮮での生活を軸に、帰国を求める家族たちの長きにわたる闘いを通じて事件にまつわる細部まで描写。豪華キャスト出演によって世代を問わず多くの人々に活動を広めることで、なんとか事件の風化をくい止めようという製作陣の覚悟が感じられる作品だ。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

2021年、めぐみさん拉致事件から43年を経て公開される映画『めぐみへの誓い』から、我々は何を受け止め、どう行動するべきか? 愛する家族を絶対に取り戻す――そんな強い想いが込められた本作について、北朝鮮工作員・金賢姫(キム・ヒョンヒ)役を熱演した小林麗菜が、監督の野伏翔氏にインタビューを行った。

『めぐみへの誓い』(左から)野伏翔監督、小林麗菜©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

全国の「拉致被害者を救う会」全面協力! 製作費以上に訴求力ある作品に

小林:まず『めぐみへの誓い』を製作することになった経緯を教えてください。

野伏:もともと、劇団<夜想会>で始めた演劇です。2010年に紀伊國屋サザンシアターで初演して、2013年に俳優座劇場で再演しました。この演技の評判を聞いた拉致対策委員会の方や大臣がご覧になって、政府の啓発公演としてやらないかというお話をいただきました。地方公演を行う際にバックアップしていただいたのが「全国の拉致被害者を救う会」です。公演を重ねるごとにもっと多くの方に観てもらいたいという思いが、私自身もそうですが、全国の拉致被害者を救う会の方々もその思いを強くされて、映画化の話が湧き上がってきました。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

そして、昨年お亡くなりになりましたが、拉致被害者である横田めぐみさんの父、滋さんともお話して、映画化の準備を進めていました。映画の製作のため、スポンサー集めも行いましたが、映画が扱っている問題に対してどこか他の企業の様子を伺うような、躊躇してなかなか資金が集まらない状況が続きました。そんな時に、秋田で「めぐみへの誓い」の舞台を4回も開催してくださった、とても熱心にサポートしていただいた秋田の拉致被害を救う会の会長さんが代表になってくださり、クラウドファンディングをやろうという話になったんです。映画製作のために最低でも三千万円を目標にしていたのですが、目標を上回る五千万円の製作費で製作することができました。船などの小道具や宿泊場所など、皆さんに協力していただいたので、製作費以上の作品ができたと自負しています。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

拉致問題啓発舞台劇を映画化! エンタメ性とリアル追求のバランス

小林:映画と舞台の違いを感じることはありましたか?

野伏:舞台だと抽象化して、観客の想像に委ねたほうが面白いところがあると思います。映画の場合、どこまでリアルに迫ることができるかが勝負です。この映画で言うと、北朝鮮に拉致されて船で連れていかれるシーンは、舞台であれば船のシーンを音と照明で作って観客にその場景を想像してもらいます。火事で暴動が起きるシーンは、映画でやる場合はリアルに描写しないといけないので、そこに製作費もかけることになります。

演技に関しては、舞台であれば客席の後ろに届けるために内面の大きな変化は一番大きく表現しますし、映画であればカメラが寄ってきてアップにして、声をあまり出さないほうが強い気持ちが伝わることがあると思います。

小林:私も舞台を拝見したのですが、舞台だとシリアスな題材ですが、それこそ金賢姫のシーンで笑いが起きることもありましたよね。映画だといっさい笑いはなく、シリアスに展開するので、そこの違いも感じました。

野伏:舞台だとどんなにシリアスなものでも、エンターテインメントとして少し遊べるところがあったほうがお客さんを揺さぶって“持っていける”ところがあると思います。一方こういった題材の映画ですと、リアルではないところが見え隠れすると取っ散らかってしまうんでしょうね。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

大鶴義丹が極寒の海にダイブ!? 北朝鮮による洗脳の恐怖も描く

小林:映画はとても生々しくて、痛みや臭いが空気感として伝わってきました。真冬の秋田での撮影もなかなか大変でしたね。

野伏:(大鶴)義丹ちゃんが海に飛び込んでくれたからね。現場で海に潜ることが決まって、撮影前に彼の事務所に電話して、ウェットスーツを持ってきてもらえないかと聞いたんです。「やりますよ!」と言ってくれて助かりました(笑)。

小林:真冬の海に潜るからこそ、義丹さんが演じたキャラクターがより怖く感じました。

野伏:着替えを浮かした状態で潜ってきて、日本に上陸する人も実際多かったみたいです。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

小林:この作品のためにかなりリサーチされたと思うのですが、他にどんなことをリサーチされましたか?

野伏:「洗脳」については、日本で工作活動をしていた人が克明に書かれた本や、脱北者の本、2002年に帰還した ある拉致被害者の話を伺ったことなどを織り交ぜました。

独裁国家では洗脳は当たり前にやります。日本の朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)で拉致の工作員の手配をやっていた人が言うには、拉致被害者は夕食が終わって寝る前の5時間くらいで洗脳教育を行い、金日成(キム・イルソン)の本を暗記することや、自己批判が足りない人は周りから総批判を受けて、毎日「お前は思想がダメだ」と6か月にわたり叩き込まれる。ある拉致被害者に伺いましたが、“首領様”を礼賛する映画を観て歌を歌うこともあったそうです。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

過酷な背景を持つ工作員・金賢姫を小林麗菜が熱演! そのキャスティング理由とは

小林:私をキャスティングしてくださった理由を教えてください。

野伏:まずは美人ということ。金賢姫は、朝鮮語、中国語、日本語、英語、スペイン語ができるそうで、ものすごく頭が良い。体力的にも素晴らしく、訓練で山道を1日30キロも行軍して、男性でも5人くらい相手にしても負けない戦闘力があるスーパー工作員なんです。反面、非常に幼いところもあります。なぜ、そこまで頑張らなければならなかったというと、彼女は日本統治下時代に地主だった家の出身なんですが、身分階級の低い人たちが共産革命を起こしたことで、革命後は立場が一変しました。よっぽど努力しないと家族全員が収容所行きになるので、ものすごく勉強をしたんです。彼女のことは健気で可哀そうだなと思っていたので、小林さんだったらそういう人間性を出せるんじゃないかなと。演技の際に優しさが出ているところが良かったですね。

『めぐみへの誓い』(左から)野伏翔監督、小林麗菜©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

小林:撮影を思い出して、うるっときてしまいます。ありがとうございます。日本人以外の役を演じるのが初めてだったので不安でしたし、金賢姫という誰もが知る人物を演じることに、すごく悩みました。役作りのために、この作品の翻訳を担当された方に3か月ほど付きっきりでアクセントなどを教えてもらいました。それに日本語を片言で喋ることも、とても難しかったですね。濁点を抜いて喋らないといけなかったので、そういう細かい部分を意識して話すのは慣れるまで時間がかかりました。

『めぐみへの誓い』小林麗菜©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

―お二人から、映画をご覧になる皆さんにメッセージをお願いします。

小林:拉致問題は私たちの世代にとっては歴史的な話と思ってしまいますが、今もなお続く問題で、この映画を観ることで改めて認識することができると思います。これからも戦い続けないといけない問題だと、演じていても、作品を観ていても感じました。

野伏:拉致問題は過去の誘拐事件で終わらない、今も続いている拉致監禁事件です。そして、拉致被害者のご家族もお年をとられて、もうあまり時間がありませんので、少しでも早く、2021年中に解決してほしいと強く願っています。ぜひ、この映画を観て、この問題を理解していただいて、何らかの形で協力していただければと思っています。選挙の際に拉致問題に積極的な政治家を選ぶという形でも十分なので、少しでも動いてもらいたいと思っています。よろしくお願いいたします。

『めぐみへの誓い』©映画「めぐみへの誓い」製作委員会

『めぐみへの誓い』は2021年2月19日(金)より全国順次公開

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『めぐみへの誓い』

1977年11月15日夕刻、新潟。学校のバドミントン部の練習の帰り道で一人の少女が忽然と姿を消した。横田めぐみ(以下敬称略)13歳である。拉致工作員の手によって船底に閉じ込められためぐみは助けを求めて泣き叫び、壁をかきむしり爪をはがしてしまう。
北朝鮮に着いてからは「朝鮮語を覚えたら日本に帰してやる」と言う工作員の言葉を信じ、ひたすら勉強に励んだ。然し彼女が18歳になった時、その約束が嘘であったことが分かる。日本に帰してもらえないことを知った彼女は遂に精神に破綻を来たしてしまう。
1970年代の同じ頃、日本各地で行方不明事件が多発していた。工作員のリーダー、シン・ガンシュンは暴力的に、時には甘言を弄し、日本の若者を騙し北朝鮮に拉致していた。「スパイを防止する法律のない日本は、俺たちにとって楽な仕事場さ」と笑う工作員たち。
拉致被害者・田口八重子、当時22歳は日本に1歳と3歳の幼子を残して拉致された。彼女は若い工作員キム・ヒョンヒの日本人化教育の教師として日を送っていた。次第に姉妹のように心を通わせる二人だったが、その後キム・ヒョンヒは大韓航空機爆破の指令を受けて実行犯となってしまった。
日本ではめぐみの両親と、その支援者たちの必死の署名活動が続く。一方、めぐみは平壌の915病院の精神病棟にいた。ある夜、彼女は両親が自分を助けに来てくれた夢を見る。だが、その夢の舞台は恐ろしい強制収容所の中だった。暴動をおこし脱走を図るめぐみとその両親、そして多くの囚人たち。炎を上げて燃え上がる強制収容所。だが彼らは警備隊の銃弾になぎ倒される。然し不思議なことに、母・早紀江と父・滋の励ましに、再び立ち上がるめぐみと囚人たち。吹雪と火の粉が舞う中を、何度撃たれても立ち上がり、日本を目指してひたすら歩き続けるめぐみたち……。
この夢を見てから、めぐみの中にこの国で生き抜く新たな決意が生まれる。「そして、いつの日か必ず!」

制作年: 2020
監督:
出演:
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