育ての親J・ムーア&生みの親M・ウィリアムズ競演! あのマッツ主演作をリメイク『秘密への招待状』の音楽が複雑な“親の心”を映し出す

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ライター:森本康治
育ての親J・ムーア&生みの親M・ウィリアムズ競演! あのマッツ主演作をリメイク『秘密への招待状』の音楽が複雑な“親の心”を映し出す
『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

マッツ・ミケルセンの主演作を装いも新たにリメイク

第79回アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた、スサンネ・ビア監督のデンマーク映画『アフター・ウェディング』(2006年)。“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンが主演を務めたことでもファンによく知られている作品だが、13年の時を経て、ハリウッドで大胆なアレンジを加えたリメイクが製作された。それが2021年2月12日(金)公開の『秘密への招待状』である。

『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

インドで孤児院を運営している主人公が、施設への多額の寄付を申し出た支援者の娘の結婚式に招待されたことから、自分の娘にまつわる苦い過去と家族の秘密が、思いもよらぬ形で明かされていく……という構成はオリジナル版とほぼ同じ。大きな変更点は主人公と支援者のキャラクターが女性になったことだが、これはジュリアン・ムーアと彼女の夫のバート・フレインドリッチ監督が、『アフター・ウェディング』に惚れ込んで今回のリメイク版を製作したためである。

『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

「育ての親」と「生みの親」をジュリアン・ムーアとミシェル・ウィリアムズが熱演

見方によっては主人公よりも見せ場が多いとも言えるキャラクターを妻に演じてもらうため、フレインドリッチ監督は脚本(脚色)も自ら担当。ムーアも夫の期待に応えるように、大手メディア代理店のCEOであるテレサ役を好演。『キングスマン:ゴールデン・サークル』(2017年)のポピーを彷彿とさせる存在感で凄みを効かせたかと思えば、『エデンより彼方に』(2002年)や『アリスのままで』(2014年)に通じる“薄幸の妻/母”の一面も見せており、「生みの親」と「育ての親」の二人が繰り広げる「母と娘」のドラマに深みを与えている。

『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

そんな“大ボス”のテレサと対峙するイザベル役に抜擢されたのは、『ブロークバック・マウンテン』(2005年)や『ブルーバレンタイン』(2010年)、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016年)で難しい状況にある妻を演じたミシェル・ウィリアムズ。オリジナル版でマッツが演じたヤコブは「若い頃に酒やドラッグに溺れたこともある少々ダメな男」という設定だったが、リメイク版のイザベルは「ガチガチの理想主義者で器用に立ち回れない女」という設定になっている。自己主張の激しそうな二人の間で葛藤するテレサの夫/イザベルの元恋人、オスカーを演じたビリー・クラダップの抑えた演技も印象に残る。

『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

登場人物の心の機微を捉えた、慎ましやかな音楽

本作のスコア作曲を手掛けたのは、BANGER!!!の筆者のコラムでも何度かご紹介しているマイケル・ダナ。『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012年)で第85回アカデミー賞作曲賞を受賞していることからも分かるように、インド音楽に造詣が深い作曲家である。その点でも本作の音楽担当に最適な人物なのだが、彼の音楽を語る上では“秘密”と“家族”というキーワードも重要なものとなっている。

『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

ダナは『スウィート ヒアアフター』(1997年)などのアトム・エゴヤン監督作品、アン・リー監督作『アイス・ストーム』(1997年)、ドン・ルース監督作『偶然の恋人』(2000年)、ミーラー・ナーイル監督作『モンスーン・ウェディング』(2001年)などで、複雑な家族関係や“秘密”と“嘘”が引き起こす悲劇、それらを経て訪れる“心の癒やし”の瞬間を描いてきた。結婚式の場でつらい過去が掘り起こされ、家族の重大な秘密が明かされていく本作でも、ダナの音楽は登場人物の揺れ動く内面を見事に描き出している。

筆者私物

筆者は今回もサウンドトラック・アルバムの差込解説書の中でダナにインタビューを行っているが、彼が本作のスコアの要点を簡潔に述べてくれた部分があるので、まずそのコメントを引用させて頂きたい。

最初、それぞれのキャラクターの内面は異なる楽器で描かれている。だが物語が進み、彼女たちの世界が複雑に絡み合うようになると、楽器のグループやテーマ曲の境界が曖昧になっていく。この映画の音楽では、イザベルとテレサの“心の奥に隠された自分自身”を、彼女たちが感じるままに描くことを心がけたんだ。

『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

例えばイザベルのテーマ曲にはバンスリ(インドの横笛)が用いられ、インドでの生活を心の拠り所とする彼女の内面をエキゾティックなメロディで描き出している。しかし、イザベルが次々と不測の事態に直面し激しく動揺すると、ストリングスが神経質な音を立て始める。一方「テレサのテーマ」はピアノとストリングスによる優雅な楽曲だが、イザベルとの出会いによって家族関係に変化が生じると、音楽も徐々に揺らぎ始める。そしてテレサが隠している“秘密”を示唆するように、哀調を帯びた編曲になっていく。ダナの言葉通り、不安、苛立ち、心の安らぎといったイザベルとテレサの感情が、慎ましやかな音楽で“彼女たちの感じるまま”に表現されているので、観客も二人の内面が直感的に理解出来るのである。ダナ本人のより詳細なコメントについては、サウンドトラック・アルバムの差込解説書を是非ご覧頂きたい。

『秘密への招待状』オリジナル・サウンドトラック
音楽:マイケル・ダナ
輸入・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-7444

なお本作のサウンドトラック・アルバムには、ダナのスコアのほかに3曲の挿入歌が収録されている。中でも印象的なのが、エンディングで流れる「Knew You For A Moment」。歌っているのは映画本編でグレイス役を演じたアビー・クイン。俳優業と並行して音楽活動にも力を入れているようで、この曲でも自ら作詞・作曲を手掛けている。自分が演じたグレイスではなく、あえてイザベルの視点から書いた歌詞とたおやかな歌声は、物語の結末を見届けた人の心に深い余韻を残すはずだ。

『秘密への招待状』© ATW DISTRO, LLC 2019

文:森本康治

『秘密への招待状』は2021年2月12日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開

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『秘密への招待状』

インドで孤児たちの救援活動に人生を捧げるイザベルは、施設の維持費を集めるために日々駆け回っていた。そんな彼女のもとに、多額の寄付の話が舞い込む。ただし、メディア会社を経営する支援者のテレサにニューヨークまで会いに行くのが条件だ。話をまとめて一刻も早く孤児たちの元へ帰りたいイザベルを、娘の結婚式に強引に招待するテレサ。寄付金のために渋々出席したイザベルは、テレサの夫を見て驚愕する。それは21年前、イザベルが18歳の時にいさかいの果てに別れた恋人、オスカーだった。さらに、目の前の新婦グレイスが、オスカーとの間にできたイザベルの娘だと気づく。結婚式への招待状をきっかけに明かされる、家族の衝撃的な〈真実〉と、新たな〈秘密〉。この日を境に、彼女たちの人生は予想もしない未来へと転がっていく──。

制作年: 2020
監督:
出演:
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