東山紀之主演で世界初舞台化! 映画『チョコレートドーナツ』アンコール上映 社会に許されない“家族”の愛のための戦い

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ライター:石津文子
東山紀之主演で世界初舞台化! 映画『チョコレートドーナツ』アンコール上映 社会に許されない“家族”の愛のための戦い
『チョコレートドーナツ』©2012 FAMLEEFILM,LLC

アメリカで多くの賞に輝き、日本でも小さな劇場からじわじわと人気を博しスマッシュヒットとなった映画『チョコレートドーナツ』(2012年)が、2020年12月11(金)から12月24(木)までホワイトシネクイントでアンコール上映される。同性愛者に対する差別が根深い1979年のウェスト・ハリウッドを舞台に、育児放棄されたダウン症の少年と、彼を息子として愛するゲイのカップルの愛と戦いの物語だ。この冬、東山紀之主演で世界初の舞台版が上演されるこの名作を、あらためて紹介したい。

『チョコレートドーナツ』©2012 FAMLEEFILM,LLC

障がいをもつ養子と同性カップルに立ちはだかる時代の壁と偏見

主人公ルディは、ゲイクラブのパフォーマー。歌手になる夢を持ちつつ、ドラァグ・クイーンとして口パクで歌い踊り、日銭を稼いでいる。情熱的だがなかなか運に恵まれずにいた彼がある夜、運命の出会いを果たす。それも二人の男性と。一人目は、イケメン検察官のポール。二人目は、隣に住むダウン症の少年マルコ。ルディはジャンキーの母親に放置された彼の面倒を一晩みるが、母親が逮捕されてしまう。ルディは施設に馴染めないマルコを引き取ることを決め、ポールと3人で暮らし始める。それは、孤独だった3人が初めて得た、家族という名のささやかな幸せだった。

邦題の『チョコレートドーナツ』はマルコの大好物であり、幸せの象徴として登場する。一方、映画の原題は『ANY DAY NOW』。ザ・バンドが1968年に発表した代表曲「アイ・シャル・ビー・リリースト(I SHALL BE RELEASED)」のフレーズで、「いつか、今すぐにでも」という意味。ボブ・ディランが書いた名曲であり、「いつか、今日にでも、解放されるはずだ」という、自由を奪われた囚人と思しき男の、絶望の中の希望を歌っている。ルディは最後、“I”を“We”に変えて歌う。

まさにこの映画は、絶望の中の希望を描いている。3人は家族でありたいと願うだけなのに、ありとあらゆる困難が立ちはだかる。それはマイノリティへの無理解や偏見や差別に基づくものであり、時に命取りになってしまう。その絶望的な状況を打破すべく、主人公たちは格闘するのだ。いつの日か、全ての偏見から自由になることを夢見て。

『チョコレートドーナツ』©2012 FAMLEEFILM,LLC

草彅剛が主演した『ミッドナイトスワン』(2020年9月25日より公開中)が重なる部分もある。日本ではLGBTQへの壁もまだ厚いが、アメリカではルディやポールのような一人一人が戦った末、2016年に全ての州で同性カップルが養子を迎えることが認められた。

ルディはマルコに「一目惚れした」と言い、彼に無償の愛を注ぐ。その姿はゲイであることを隠して生きてきたポールの生き方も変えることになる。だが同性愛者への無理解、そして法律の障壁は厚く、辛い裁判へと突き進んでいく。ルディがマルコに向ける慈しみの目線、愛する姿は、母親そのもの。まさにお母ちゃんだ。時に情熱が過ぎることもあるが、多くの母親がそういうものだろう。アラン・カミングがまさに全身全霊と言える名演を見せる。

『チョコレートドーナツ』©2012 FAMLEEFILM,LLC

「キャバレー」でトニー賞を受賞しているミュージカル・スターでもあるカミングが、ルディの切ない心情を「アイ・シャル・ビー・リリースト」や、「カム・トゥ・ミー」にのせて歌う姿は圧倒的だ。カミング自身、バイ・セクシュアルであることを公表し、2007年には同性婚もしており、LGBTQの人権活動家という顔を持つ。

『チョコレートドーナツ』©2012 FAMLEEFILM,LLC

また、ギャレット・ディラハントが、ポールの変化していく心情を大袈裟にならずに見せているのも、この映画をリアルに感じる理由の一つだ。そしてマルコ役を、実際にダウン症候群のあるアイザック・レイヴァが演じ、その純粋さがスクリーンを支配する。

『チョコレートドーナツ』
【おトク値!】ブルーレイ&DVD発売中/デジタル配信中
価格:ブルーレイ ¥2,500(本体)+税/DVD ¥1,800(本体)+税
配信:https://Movie.lnk.to/choco
発売元・販売元:ポニーキャニオン
©2012 FAMLEEFILM,LLC

日本で世界初の舞台化! 主演・東山紀之、共演・谷原章介、演出・宮本亞門

宮本亞門演出、及川眠子訳詞の舞台版では、東山紀之と谷原章介がルディとポールを、マルコ役はダウン症のある高橋永と丹下開登がダブルキャストで演じるという。東山版ルディのパフォーマンス・シーンも含め、どんな舞台になるか楽しみだ。

舞台「チョコレートドーナツ」

余談だが、「アイ・シャル・ビー・リリースト」は、ザ・バンドの解散コンサートをマーティン・スコセッシが追った『ラスト・ワルツ』(1978)の最後を飾る曲であり、忌野清志郎をはじめ多くのアーティストがカバーしている。個人的には小学生の頃に見た、西城秀樹が1977年に「ビッグ・ショー」(NHK)で歌ったバージョンが印象深い。歌詞はアイドル歌手の壁を思わせる超意訳だったが、熱唱だった。それから2年後、秀樹はヴィレッジ・ピープルのカバーである「ヤングマン(Y.M.C.A)」を大ヒットさせるのだが、それがこの映画の背景となる1979年だ。ヴィレッジ・ピープル版はゲイの若者へ呼びかける歌だったが、日本ではまだゲイという言葉も認知されておらず、青春讃歌として一世を風靡することになる。1979年とはそんな時代だったのだ。

『チョコレートドーナツ』はホワイトシネクイントで2020年12月11(金)から12月24(木)までアンコール上映

PARCOオープニング・シリーズ「チョコレートドーナツ」(PARCO劇場ほか全国順次上演予定)は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当初の予定であった2020年12月7日(月)の開幕を延期し、以降12月16日(水)まで公演中止。12月18日(金)以降の開催および中止公演チケットの払い戻しについては改めて公式サイトにて発表。

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