料理人と花魁……過酷な運命を生きる二人を描く『みをつくし料理帖』は角川春樹監督の超豪華“食”時代劇!

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ライター:BANGER!!! 編集部
料理人と花魁……過酷な運命を生きる二人を描く『みをつくし料理帖』は角川春樹監督の超豪華“食”時代劇!
『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

1970年代から日本の娯楽映画を牽引してきたプロデューサーであり、映画監督でもある御年78歳の角川春樹が生涯最後の作品として手掛けた『みをつくし料理帖』が2020年10月16日(金)より公開される。原作は特別編2冊を加えた全12巻からなる髙田郁による大ヒット時代小説シリーズ。本作では第3巻までのストーリーを再構築し、運命に翻弄されながらも懸命に生きる女料理人の姿を描いている。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

大坂から江戸へ、運命に翻弄される女料理人の一代記

本作の主人公は、天性の味覚を持ちながらも過酷な運命に翻弄される料理人の澪。幼いころは大阪に暮らしていたが、大洪水で両親を失ってしまう。その後、縁あって大坂でも随一と名高い「天満一兆庵」という料理屋の女将・芳に拾われ奉公人として働き始める。やがて主人の嘉兵衛にその味覚を認められ厳しい修行を重ね腕を磨いていく澪だったが、今度は隣家からの延焼で店が消失……。嘉兵衛は芳と澪を連れて江戸に支店を出していた息子を訪ねるのだが、息子は吉原通いで散財して店を潰し、行方不明となっていた。失意のなか、心労がたたった嘉兵衛は亡くなってしまう。身寄りもいない江戸に残された澪は、芳とともに生きていくため料理の腕一つを頼りに神田の「つる家」という蕎麦屋で働きはじめる。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

そして、もう一人の主人公といえるのが澪の幼なじみである野江だ。大店の娘で幼いころから美人で評判だった野江は、暮らし向きは違えど澪とは姉妹のように仲良くしていたが、大坂の大洪水で澪と同様に天涯孤独の身となってしまう。その後、女衒に騙され吉原に売られるのも、持ち前の美しさで幻の花魁・あさひ太夫として生き延びていた。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

これでもかという不幸に襲われながらも、大坂から遠く離れた江戸の地で懸命に生きる二人の女性。幼き頃、高名な易者に「苦労の多い人生だが、耐えて精進すれば必ず青空が拝める“雲外蒼天”の相の持ち主」と占われた澪と、「太閤秀吉にも匹敵する強運“旭日昇天”の相の持ち主」と言われた野江。二度と会うことはないと思われたが、澪が生み出した料理が別々の人生を歩む二人を引き寄せていく。原作で語られた、遠く離れた友を思う気持ちを表した杜甫の言葉“春樹暮雲”のように、お互いを想い合いながら、会いたくても会えない二人の関係を軸に物語は展開していく。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

伸び盛りの若手女優と角川映画オールスターズ

主人公・澪を演じたのは主演作の公開が続く松本穂香。素朴な佇まいながら芯に強い意志を秘めた女性を好演している。原作ファンとしては澪を象徴する“下がり眉”がどうなるのか気になるところだと思うが、観ているこちらが思わず相好を崩す仕上がりになっているので安心してほしい。野江を演じたのは、こちらも主演作の公開が続く奈緒。儚さと美しさが同居する難しい役どころを演じている。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

若手二人の脇を固める共演陣も豪華だ。角川春樹最後の作品ということもあり、角川映画の第1回作品『犬神家の一族』(1976年)で金田一耕助を演じた石坂浩二や、『野性の証明』(1978年)でデビューを果たし、その後の角川映画の黄金期を支えた薬師丸ひろ子といったオールスターともいえる俳優陣が出演している。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

なかでも、目を引くのは澪とあさひ太夫の間を取り持つことになる吉原「翁屋」の料理番、又次を演じた中村獅童だろう。現代人が着なれない着物で演技をするとどうしても軽さが目立ってしまうのだが、そこは歌舞伎役者。一本筋の通った立ち居振る舞いで画面にきりっとした緊張感を与えている。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

角川春樹が監督した映画というと、『汚れた英雄』(1982年)や『天と地と』(1990年)、『笑う警官』(2009年)といった、どちらかというと無骨な作品が多いイメージだが、生涯最後の作品として二人の女性を中心にした心温まる物語を選んだのも興味深い。2009年に出版された原作の第1巻の文庫の帯には「十年に一冊の傑作に、涙が止まらなかった」と絶賛のコメントを寄せており、過去に二度実写化された本作を再度映画化することに並々ならぬ意気込みがあったことが感じられる。

『みをつくし料理帖』※編集部私物

また本作は、料理人が主人公ということもあり、随所に美味しそうな食べ物が出てくる。上方と江戸の違いに苦心しながら作り上げた「とろとろ茶わん蒸し」や、昆布のいい香りが漂ってきそうな「牡蠣の宝船」など、思わず生唾を飲んでしまいそうな料理が続く。鑑賞する際は空腹を避けた方が無難だろう。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

ちなみに、原作小説の巻末には付録として作品に登場する料理のレシピが掲載されている。また、特別巻として「みをつくし献立帖」というレシピ本も出版されているので、気になる方はこちらもぜひ。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

耐え忍んだ先にはきっと青空が広がっている

2020年は世界中で多くの人々が耐え忍ぶことを強要された1年だったと言えるだろう。雲に覆われてしまったかのように先行きが見通せず、だれもが不安を抱えながら過ごしている。しかし“雲外蒼天”。耐え忍んだ先にはきっと青空が広がっているはずだ。

『みをつくし料理帖』©2020映画「みをつくし料理帖」製作委員会

どんな困難にもめげず、愚直にまっすぐ進む澪の姿に、きっと多くの人が励まされることだろう。日本のエンタメ界の酸いも甘いも知り尽くした重鎮が最後の作品として作り上げた本作を、ぜひ劇場で鑑賞してみては。

『みをつくし料理帖』は2020年10月16日(金)より全国公開

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『みをつくし料理帖』

享和二年の大坂。暮らし向きは違えども8歳の澪と野江は、まるで姉妹のように仲の良い幼なじみだった。しかしそんな二人が暮らす大坂を大洪水が襲い、二人の仲は無残にも引き裂かれてしまう。それから10年後。大洪水で両親を亡くした澪は引き取られ、江戸の神田にある蕎麦処「つる家」で女料理人に。野江は吉原にある遊郭に買い受けられ、幻の花魁・あさひ太夫と名乗っていた。澪が苦心して生み出した料理が、別々の人生を歩む二人を再び引き寄せていく。

制作年: 2020
監督:
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