台湾映画の傑作『バナナパラダイス』ついに上映! 名を捨て“他人”になり生き延びた人々の小さくて大きな物語

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ライター:松㟢翔平
台湾映画の傑作『バナナパラダイス』ついに上映! 名を捨て“他人”になり生き延びた人々の小さくて大きな物語
台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

ワン・トン監督の最高傑作が「台湾巨匠傑作選2020」で日本初公上陸

『バナナパラダイス』はワン・トン監督による1989年の台湾映画。長らく日本未公開だったものが、2020年9月19日(土)からK’s cinemaで開催の「台湾巨匠傑作選2020」で公開される。

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

とても素敵な映画で、僕はこの原稿を書くために一回観て、その翌日、無性にまた観たくなって二回目を観終わり、結局三回観てしまった。三回目はついさっき観終わった。こんなことはあまりないことだ。

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

『バナナパラダイス』は第二次大戦後の台湾史を、個人に焦点を当てて描いた小さくて大きな歴史映画。社会科の教科書の最初に付いていた大ぶりな歴史年表と全く同時に動いていた、ある個人たちの小ぶりな年表。それをゆっくりと追っていく淡々とした映画だ。

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

2人の主人公、ダーションとメンシュアンは初め、中国大陸で国民党軍として軍隊生活を送っている。国民党はその後、中国共産党との争いに敗れ中国大陸から台湾へと逃れる。ダーションとメンシュアンの2人も台湾へと渡るが、そこで共産党のスパイの嫌疑をかけられたことで、自分の名前を捨てて赤の他人の名を騙りながら生活を送ることになる。そんな2人がやがて家族を持ち、自分の“子供”を育て上げるまでの人生を描いたのが『バナナパラダイス』という映画だ。

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

この映画が描き出すのは、大きな物語に翻弄される小さな人々の話

この映画が描くのは、僕が住んでいたときよりも、ずっと前の台湾なのだけれど、映画に出てくる空の色や空気は今の台湾の雰囲気と変わらない。僕は映画を観ながら、自分が出会ってきた台湾の友人たちやその家族を思い出した。台湾にはいろいろな人がいる。台湾は複雑な国だ。中華民国、台湾、名前が二つある。かつてはフォルモサ(ポルトガル語で“美しい島”)とか、50年間も大日本帝国領台湾と呼ばれた時期もあった。

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

そんな島に住んでいる外省人と本省人、福佬人と客家人と台湾政府に認定された16の原住民族、そこに含まれない数多の民族。みんなが台湾に暮らす台湾人ではあるけれど、得意料理や風習、言葉が少しづつ違ったり、融合していったり。それが今の台湾だ。『バナナパラダイス』の主人公2人は外省人という括りに入る。

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

こんな複雑な台湾の歴史の動きを確かに描きながら、そして外省人の2人にフォーカスを当てながらも、この映画が描き出しているのは大きな物語に翻弄される小さな人々の話だ。個人の生活には必ず国家的な物語が入り込んでしまうということと、個人の生活には国家的な物語が入り込めない部分も確かに存在するのだということを同時に描いている。

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

大幅な延期を経てたどり着いた、「台湾巨匠傑作選2020」開催。『バナナパラダイス』がコロナのせいで上映の機会を失うことがなくてよかった。皆さん、ほんと観てください。

(※編集部注:「台湾巨匠傑作選」の開催は当初2020年4月の予定だった)

台湾巨匠傑作選『バナナパラダイス』

文:松㟢翔平

『バナナパラダイス』は2020年9月19日(土)より「台湾巨匠傑作選2020」で上映

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『バナナパラダイス』

1949年、幼馴染みのダーションを頼って国共内戦中の国民党軍に潜り込んだ青年メンシュアンは、寒風吹きすさぶ荒涼たる中国華北から、バナナが実る緑豊かな南国・台湾へとたどり着く。そんなある日、その新天地で二人にスパイ容疑がかけられ、メンシュアンは命からがら部隊を逃げ出す。途中、ある男の臨終に出くわしたメンシュアンは、その妻ユエシャンに彼女の夫になりすまして仕事に就くことを持ち掛けられる。そして……。

制作年: 1989
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