【追悼】チャドウィック・ボーズマン傑作3選 ブラックパンサーだけじゃない! 実在の偉人たちを演じた名作

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ライター:BANGER!!! 編集部
【追悼】チャドウィック・ボーズマン傑作3選 ブラックパンサーだけじゃない! 実在の偉人たちを演じた名作
『マーシャル 法廷を変えた男』© 2017 Marshall Film, LLC. All Rights Reserved.

チャドウィック・ボーズマンよ、永遠に

マーベル・コミックのスーパーヒーロー映画『ブラックパンサー』(2018年)で知られる俳優、チャドウィック・ボーズマンが43歳という若さで癌によりこの世を去った。あまりに唐突な訃報は世界中に大きな衝撃と悲しみを与えたが、『ブラックパンサー』のライアン・クーグラー監督やNetflixオリジナル作品『ザ・ファイブ・ブラッズ』(2020年)のスパイク・リー監督、そして多くの共演者たちも彼の病について全く知らなかったというから、死の直前まで必死で癌に打ち勝とうとしていたチャドウィックの精神力の強さが伺い知れる。

チャドウィックの代表作を聞かれれば、誰もが『ブラックパンサー』を挙げるだろう。同作で彼が演じたティ・チャラは最強かつ猛烈にイケてる人物であり、さらに“最新テクノロジーを持つ謎多き国の王でありスーパーヒーロー”という超クールなキャラクター像によって、未来を背負って立つ若き黒人たちにポジティブな影響を与え続けるという意味でも非常に重要な作品だ。そんなチャドウィックは、架空のヒーローだけでなく実在のヒーローも幾度となく演じてきた。次世代へのポジティブな影響を考慮し、犯罪者や低所得の労働者といった黒人のステレオタイプを避けて、意識的に“陽”の面を担う役柄をチョイスしてきたのかもしれない。

かつて織田信長に仕えたという黒人の侍を演じるはずだった『Yasuke(原題)』を観ることが叶わなくなったことも残念だが、ハリウッドを流星のごとく駆け抜けたチャドウィック・ボーズマンという俳優を、そして彼が演じることを望んだ偉大な黒人たちをより深く知ることができる、実話に基づく3作品を紹介したい。

メジャーリーグ初の黒人選手が起こした数々の奇跡を描く『42 ~世界を変えた男~』

1940年代半ば、第二次世界大戦に勝利したアメリカの人々は再びスポーツに熱狂することができるようになったが、アメリカ人として国のために戦った帰還兵を含む黒人たちを待ち受けていたのは、戦前と全く変わらぬ容赦ない差別だった。『42 ~世界を変えた男~』(2013年)でチャドウィックが演じるのは、スポーツ界にも根強く残っていた人種差別の壁を超え、史上初の黒人メジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンの半生を描いた物語である。

当時のメジャーリーグはチーム登録数16、登録選手400名、その内たった1人の黒人がロビンソンだった。兵役を終えたロビンソンがニグロリーグを経て、ブルックリン・ドジャースのGMブランチ・リッキー(ハリソン・フォードが特殊メイクでハリソンみを排除!)に登用されたのは1945年のこと。まずドジャース傘下のモントリオール・ロイヤルズで実力を証明してみせることになるが、その過程で様々な“トラブル”の対処法も学んでいく。差別心モロ出しの白人リーグの中に、単身放り込まれた黒人選手。野球のプレーシーンと生き様そのものを半々くらいのバランスで描くことで、彼の力強さと脆さの両方を知ることができる構成だ。

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#42 #fbf

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初戦から身体能力の高さを見せつけるロビンソンの姿を見ると、思わず何度も小さくガッツポーズしてしまうはず。差別を通り越して悪意の塊みたいな警察はさておき、リッキー以外にも人種関係なく接する白人ファンがいたりするのだが、さすが野球はアメリカの国技のひとつだけあって優先順位が逆転するというか、盲目的な差別を乗り越えさせるほどの競技なのだということがわかる。ロビンソンの活躍にはリッキーのように権力を持つ白人の存在が不可欠だったとはいえ、その才能と人間性によって黒人スポーツ選手の未来を切り拓いたことが非常に分かりやすく描かれている作品だ。

チャドウィックJBのなりきりっぷりに脱帽!『ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~』

多くの(アラサー以上の)日本人には「ゲロッパ!」でお馴染みの伝説的ソウルシンガー、ジェームス・ブラウン(2006年逝去)の人生を描くのが『ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~』(2014年)だ。チャドウィック、あまりにも似てなくないか……? と心配になる人もいそうだが、冒頭の(特殊メイク+での)なりきりっぷりシーンで、そんな心配は吹き飛んでしまうだろう。そして、あの聴き慣れた「イエェェァァアオウッ!」の咆哮で始まる「メドレー:ゲット・アップ・オファ・ザット・シング/リリース・ザ・プレッシャー」をバックに、50代半ばでやらかした1988年の“ショットガン事件”から映画は幕を開ける。

そこからベトナム戦争真っ只中の1968年、戦地での慰問コンサートのシークエンスへ。ここでチャドウィックは若くギラついたJBをほとんど素のままで演じているのだが、すべての言動がいちいちクリソツでニヤニヤが止まらない。ファミリーへの罰金システムのネタなんかも自然に挟み込んできて、彼の有名エピソードをなぞるような構成にファンならば爆笑……もとい感動すること請け合いだ。さらに本作は、1939年まで一気に時代を遡って極貧の少年時代を、すぐに60年代に戻って盟友ボビー・バードの意味深な表情を……とせわしなく時代を行き来する。不屈の精神とミュージシャンとしての基礎を作った少年期~アーティストとして覚醒した青年期以降を交互に描く構成が小気味よく、しかも伝記映画でありながら第4の壁を破るといった大胆演出もJBの破天荒なキャラクターと絶妙にマッチしていて、彼の物語にぐいぐい引き込まれていくのだ。

『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』
NBCユニバーサル・エンターテイメント
価格:DVD 1,429円+税/Blu-ray 1,886円+税
© 2014 Universal Studios. All Rights Reserved.

さすがに歌唱シーンはリップシンクのようだし、熱心なファンからすると(彼の“やらかし”部分などへの)ツッコミどころもあるだろう。だが幼くして孤児同然となった彼がファンクの始祖となっていく、数多のアーティストに影響を与えたレジェンドの人生をJB初体験の観客もまるっと知ることができる濃い内容だし、劇中に若かりしローリング・ストーンズとしてチラリと顔を出すミック・ジャガーが製作に携わっているのも納得の、“不滅のJB物語”であることは間違いない。もちろん、真っ白い歯を見せてニカッと笑うJB=チャドウィックのキラキラした存在感を味わうにも最適な作品だ。

黒人として初めて米最高裁判事となった志高き人物の偉業!『マーシャル 法廷を変えた男』

『ブラックパンサー』でチャドウィックと共演したマイケル・B・ジョーダンが、黒人の冤罪死刑囚を数多く救った実在の弁護士を演じた『黒い司法 0%からの奇跡』(2019年)。その舞台となった80年代から遡ること約40年前、同じく黒人弁護士として多くの黒人を救い、アフリカ系アメリカ人として初めて最高裁判所判事に任命された偉人、サーグッド・マーシャルの半生を描いた伝記映画が『マーシャル 法廷を変えた男』(2017年)だ。

『マーシャル 法廷を変えた男』
Blu-ray&DVDセット
価格:\4,743+税
発売・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

チャドウィック演じるマーシャルは、その肩書からして高潔で清廉な横分けメガネおじさんかと思いきや、まるで『マルコムX』(1992年)のデンゼル・ワシントン(序盤)みたいにバシッと洒落たスーツで決めたクールな御仁。このキャラ造形はさすがに脚色かと思うが、彼は全米黒人地位向上協会 (NAACP) のもとで活躍する弁護士であり、担当したケースの大半を無罪に導いたという実力の持ち主だ。そんなマーシャルの新たな依頼は、雇い主の富豪の妻(白人)をレイプし殺害しようとした罪で逮捕されたジョゼフ・スペル(スターリング・K・ブラウン ※ティ・チャカの弟ウンジョブ役の人!)という黒人男性の弁護だった。

『マーシャル 法廷を変えた男』© 2017 Marshall Film, LLC. All Rights Reserved.

彼に協力を乞われた地元弁護士サム・フリードマン(ジョシュ・ギャッド)は民事しか経験がなく、ここに“凸凹バディもの”が成立。マーシャルの社会の膿を絞り出さんとするかのような過激な言動に戦々恐々のフリードマンは差別主義者でこそないが、無関心を決め込む人々の象徴として描かれている(※Black Lives Matter運動に対して「気の毒だとは思うけど、詳しく知らないし私たちの生活には直接関係ないし……」みたいな人、皆さんの回りにもいませんか?)。いわゆる“操り人形”として渋々協力するフリードマンも実は被差別側のユダヤ系であり、お互いの溝を埋めるかのようにぶつかり合ううちに、職務を超えた“ひとりの人間としての使命感”に目覚めていく。

『マーシャル 法廷を変えた男』© 2017 Marshall Film, LLC. All Rights Reserved.

ヘビーな内容ながらシリアス一辺倒ではなく、法廷の内外を問わず人間ドラマ部分を丁寧に描きつつも、マーシャルたちの“足枷”を利用して逆にリズム感を出していく展開は見事。要所にガツッと燃えるシーンも用意されていて、思わず「うぉお……」とか「くぅ~!」と唸ってしまう。しかもガハハと笑えるブラックなジョークまで盛り込んでくるという、しっかりエンタメ映画として面白いのだからとにかくスゴい。予想外のフックをかましてくる終盤の展開もワクワク度がハンパなく、さらにマーシャルからは「偏見の扉は壊して入るしかない」みたいなメモりたくなる至言がバシバシ飛び出すので、終始ハートが震えっぱなしだ。ちなみに原告側の弁護士に、憎たらしい悪人を演じさせたらピカイチのダン・スティーヴンスを配したあたりもグッドである。

『黒い司法 0%からの奇跡』は2020年、NAACPが主催する<第51回 NAACPイメージ・アワード>で最優秀作品賞、最優秀主演俳優賞、最優秀助演俳優賞などを総ナメにした。マイケル・Bが演じたブライアン・スティーブンソンは、マーシャル判事と並んで米国史上もっとも重要な仕事を成し遂げた公民権弁護士と称されているが、チャドウィックとマイケル・Bが『ブラックパンサー』で共演したことも宿命だったのでは? なんて思いが頭をよぎる。そして彼らを筆頭にBLMのデモなどに参加した俳優や音楽関係者たちの姿を見て感じたのは、彼らの職業は単なる“芸能活動”というだけでなく、自身の才能を活用した公民権運動でもあるということだ。

『マーシャル 法廷を変えた男』© 2017 Marshall Film, LLC. All Rights Reserved.

この先まだ数十年はチャドウィックの活躍する姿を拝めると思っていただけに、多くの人がやり場のない悲しみを抱えているはず。彼の死はハリウッドだけでなく現代社会全体にとって痛恨の喪失であり、こうして過去の出演作を観て楽しむたびにズシリと胸が痛むのだった。

Rest in Power チャドウィック・ボーズマン!

『42 ~世界を変えた男~』『ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~』『マーシャル 法廷を変えた男』はAmazon Prime Videoで配信中

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