蟻地獄ミステリー『メメント』が期間限定上映! ノーラン監督の初期代表作の狂いっぷりが異常!

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ライター:BANGER!!! 編集部
蟻地獄ミステリー『メメント』が期間限定上映! ノーラン監督の初期代表作の狂いっぷりが異常!
『メメント』©2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC

長編2作目にして大ヒットを記録した“記憶障害”サスペンス

時系列を遡る/シャッフルする映画といえば、クエンティン・タランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(1994年)やギャスパー・ノエ監督の『アレックス』(2002年)など多々あるが、最新作『TENET テネット』が2020年9月18日(金)より公開されるクリストファー・ノーラン監督の『メメント』(2000年)は、その複雑な構成とミスリードを誘う描写に加え、観客に“想像させる”余地を持たせた奥深い作品だ。

『メメント』
発売元:博報堂DYミュージック&ピクチャーズ
販売元:アミューズソフト
価格:3,800円+税
©2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC

同じく時系列をシャッフルさせた長編デビュー作『フォロウィング』(1998年)も話題を呼んだノーラン監督だが、『メメント』はインディペンデント系ながら世界中で大ヒットを記録した、いまだに熱狂的なファンを持つノーランの初期代表作。ガイ・ピアース演じる主人公レニーは頭部の怪我によって短期記憶障害を抱えていて、“妻が殺された”という最後の記憶に突き動かされるように犯人への復讐に燃えている。その復讐劇を、数十のパートに分割した逆行(カラー)/順行(モノクロ)シークエンスで交互に見せていくという、とにかく初見では全く意味不明な内容によって多くの映画ファンの心を掴んでみせた。

観れば観るほど謎にハマる! 思わず頭を抱える蟻地獄のようなミステリー展開

初見どころか、そもそも全登場人物が全力で怪しいこともあって、時系列を整理して2周目に挑んでも自分の脳の処理スピードとの戦いになるというハードな仕様である。なにしろレニーは1日の出来事を次から次へと忘れていくので、地道な物忘れ防止テクなんかに気を取られて固有名詞やセリフを疎かにしているかぎり全体像がハッキリ見えてこない。それでも3度4度と観ていくうちに不可解なポイントが整理できてくるのだが、今度はレニー自身の挙動が怪しく見えてきて仕方ないという、まさに蟻地獄のような作品である。

『メメント』©2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC

記憶障害を自覚しているレニーは、身の回りで何か起こるたびに“なぜか?”を自身に問いかけるが、その繰り返しをすり込まれた観客は徐々に真実を見失っていく。揉めたりイチャついたりする女性→ファム・ファタール(ノワール)、短期記憶障害によるドタバタ展開→コメディ、憶測に基づく過剰な暴力→サイコスリラーみたいな感じで、様々なジャンルを行き来するような展開で観客の判断力を惑わせるなどは、ノーランの性格の悪さ……もとい映画作家としてのコダワリを感じさせる。原作を手がけたのはノーランの弟ジョナサンとのことだが、『ダークナイト』(2008年)や『インターステラー』(2014年)など兄弟で脚本を手掛けた作品が特にヒットしている=ファンが多いのも納得だ。

キャスティングにもひとクセあり! 最初から最後まで虚実の入り乱れる怪・名作

さらに印象的なのは、レニーが細々とした注意ポイントを忘れないように自分の体にメモを“彫る”という斬新な行為だ。正直、一度彫ったものなんてすぐに意識しなくなるのだが、ペンのインクを使って自分でちまちま彫ったり(滅菌しないハンドポークは危険なのでやめましょう)、施術後に絆創膏の回りをモソモソ掻いてしまったりするデティールの細かさで、高校2年生くらいの発想に説得力を持たせてしまうところもノーランの魅力。胸に彫ったものなんて半裸で鏡を見つめるようなナルシストでもないと意味をなさないし、メモでしかないのにちゃんとデザインされたレタリングだったりするあたりは……映画を面白くするためのハッタリということで許容範囲内だ。

『メメント』©2000 I REMEMBER PRODUCTIONS,LLC

また、これはノーランいわく意図的だそうだが、前年に大ヒットした『マトリックス』(1999年)のサイファー(aka『バッドボーイズ』[1995年]シリーズのハワード警部)ことジョー・パントリアーノと、トリニティことキャリー=アン・モスが本作にも出演していて、その役柄のイメージを利用することで虚実の入り混じった世界観であることを示唆している。デビュー作から最新作に至るまで、“意識と無意識”、“善と悪”、“現実と虚構”という人間の本質をテーマにしてきたノーラン監督らしく、記憶障害発症前の自分自身に操られる傀儡のようでもあるレニーの悲哀……を通り越してギャグに見えてくるあたり、やはり徹底的に掴みどころのない狂った名作なのだった。

『メメント』は2020年9月8日(火)~24日(木)までシネクイント<2周年特集上映>にて上映、Netflixほか配信中

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『メメント』

舞台はロサンゼルス。保険調査員のレナードの家にある日、何者かが押し入る。彼の妻はレイプされた後、殺害された。その光景を目撃したショックで、レナードは10分しか記憶を保てない前向性健忘という記憶障害になってしまう。ハンディを背負いながらも、犯人を捜し出そうとするレナード。ポラロイド写真にメモを書き込み、事件に関するキーワードは全身にタトゥーとして彫り込む。しかし謎を追えば追うほど、更なる謎が広がっていく……。はたして、レナードは犯人を見つけることが出来るのか?

制作年: 2000
監督:
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