村上虹郎と芋生悠は“若き逃避行物語”をどう演じた?『ソワレ』豊原功補、小泉今日子らの新会社プロデュース作品

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ライター:BANGER!!! 編集部
村上虹郎と芋生悠は“若き逃避行物語”をどう演じた?『ソワレ』豊原功補、小泉今日子らの新会社プロデュース作品
『ソワレ』村上虹郎、芋生悠

『ソワレ』村上虹郎&芋生悠インタビュー【Part 1】

若干20代前半にして錚々たるキャリアを誇る村上虹郎と芋生悠がW主演を務め、気鋭の若手監督・外山文治がオリジナル脚本を映画化したフレッシュな話題作『ソワレ』。豊原功補、小泉今日子らが設立した<新世界合同会社>の第一回プロデュース作品であり、和歌山県御坊日高の美しい自然を背景に若き男女の逃避行を描いた物語だ。

そんな本作で、役者の夢に挫折した岩松翔太を演じる村上と、高齢者施設で働く山下タカラを演じる芋生。業界のトレンドには目もくれず、常に等身大の人間の営みを描いてきた外山監督の最新作から何を感じ、どんな演技を目指したのか? 和気藹々ながらも二人の本作への熱量が伝わってくるインタビューを、前後編に分けてお送りする。

『ソワレ』© 2020 ソワレフィルムパートナーズ

「僕らもやっていくうちに“新しさ”を感じたんです」

―まず、お二人から映画『ソワレ』についてご紹介いただけますか?

芋生:この映画は和歌山を舞台にした映画で、私が演じるタカラと虹郎くんが演じる翔太が出会って、駆け落ちをするというお話です。簡単に言うとそうなんですけど、駆け落ちする恋愛映画というよりも、それを越えた二人の一瞬のきらめきというか、観終わった後に「あの二人ってどうだったんだろう」ってずっと残るようなお話かなと思います。自分の中でも思い出の一つになっているような作品です。

村上:芋生さんがおっしゃった通り、台本を読んでみると、描かれているストーリー自体は、そんなにややこしい話ではないというか。意気込んで「東京で役者になってやる」「有名になってやる」というような感覚、そのミーハー心からはじまって、演劇とかに出会って芸術というものにしっかり携わっていくなかで、「ああ、この世界は深いぞ」ということに直面して……。役者としての地位はなかなか築けるものではないし、いつまでも景色が変わっていかない。そんな苦しい状況で生きている彼のような人もいれば、もっと素朴で狭い世界でもっと切実に、自分では選べない環境でもがき苦しんでいる人もいて。

『ソワレ』© 2020 ソワレフィルムパートナーズ

きっと彼は家庭環境には恵まれていたと思うんです。でもそのなかで、出身は一緒でも環境が違う人間と出会って、価値観のすれ違いだったり、そこで差別意識も垣間見えたりだとか、すごく狭い世界の話ではあるんです。ストーリーはシンプルだけど、「なんかこの話、見たことあるような……いや、ないわ」という、僕らもやっていくうちに“新しさ”を感じたんです。いまどき新しいものってなかなか、それこそたくさんお金をかけてCGを使ったりしないと生まれないんじゃないかって感じてしまう部分もどこかにあると思うんです。でも、これだけミニマムな世界で新しさを表現することをそこに特化しているわけではないんですけど、見出だせたのかなって感じました。すごくクラシックなはずなんですけど。

―村上さんから見た翔太の魅力はどんなところでしょうか?

村上:彼は憎めない存在だし、きっと学生時代は人気者で無意識に人の中心にいた、いつの間にか集団の中心にいてしまったっていう、そういう存在だと思うんです。そしてタカラという人は、当時の翔太からは見えていない。でもタカラからは見えていたし、見てくれていたっていうことだと思うんです。そんな彼がもっと広い世界に行って、特殊な人格でもなければ何か突出した性格というわけでもない、特別な武器もなく、おそらく勉強も足りていない、もっと言うと翔太は、自分とは何であるのかを分かっていない。もしかしたらタカラの方が、自分の置かれている立ち位置を若い時から考えざるを得なかった。多分、翔太は無自覚な人間なんですよね。それはもう、この作品のタカラとのシーンでどんどん露わになっていくんですけど。翔太には弱さや負けグセがあって、でもプライドもあって、そのプライドでさえ変な部分にだけ残していて。

『ソワレ』© 2020 ソワレフィルムパートナーズ

僕らもそうなんです、良くも悪くもなんですけど。やっぱり役者をやっていると、結局は“誰とも似ちゃいけない”っていう部分がひとつ、あるじゃないですか、もちろん学問として、同じ場所を通らないといけない部分もあるとは思います。でも人と違わなければいけないっていうことで言うと、結局は誰も正解を知らないんです。自分しか知らない。翔太の場合、本来の価値観からさえ逸脱しかけているのに、自分すら見失っている。本当に何も分からないから、そこでタカラと出会ったことの価値を、しかも彼自身は気づいていない状態。だけど、映画を観ている人たちは「そこにあるんだよね」って分かってる。でも彼は知らない、っていうことなのかなって。

『ソワレ』© 2020 ソワレフィルムパートナーズ

―芋生さんから見た、翔太というキャラクターの印象は?

芋生:虹郎くんが演じるからこその翔太があるなと思いました。自分自身にずっと葛藤があって、ずっとモヤモヤしている。それをどこにぶつけていいか分からない、みたいな怒りがあって。でも、それってすごく純粋で、それがあるからこそ強くて、輝いて見えるんだなって。それは虹郎くん自身からも発せられるものなのかな。だから撮影中、一緒にお芝居をしていても、虹郎くんが演じる翔太からタカラとしての気持ちをもらった部分もあって。その弱さが逆に強さになったというか。

『ソワレ』© 2020 ソワレフィルムパートナーズ

―タカラというキャラクターについてはいかがですか?

芋生:最初はタカラと自分自身にはそんなに共通点はないと思っていたんですけど、監督は私を見てあて書きというか、ちょっと寄せて書いてくださっていると聞いて、どの部分が共通してるんだろうっていうところからはじまったんです。

世間の汚れたものとかを若い時から見ている子で、いろんな物事を知ってはいるけれど、そんななかでも絶対に失わない部分というか、自分が信じる綺麗なものっていうのがある子だなって。それが翔太の存在なのかもしれないし、そこは観ていただいて想像してもらいたいところでもありますね。そういう部分で、自分自身が持っている“失っていないものは? ”みたいなことはずっと意識していました。

『ソワレ』© 2020 ソワレフィルムパートナーズ

【Part2に続く】

『ソワレ』は2020年8月28日(金)よりロードショー

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『ソワレ』

俳優を目指して上京するも結果が出ず、今ではオレオレ詐欺に加担して食い扶持を稼いでいる翔太。ある夏の日、故郷・和歌山の海辺にある高齢者施設で演劇を教えることになった翔太は、そこで働くタカラと出会う。数日後、祭りに誘うためにタカラの家を訪れた翔太は、刑務所帰りの父親から激しい暴行を受けるタカラを目撃する。咄嗟に止めに入る翔太。それを庇うタカラの手が血に染まる。逃げ場のない現実に絶望し佇むタカラを見つめる翔太は、やがてその手を取って夏のざわめきの中に駆け出していく。こうして、二人の「かけおち」とも呼べる逃避行の旅が始まった──。

制作年: 2020
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