グレン・クローズ、アカデミー主演女優賞大本命!?『天才作家の妻 -40年目の真実-』が描く人生の可能性

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:BANGER!!! 編集部
グレン・クローズ、アカデミー主演女優賞大本命!?『天才作家の妻 -40年目の真実-』が描く人生の可能性
『天才作家の妻 -40年目の真実-』©META FILM LONDON LIMITED 2017
グレン・クローズが第76回ゴールデングローブ賞で主演女優賞を獲得した『天才作家の妻 -40年目の真実-』が2019年1月26日(土)から全国公開! 夫の栄光を影で支えてきた女性の内なる葛藤を描き、クローズの7度目となるアカデミー賞ノミネート、そして初の受賞も期待される話題作だ。

黙って観ろ! グレン・クローズの演技を!!

『天才作家の妻 -40年目の真実-』©META FILM LONDON LIMITED 2017

ついにノーベル文学賞を受賞した老練の作家と、その真の功労者である妻。長年連れ添った理想的な夫婦には40年ひた隠しにしてきた秘密があった……。『天才作家の妻 -40年目の真実-』は、愛情と憎しみが交錯する熟年夫婦の物語であり、理不尽な理由で閉ざされてきた女性の可能性を「遅すぎることはない」と後押しする物語でもある。

賞レース大本命とはいえお話自体はシンプルなので、ひとまずグレン・クローズの素晴らしい演技に身を委ねるだけでもいいだろう。

『天才作家の妻 -40年目の真実-』©META FILM LONDON LIMITED 2017

一緒にいることが当たり前になった夫婦生活、突然舞い込んだ褒賞、影に徹する苦悩、物語のフックになるのは常にクローズの重厚な演技。『ガープの世界』(1982年)から『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)まで、幅広いキャリアで培ってきた貫禄を見せつけてくれる。

そんなクローズが演じるのは、やや内向的だが賢妻良母なジョーン。かたや、まるで少年のような無邪気さや軽薄さも感じさせる夫ジョゼフを演じるのは、『未来世紀ブラジル』(1985年)から一貫して神経質そうな線の細いオッサンを好演してきたジョナサン・プライス。還暦どころか喜寿に届きそうな老夫婦だが、どんな状況でも淡くエレガントなオーラを纏っているあたりはさすがだ。

演劇畑でならした監督の手腕が冴える

『天才作家の妻 -40年目の真実-』©META FILM LONDON LIMITED 2017

「現代文学の巨匠の作品、実は奥さんが書いてました」と言ってしまうと身も蓋もないが、ノーベル文学賞うんぬんはあくまで盛り上げ要素であって、実際、原作小説ではもっと小さな賞だったらしい。いわんや肝心なのは、長らく社会的/文化的に抑圧されてきた女性たち、そして問題を認識しつつ目をそらしてきた男性社会だ。しかも舞台は「#MeToo」運動のはるか以前、1990年代のアメリカである。妻ヒラリーに不貞を赦されてきたクリントン政権時代というのは偶然だろうか。

ちなみに、夫婦の秘密を暴こうとするジャーナリストを演じるクリスチャン・スレイターも、彼の爬虫類っぽさがいやらしくてハマり役。

『天才作家の妻 -40年目の真実-』©META FILM LONDON LIMITED 2017

「男性作家は性欲過剰。それを評論家が美化して書くからチャーミングとか言われる。でも人として最低だと思う」というセリフにはニヤリとしてしまうが、このテーマで何本か映画が撮れてしまいそうなキレのある分析である。ジョーンとのバッチバチのやりとりは可笑しくも燃えるシーンなので要注目だ。

監督のビョルン・ルンゲは演劇畑でも活躍する人物だそうだが、その割に落ち着いた演出は好感度が高い。夫と従属関係にあった妻がついに権利を謳い上げる! みたいなエモい空気は極力抑え、すべての女性に開かれるべき“可能性”を丁寧に描く。よく過去のセクハラを告発した女性に向かって「なんで今さら」みたいなことを言う輩がいるが、本作を観ても同じことを言えるのか聞いてみたいものである。

性別や世代を問わず重要な気づきを与えてくれる

『天才作家の妻 -40年目の真実-』©META FILM LONDON LIMITED 2017

終盤まであからさまには描かれないが、妻の代筆が当然のように振る舞う夫の心理とは一体どんなものなのだろうか。ジョーン自身も水面下で波打つ違和感に心を乱されつつ、家族としての幸せを共有することでなんとか鎮めているように見える。お互いに同一化したような歪んだ共依存関係に亀裂が入り、やがてダムのように一気に崩壊する……頃には、多くの観客が「言うたれ! 今すぐバラしたれ!!」とジョーンを応援していることだろう。そして衝撃的なラストには「えっ、あっ、まじすか……」と言葉を失うかもしれない。

1950~60年代、そして90年代を経て現代、2010年代最後の年に公開され(しかも賞レースの大本命として取り上げられ)るこの作品が、世代や性別にかかわらず多くの気づきを与えてくれるはずだ。

『天才作家の妻 -40年目の真実-』は2019年1月26日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開

 

【特集:第91回アカデミー賞】

Share On
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

『天才作家の妻 -40年目の真実-』

偉大なる世界的な作家と、彼を慎ましく支えてきた完璧な妻。長年連れ添ってきた夫婦の関係は、夫ジョゼフがノーベル文学賞を受賞したことで静かに揺らぎはじめる。やがて二人はスウェーデンのストックホルムを訪れ、ジョゼフは授賞式のリハーサルなどの慌ただしい行事をこなすことに。一方、夫が栄光のスポットライトを浴びようとしている陰で、ジョーンは彼を愛しながらも、心の奥底に溜め込んだ複雑な感情が沸き起こってくるのを抑えられなくなっていく。誰も想像だにしない夫婦の秘密とは、いったい何なのか?そして世界中の注目が集まる授賞式当日、ジョーンはいかなる決断を下すのか……?

制作年: 2019
監督:
キャスト:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • グレン・クローズ、アカデミー主演女優賞大本命!?『天才作家の妻 -40年目の真実-』が描く人生の可能性