ベン・ウィショーが“花粉”吸引で別人格に!? 日本人作曲家の音楽が妖しさを引き立てる『リトル・ジョー』

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ライター:川辺素(ミツメ)
ベン・ウィショーが“花粉”吸引で別人格に!? 日本人作曲家の音楽が妖しさを引き立てる『リトル・ジョー』
『リトル・ジョー』© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

去年くらいから、植物のような曲が作れないかな? と考えることが増えていました。それは、生物でありながら数学的にシステマチックな構造や行動パターンを持っているところが美しいな、と感じるようになったからです。

思えば3年くらい前から家で観葉植物を育てるようになり、だんだんそういった植物の良さに気づくようになったところが始まりでした。魅了される人の気持ちがわかるような気になってきて、盆栽やガーデニングなどの趣味を心から愛する人の多さに納得がいくようになりました。

そんな人々の“植物を愛する気持ち”を利用して、植物がしたたかに増殖しようとする「バイオ・ホラー」と呼べるような作品が『リトル・ジョー』です。

『リトル・ジョー』© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

遺伝子操作によって開発した植物の“花粉”が人間を変える……?

エミリー・ビーチャム演じるアリスは研究者。バイオ企業の研究所で新種の植物を開発しています。彼女は息子のジョーと2人で暮らしていて、とても彼を愛しています。アリスは優秀かつ野心があり、研究所の規範を少々堅苦しく思っていました。彼女は研究所のルールを軽く見ているところがあり、それらを逸脱した“遺伝子操作”によって開発を行っていました。

『リトル・ジョー』© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

ある日、育て主を幸せな気持ちにさせる品種の開発に成功し、息子にちなんでリトル・ジョーという名をつけます。その花が人を幸せな気持ちにさせる方法というのが、人間が“幸せを感じる物質”の分泌を脳内で促すことでした。次第に、まるで花が意思を持ってその力を利用し、人間を巧みに操っているかのような様相を呈していきます。

『リトル・ジョー』© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

作曲家・伊藤貞司の音楽が妖しい映像をいっそう引き立てる

この物語は、人間のちょっとした油断と遺伝子操作の掛け合わせで起きる厄災が一つテーマになっているように感じられました。例えば偶然、新型コロナウイルスのようなものが出来上がってしまえば、人類に大きな打撃を与えうるということを身近に感じさせるものです。ただ一方で、美しい花を作ろうという意図であっても一歩間違えれば危険と隣り合わせであるという事実は、残酷なのに映画をいっそうロマンチックに見せていて、そのコントラストが魅力的でした。

『リトル・ジョー』© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

また、この映画では人間が植物に取り憑かれたような状態になる、つまり感染するきっかけのシーンがとても美しく描かれていて、植物という無機的にすら見えるものがアクションを起こす様子は、動きがほとんどないぶん音楽によって強く補完され、より印象的なものになっていました。それは故・伊藤貞司氏の作品を用いたもので、音色自体が持つ作用を計算して配置されており、とても映像とマッチしていました。まるで花の香りが伝わってくるようで、自分にとって未知の映像体験でした。

ちなみに伊藤貞司氏のことは初めて知ったのですが、もっと知りたくなり、鑑賞後に伊藤氏のCDを購入しました。

『リトル・ジョー』© COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019

文:川辺素(ミツメ)

『リトル・ジョー』は2020年7月17日(金)よりアップリンク渋谷、吉祥寺ほかにて全国ロードショー

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『リトル・ジョー』

バイオ企業の研究室に務めるシングルマザーのアリスは、人を幸せにする、真紅の美しい花の開発に成功する。アリスは、自らの息子の名前にちなんで“リトル・ジョー”と名付けるが、開発されたばかりのその花は、成長するにつれ人々にある変化をもたらす。アリスはその原因が“リトル・ジョー”の花粉の影響かもしれないと疑い始めるが……。

制作年: 2019
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