言うまでもなく、サメ映画には数多くのサメが出演する。海を泳ぐもの、地を這うもの、空を飛ぶもの、熱線を放ったり機械の体を授かったりしたもの……。そもそも“海を泳ぐもの”以外になんかふざけたのが色々いることの方がおかしいが、現に存在している以上仕方ない。というわけで今回は、CS映画専門チャンネル ムービープラスで放送される「特集:サメフェス2020」にて放送されるサメ映画ラインナップの中から、各作品のサメの特徴について紹介していこう。
サメ映画偏差値ランク上位! アオザメが驚きの知能を披露する『ディープ・ブルー』
かの『ディープ・ブルー』(1999年)で猛威を振るったのは、遺伝子操作により高い知性を獲得したアオザメ。サメ映画におけるサメのメインストリームともいえる“ホホジロザメ”ではなく、あえて“アオザメ”を選択したところに、レニー・ハーリン監督のこだわりが伺える。そんな『ディープ・ブルー』のサメは、「あえて主人公一同に舞台の海洋研究所を水没させるよう誘導することで、施設内の水位を上げ、周りを囲んでいる逃走防止用フェンスの脆弱な上部を破壊しようと試みる」という、バケモノじみた計画力を備えているのが特徴だ。
これはもう“高い知性”とかそういうレベルをはるかに超えているような気もするが、とにかくこのアオザメが、サメ映画偏差値ランキングの上位に君臨していることは間違いないだろう。ちなみに「厄介なサミュエル・L・ジャクソンは演説中に襲うと倒せる」という事実を解明したのも本作のサメである。
一方、その正式な続編『ディープ・ブルー2』(2018年)で活躍するサメは、前作と同じく遺伝子操作を受けた“オオメジロザメ”。フェンスの上部を狙った前作のアオザメに対し、『2』のオオメジロザメは「トンネルを掘ってフェンスの下部を潜り抜ける」という奇策により脱走を図る。もっとも、それ以上に知性派と呼べるようなシーンは少ない上、首領格のサメもクライマックスでは呆気なく退場する。どちらかというと、後半から登場する“ピラニアめいた無数のサメの稚魚”の方が印象には残るだろう。
小細工は不要! デカいサメはそれだけで怖いことを証明した『海底47m』
『海底47m』(2017年)に登場するサメは、あくまでごく普通のホホジロザメ。物語上の役割も、終始“深海に取り残された主人公姉妹の行く手を遮る、恐ろしい障害のうちのひとつ”に徹底している。昨今の、やれ「火を吐く」だの、やれ「空を飛ぶ」だの、やれ「重火器を持ち出す」だのといったトンデモ系サメ映画に比べると、実にストイックでビジネスライクなサメだと言えなくもないだろう。
が、だからこそ『海底47m』のサメはストレートに怖い。「油断すると方向感覚さえ失ってしまうほどの絶対的暗闇に包まれた海底で、ちょっとした気配すらなく高速で接近してきたかと思えば、たちまち獲物を食い殺していく」……その直球の恐ろしさは、近年のサメ映画の中でも五指に入るほどではないだろうか。ゴテゴテした小細工に頼らずとも、サメは強くて怖いのだ。
古代巨大ザメ復活! しかし対戦相手がまさかのジェイソン・ステイサムだった!
太古の巨大ザメが蘇る『MEG ザ・モンスター』(2018年)の主役は、当然“メガロドン”だ。体長23メートルのこの怪物は、ただただ単純に大きく、本能のまま暴れ狂うことによってその真価を発揮している。
というと、まるっきり手のつけられない大怪獣のように思えるが……あいにく、そのメガロドンの対戦相手はジェイソン・ステイサムだ。太古の巨大ザメは現代のタフな男の手であえなく駆除される。これもまた、自然の摂理である。
そんな『MEG』に便乗した『MEGALODON ザ・メガロドン』(2018年)のサメについては、以前のレビュー記事を参照していただきたい。もっとも、同作のサメはまず大して活躍せず、ビジュアル面も「ちょっとゴツゴツした突起が生えていて、デカい」程度にしか語るようなことはないが。
無茶なサメならまかせろ! みんな大好き安心の『シャークネード』シリーズ
皆さんご存じシャークネードシリーズの5作目『シャークネード ワールド・タイフーン』(2017年)及び『シャークネード ラスト・チェーンソー』(2018年)には、ちょっとわけのわからないサメたちが山ほど登場する。無数のサメが集合・合体して生まれた巨大ザメ“シャークジラ”やら、中世で火を噴く“ドラゴン・シャーク”やら、遠い未来の世界を我が物顔で闊歩する“ロボ・シャーク”やら、その荒唐無稽さは留まるところを知らない。
そもそも“竜巻に巻き込まれたサメが空から降ってくる”初代『シャークネード』(2013年)の時点でたいがいナンセンスだというのに、この明後日の方向への進化は、もはや悪ふざけの度を越しているのではないか。とは言いつつも、シリーズ最終作を飾る『ラスト・チェーンソー』のクライマックスは妙に感慨深い。それまでのシリーズをすべて追ってきた者ならば涙なしには見られない結末を迎えるのだから、やはりサメ映画とはわからないものだ。
以上が「特集:サメフェス2020」で見られる様々なサメの特徴である。ここから皆さんが得られる知見はひとつ、「サメ映画に出てくるサメがどれだけ個性的な設定を持っていたとしても、べつにサメ映画そのものの出来不出来とはまったく関係ない」ということだ。
とはいえ、ここで挙げたサメ映画はどれも全体から見て上澄みに位置する作品ばかりである。少しでも興味を抱いたなら、躊躇することなくぜひ鑑賞してみるといい。サメ映画はいつだって来る者を拒まず、慌てて去ろうとする者を重点的に追っていくものだから。
文:知的風ハット
「特集:サメフェス2020」はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年7月放送