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筋肉が優雅に躍動するアクション&超絶ステップのダンス!! ハリウッド水準のインド映画『WAR ウォー!!』

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ライター:#松岡環
筋肉が優雅に躍動するアクション&超絶ステップのダンス!! ハリウッド水準のインド映画『WAR ウォー!!』
『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

2019年インド映画興行収入第1位!

本サイトではすでに2回も紹介されているのだが、2019年にインド映画世界興収No.1を記録した『WAR ウォー!!』がいよいよ2020年7月17日(金)から公開となる。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

2020年3月に日本公開されたプラバース主演作『サーホー』を抑えての第1位だったのだが、『WAR ウォー!!』を見れば、僅差で『サーホー』を制したわけも納得できるだろう。『WAR ウォー!!』は他のインド映画どころか、ハリウッド映画と並べても全く遜色のない、すべての点で高水準の出来の作品なのである。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

これまでのインド映画は、『バーフバリ』二部作(2015~2017年)を見てもわかるように、他国の映画が持ち得ないインド映画らしさで、世界をねじ伏せてきた。ところが『WAR ウォー!!』はハリウッド映画だと言われて見ても、誰も疑問を感じないような作品だ。脚本、撮影、編集、アクション、特殊効果、そして世界各地を舞台とするスケールの大きさまで、インド映画の固定概念を大きく超えており、洗練度が高い。そしてこれに、“インド映画らしさ”が適度に加味されているところが、うるさいインド人観客の心をもがっつり掴んだ理由だろう。まずは、作品のストーリーから見ていこう。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

インドの諜報機関エージェントvsイスラム教過激派勢力

カビール(リティク・ローシャン)は、インド政府の諜報機関<RAW>(Research and Analysis Wing)の中で、実戦指導者的立場にいるエージェント。RAWは長らく、イスラム教過激派のテロリストやその後ろ盾となる大物実業家を追っており、今回のカビールの使命は、テロリストのリーダー、ハカニの暗殺だった。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

作戦の指揮担当はデリーにいる上級分析官ナイドゥで、現場からパソコンに送られてくる監視カメラ映像を見ながら、カビールに「今だ、撃て!」と命令する。ところがカビールの弾丸が撃ち抜いたのは、思いもかけない人物だった。「カビールが裏切った!」RAWの上司ルトラ大佐(アーシュトーシュ・ラーナー)は防衛大臣に呼び出され、カビールの始末を命じられる。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

すぐさま非常招集されたRAWのエージェントたちの中には、マルタ島での麻薬組織壊滅作戦を終えたハーリド(タイガー・シュロフ)の姿もあった。ハーリドは、カビールの始末は自分に任せてほしい、と申し出るが、これまでの2人の関係を知るルトラ大佐は難色を示す。カビールによって一人前のエージェントに鍛え上げられたハーリドは、果たしてかつての教官に銃を向けられるのか? それにしても、ハーリドらチームメンバーと共に過激派の黒幕イリヤシを追っていたカビールは、なぜ敵側に寝返ったのか? ハーリドは混乱しながらも、カビールを追い詰めていくが……。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

これでもか! のアクションシーンが次々と来襲!!

本作はアクションシーンが立て続けに出てくるのだが、そのいずれもが目を見張る出来だ。最初に露払い的に登場するのが、マルタ島でハーリドが麻薬組織と闘うシーンで、まさにハーリドを演じるタイガー・シュロフの独壇場だ。しかも、どう見てもワンシーン、ワンカットなのである!

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

地中海風の建物の屋上にしつらえられた、池のある中庭に面した広い部屋。そこにハーリドがやってきて、一味のボスと用心棒たち7、8人を相手に、結構複雑な闘いを繰り広げる。最後にボスを池に沈めて、ハーリドが立ち去るまでの3、4分のシーンなのだが、タイガー・シュロフのアクションが流れるようにつながっていて、カットつなぎが見えない! うーむ、何かトリックがあるのだろうか?

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

その後は、イラクでの過激派相手の戦闘シーンや、イリヤシ逮捕のためのマラケシュ(モロッコ)での銃撃シーン等々、見せ場が次から次へと登場する。最後には、氷上での闘いまでもが登場して、オーラスのカビールとハーリド一騎打ちへとなだれ込む。盛り込みすぎでは、と思うほどだが、さらにそれぞれのアクションが、『ミッション:インポッシブル』(1996年)などアクション映画の名作にオマージュを捧げたとわかるように特徴付けられているのだから、恐れ入るではないか。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

これらが可能になったのも、ハリウッドのポール・ジェニングスや韓国のオ・セヨンといった、優れたアクション監督たちを結集させ、彼らが総力を挙げた結果だろう。さらに、主役のリティク・ローシャンとタイガー・シュロフが、非常に高い身体能力を備えていたことも大きく寄与している。ハリウッドのアクション・スターたちよりも、もっとしなやかに、さらに優雅に、躍動する筋肉を感じさせてくれるこの2人のアクションは、観客を魅了してしまうこと請け合いだ。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

もちろんインド映画的要素も盛りだくさん!

リティク・ローシャンとタイガー・シュロフといえば、ソング&ダンスシーンを忘れてはならない。アクションとダンスの能力は本来別物だが、この2人に関しては、これまで多くの作品で、素晴らしいアクションシーンと超絶のステップとを併せて披露するのがお約束となっている。ことにリティク・ローシャンのダンスは、タイガー・シュロフが幼い時からマイケル・ジャクソンと共に手本にしてきたと言うだけあって、うっとりするほど魅力的だ。今回も2曲で、セクシーなステップを見せてくれている。タイガー・シュロフはそのうちの1曲で共演しているが、2人の競い合いのようになった曲「Jai Jai Shiv Shankar(シヴァ神万歳)」は、何度も見直したくなる楽しさだ。

リティク・ローシャンの踊るもう1曲「Ghungroo(踊りの足鈴)」は、ヒロインであるナイナを演じたヴァーニー・カプールとのパーティーシーンで始まり、イタリアのアマルフィ海岸でロケされている。また、高級クラブのショー・ダンサーであるナイナの舞台シーンも挿入され、とてもゴージャスな仕上がりだ。

ナイナの出演尺は短いのだが、彼女を巡るエピソードには、インド人観客の大好きな「エモーショナル」要素がたっぷり入っており、これもインドでのヒットに大いに貢献したはずだ。ナイナの娘も巻き込んだファミリー・ドラマ風の展開は、これまでこの手の作品を何本もヒットさせてきたシッダールト・アーナンド監督ならではの手腕だし、定番の愛国的要素も忘れずに押さえて、インド人観客にアピールしている。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

その一方で、前作ではトム・クルーズの『ナイト&デイ』(2010年)を、リティク・ローシャン主演で丸々リメイクしてヒットさせたシッダールト・アーナンド監督は、前述のようなハリウッド作品へのオマージュをも堂々と盛り込んでいる。彼のこれまでの監督経歴がすべて生きた、ハリウッド水準インド映画『WAR ウォー!!』の登場である。

『WAR ウォー!!』© Yash Raj Films Pvt. Ltd.

文:松岡環

『WAR ウォー!!』は2020年7月17日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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『WAR ウォー!!』

「カビールが裏切った!」――インド対外諜報を担う調査・分析部RAWに衝撃が走った。
国際的なイスラム教過激派テロリストを追ったRAWのNo.1の腕利きスパイ、カビールがこともあろうに味方の高官を射殺して逃亡したのだ。
RAWはカビールを抹殺することを決定し、優秀な若手スパイのハーリドがその重要なミッションに名乗りを挙げるが、2人の上司ルトラ大佐は心配する。ハーリドにとってカビールは憧れの存在であったばかりでなく、チームの指揮官と部下として数々の作戦に従事した師でもあったからだ。
ハーリドはスパイとして任務を遂行すると堅く決意しながらもなお、「なぜ?」という気持ちを拭いされないままカビールの行方を追う――。

制作年: 2019
監督:
出演: