コリン・ファース主演『喜望峰の風に乗せて』愛と嘘から生まれた哀しい真実の物語

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ライター:BANGER!!! 編集部
コリン・ファース主演『喜望峰の風に乗せて』愛と嘘から生まれた哀しい真実の物語
『喜望峰の風に乗せて』©STUDIOCANAL S.A.S 2017
過酷な世界一周ヨットレースに挑んだ男の夢と葛藤、家族への愛を描いた伝記映画『喜望峰の風に乗せて』が、2019年1月11日(金)から絶賛公開中! 『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュが監督を務め、名優コリン・ファースが思い入れたっぷりに主人公を演じた真実の物語だ。

ひとつ間違えれば死……! まるでサスペンス映画のような緊張感

『喜望峰の風に乗せて』©STUDIOCANAL S.A.S 2017

コリン・ファース主演の伝記映画と聞けば、すったもんだの挙げ句に最後には心がほっこり暖まるヒューマンドラマとか、感動のサクセス・ストーリーなんでしょう? などと想像するかもしれない。最初に言っておくと、本作はもはやサスペンス映画、いや船上サバイバルスリラーである!

……というのは言い過ぎとしても、そんなシンプルなお話ではないことは事実。ベースになった史実は調べればかなり詳しく知ることができるが、一切情報を入れずに劇場でハラハラしたいという人もいるだろう。なので結末には触れずにざっくり説明すると、物語の舞台は1960年代後半。単独無寄港の世界一周ヨットレースに出場した実業家、ドナルド・クローハーストの(身のほどを超えた)挑戦を描いている。

多くの人々の心を掴んできた真実の物語

クローハーストの半生は、これまで幾度となくドラマや映画、舞台、書籍化されてきた。もし事業にどん詰まったアマチュアセーラーマンの最後っ屁だったとしたら、これほど人々の心を掴むことはなかったはずだ。一つ間違えたら命を落とすかもしれないレースに自宅を抵当に入れてまで賭けたのは、愛する妻と子どもたちの(&事業を立て直す)ため。その勇気ある決断と実際の行動のバランスに疑問は残るものの、だからこそリアルな冒険物語として長らく人々を魅了してきたのだろう。

肝心の本作では物語前半、家族の絆やレースに出る理由だけでなく、不完全な設備や無理ゲー感のある挑戦に思わず尻込みする心理などをしっかり描写。観ている側も思わず「ちょ、大丈夫……?」と不安になってくるが、一方でアマチュアであることを逆手に取ってスポンサーから資金をゲットしつつ、広報として記者を雇うといったブランディングの手腕も披露する。

それを事業に活かせばよかったのでは!? と思わずツッコみたくなるが、同時にこの物語が最初からハートフルなヒューマンドラマにはなり得ないことにも気づくはずだ。

コリン・ファースの狂気表現に注目

いざ海に出たクローハーストには、相次ぐ浸水や設備の故障といった困難が襲いかかる。最初のうちは意地でレースを続けていたが、やがて“航海記録の捏造”という完全アウトなアイデアが脳裏に降臨。しかし、地道に船を進めるのと同じくらい嘘を固めるのも困難で、なんとか信憑性を高めようと試行錯誤を繰り返すものの次第に罪悪感に苛まれ、家族への想いは募るばかり……。このあたりから、徐々にクローハーストの精神は崩壊していく。

ここはやはり、ファースの静かなぶっ壊れ演技に注目したい。地味ながらも衝撃的な狂気表現は大きな見どころのひとつであり、そこに彼の帰りを待つ家族の姿を挿入するというジェームズ・マーシュ監督(『博士と彼女のセオリー』ほか)の容赦ない演出にも胸を締めつけられる。そして、自身の嘘に追い詰められたクローハーストが最後に下した決断はあまりにも悲しい。

一人ぼっちの航海シーンは演出もシンプルなだけに、ファースの演技が随所で光る。限定的な空間と孤独な状況下でのちょっと不思議な映像表現も相まって、どこかアンドレイ・タルコフスキーの『惑星ソラリス』(1972年)を思わせる瞬間もあったりする。観る人の“気持ちの入れどころ”によって捉え方が変わる作品なので、哀しい伝記モノと気負わずにぜひ劇場で鑑賞してほしい。

『喜望峰の風に乗せて』は2019年1月11日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー

『喜望峰の風に乗せて』

1968年、イギリス。単独無寄港で世界一周を果たすという“ゴールデン・グローブ・レース”が開催される。華々しい経歴のセーターたちが参加する中、ビジネスマンのドナルド・クローハーストが名乗りを上げた。アマチュアの果敢な挑戦にスポンサーも現れ、ドナルドは家族の愛を胸に出発。だが、彼を待っていたのは、厳しい自然と耐え難い孤独、そして予想もしなかった自身の行動だった……。
英国俳優の中でもずば抜けた人気と実力を誇るコリン・ファースが、「彼の中に自分自身を見た」とまで入れ込んだ実在の人物を描く、ヒューマンドラマ。

制作年: 2017
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