「どっちで観たいですか? フィルム上映とデジタル上映」村上淳が語る映画への情熱

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ライター:BANGER!!! 編集部
「どっちで観たいですか? フィルム上映とデジタル上映」村上淳が語る映画への情熱
村上淳

俳優、DJ、デザイナーとして活躍する村上淳さんが、映画への想いを熱く語る全4回。第2回の今回は、思い入れ強い“フィルム”の魅力や、フィルムで撮影されたおすすめの映画について語ってくれた。

「“映画とは総合芸術である”という一文に強い憧れを持ち続けている」

―村上さんは“フィルム”に対する思い入れはありますか?

昔、阪本順治さんに「映画とは?」と聞いてみたんです。ニヤッと笑って「35ミリ」と答えられた。でもわからなかったんです、そのときは。いまでもうまく言えないですけど、フィルムに対しての思い入れは、僕は非常に強いです。フィルム派のキアヌ・リーヴスが、いろいろな映画監督と俳優にインタビューをするドキュメンタリー映画(『サイド・バイ・サイド フィルムからデジタルシネマへ』[2012年])があって。ハリウッドでいうと、クリストファー・ノーラン、クリント・イーストウッドがフィルム至上主義。俳優でいうとトム・クルーズとか。

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―クエンティン・タランティーノもそうですよね。

そうですね。最近の『ミッション:インポッシブル』シリーズとかも65ミリ。クリストファー・ノーランも65ミリフィルムを使っていますけど、日本でいうと山田洋次さん、北野武さん、井筒監督。僕もフィルム上映はすごく好きなんだけど、同じ値段なのがおかしい。かたや普通の値段でDCP(デジタルシネマパッケージ)で上映されていて、かたや5,000円だけどフィルム上映で観られる。どっちへ行きます? フィルムですよね。名画座に行くのは当たり前にフィルムだからだし。

―監督が存命であれば、リマスター版の監修もできますけれどもね。

リマスターにすごくこだわった時期もあって、アッバス・キアロスタミの『友だちのうちはどこ?』(1987年)のリマスターも、キアロスタミが監修したバージョンと、そうでないのとで全然違いますよ。絶対的に違うのは、撮影監督が色を決めているので、映画監督が生きていても撮影監督が生きていないと。だから、キアロスタミの『ライク・サムワン・イン・ラブ』(2012年)でしたっけ。

―日本で撮影した作品?

そうです。あの作品の(撮影)監督、ジミーさんなんです。柳島(克己)さん。北野組です。あれ、フィルムです。録音の菊地(信之)さんという人が、ユーロスペースを基準に音を考えているんですけど、『ライク・サムワン・イン・ラブ』、あの音がまたやばいんですよ。

―そういう作品は映画館で観ないと、ですね。

10代のころに「映画とは総合芸術である」という一文を見たときに、ものすごい強い憧れを持って。いまでも持ち続けていますけど。

―総合芸術という言い方ができるのは、それこそ溝口健二監督とか、スタジオがしっかりしていたころの作品ですね。

完璧だなと思っちゃいますね。その次に強く影響を受けたのは<ATG>(日本アート・シアター・ギルド:1961年設立)です。名だたる監督たちがあのスタジオから出てきた。あの強烈な10年はちょっと憧れますね。ショーケン(萩原健一)の『股旅』(1973年)、市川崑さんの。いま観ても面白い。嘘か本当かわかりませんけど、<ATG>側が500万出して、監督がもう500万集めたと。『股旅』はリアルな侍同士のやり合い。へっぴり腰なんです、めちゃくちゃ。崑さんだからカッティングも早いし。

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「青山真治監督の『EUREKA ユリイカ』は邦画の真骨頂。ここ20年で一番好きな作品」

―現場でかつての村上さんみたいに映画について知りたいという若手俳優がいると思います。そういうときは何を勧めますか?

いま23~24歳の女優・モデルさんが「フィルムカメラ始めたい」って、少なくないでしょう?

―確かにたくさんいますね。

でも、何を撮りたいか聞かないでしょう? 僕は絶対に聞かない。僕もそうだったから。だいたいライカ屋へ行くと、「何を撮られたいですか?」って。それがわからないから聞いているんです。撮りたいものはとくにないけど、とにかくやってみたいわけです。

だから僕も、まず映画もカメラも「どんなのが好き?」って聞いて、「じゃ、これがいいかもね」と。もし『ランブルフィッシュ』(1983年)が好きだったら、内容うんぬんよりも、パートカラー(一部モノクロ)の作品を選ぶわけです。黒澤明さんの『天国と地獄』(1963年)も、フィルムに色を塗っているじゃないですか。煙が赤くなる。ATGで、田中登さんの『(秘)色情めす市場』(1974年)という映画が大好きなんですけど、これもパートカラーなんです。最近でいうと、村上虹郎くんの『銃』(2018年)も。

―『EUREKA ユリイカ』(2000年)もそうですね。

そう、『ユリイカ』はここ20年で一番好きな作品。あれは邦画の真骨頂だと思います。田村正毅(撮影監督)と青山真治(監督・脚本・編集・音楽)と、あと宮﨑兄妹(将、あおい)、役所(広司)さん。もうあんなことって起きないかもしれない。我々は起こさなきゃいけないんですけど。

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―ジム・オルークの挿入歌とか。映画ってそういう奇跡みたいな組み合わせが起きるから面白いですよね。フィルム撮影で3時間半、いま考えたら贅沢ですよね。

贅沢ですよ。贅沢ってことでいうと、新文芸坐では『七人の侍』(1954年)を年に1回くらいやるんです。あそこはフィルムなので、ぜひ観てほしい。インターミッションが入るんですが、その15分の休憩がフィルムで知らされるんです。いざこれから戦が始まるというときに、「休憩」って出て、「おお!」という。ああいう体験は家ではできないですね。映画は撮影監督で追うほうが、ここ5~6年は多くなっていますね。

―それは、先程おっしゃっていた“映画の言語”みたいなところが大きい?

“ルック”といわれているものが好きなんだと思うんです。ルックって写真業界にもあるでしょう。20歳で映画界に入っても、演技の勉強をしていないわけです。青山ブックセンターとかWAVEとかで映画俳優たちのインタビューを読むんですけど、あまり入ってこなかった。すごく衝撃だったのは、「マスターズオブライト ―アメリカン・シネマの撮影監督たち」(1988年:フィルムアート社刊)という撮影監督の本。ハリウッドの撮影監督が専門的なインタビューに答えているんです。細かい数字とかはわからなかったけれど、なんか夢中になったんですよね。

インタビュー:稲田 浩(ライスプレス代表)

写真:嶌村 吉祥丸

撮影協力:しぶや花魁

<第3回に続く>

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