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「ド派手アクション×シンセサウンド」の進化系『ザ・アウトロー』 ジェラバトが伝説の強盗犯に挑む!

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ライター:#森本康治
「ド派手アクション×シンセサウンド」の進化系『ザ・アウトロー』 ジェラバトが伝説の強盗犯に挑む!
『ザ・アウトロー(Den of Thieves)』オリジナル・サウンドトラック
(ソニー・ミュージック/配信のみ)

名作『ヒート』の流れを汲む映画たち

1995年に製作されたマイケル・マン監督作『ヒート』は、90年代クライム・アクションの傑作として映画ファンを魅了した。業界内でも同作をリスペクトする監督たちは多く、例えばクリストファー・ノーランは『ダークナイト』(2008年)で『ヒート』を参考にしたと公言しているし、『ザ・タウン』(2010年)で監督・脚本・主演を兼任したベン・アフレックは、自身が選ぶ「犯罪映画ベスト11」で『ヒート』を第3位に挙げている。

テレビシリーズ『ロンドン特捜隊スウィーニー』(1975~1978年)を映画化した『ロンドン・ヒート』(2012年)も、その邦題が示しているように、トラファルガー広場での銃撃戦に同作の影響が感じられた。これらの系譜に繋がる作品として世に送り出されたのが、『ザ・アウトロー』(2018年)である。

『ザ・アウトロー』
発売元:プレシディオ 販売元:ポニーキャニオン
価格:Blu-ray¥4,700(本体)+税、DVD¥3,800(本体)+税
© Motion Picture Artwork © 2017 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ブートキャンプで特訓したコワモテ俳優が勢揃い!

本作で描かれるのは、ロサンゼルス郡保安局(LASD)重犯罪特捜班と、特殊部隊出身の強盗団との熾烈な戦い。ジェラルド・バトラー扮する“ビッグ・ニック”は「刑事」ではなく「保安官(シェリフ)」であり、「シェリフvs強盗団」という西部劇のような男臭い世界で、激しい攻防戦が繰り広げられる。本作の共同製作にも名を連ねるバトラーは、体重を25ポンド増量してゲスなシェリフ役を快演。パブロ・シュレイバーやオシェア・ジャクソン・Jr.、カーティス・“50セント”・ジャクソン、エヴァン・ジョーンズ、ブライアン・ヴァン・ホルトら脇を固める共演者も、一度見たら忘れぬ顔のコワモテ揃いである。

監督・脚本・製作総指揮を務めたクリスチャン・グーデガストは、撮影に先立って特捜班と強盗団のキャストを2週間のブートキャンプに送り出したという。銃の構え方から撃ち方、弾倉交換の動作まで徹底的にリアルさを追求した迫力の銃撃戦は、ハードな訓練と俳優たちの熱意の賜物と言えるだろう。

『ドライヴ』の作曲家! クリフ・マルティネスのクールなエレクトロニック・スコア

『ヒート』はリアリティを追求したアクション描写はもちろん、音楽演出の面でもその後のクライム・アクション映画に大きな影響を与えた。特に革新的だったのが、銀行強盗シーンで流れたブライアン・イーノの「Force Marker」だったように思う。無機質なビートが淡々と刻まれるメロディレスなサウンドは、無駄のない動きで強盗を実行する「プロの犯罪者」の仕事ぶりを観客に強く印象づけた。

そして先述の『ヒート』フォロワーたちの作品を振り返ってみると、『ザ・タウン』のフェンウェイ・パーク球場での“仕事”のシーンも、『ロンドン・ヒート』のトラファルガー広場のシーンも、「Force Marker」と同様、メロディよりも打ち込みのリズムに重点を置いた音楽が使われていた。『ダークナイト』のオープニングを飾った銀行強盗シーンの音楽も、不協和音と同一音型の反復を用いた広義のミニマル・ミュージックと呼べるものだった。このようなアクション映画におけるアンビエント/ミニマル・ミュージックの手法をさらに推し進めたのが、本作におけるクリフ・マルティネスの音楽ということになる。

『ザ・アウトロー』© Motion Picture Artwork © 2017 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

作曲家クリフ・マルティネスの略歴については、以前のBANGER!!!コラムでご紹介しているので、そちらをご覧頂きたい。(※『ネオン・デーモン』 『ザ・フォーリナー/復讐者』

マルティネスは本作でも、『NARC ナーク』(2002年)や『ドライヴ』(2011年)の流れを汲む珠玉のエレクトロニック・スコアで、男たちの硬派なドラマをクールに彩っている。

監督の意向で、映画の見せ場である大掛かりな銃撃戦のシーンこそ音楽が使われていないものの、緊張感に満ちた数々のシーンでマルティネスの緻密なスコアが効果を発揮している。銃撃戦に突入する直前、特捜班と強盗団の徐々に高まっていくテンションを巧みに表現した楽曲「Traffic Up Ahead」や、両チームに死傷者が発生し、ニックとメリーメン(パブロ・シュレイバー)の一騎打ちへとなだれ込む際の冷徹かつスリリングな楽曲「Low Calorie Shootout」が出色である。また連邦準備銀行への潜入シーンで流れる無機質でミニマルな楽曲は、『ヒート』の「Force Marker」をさらに発展させた音楽演出のようにも感じられる。

荒くれ者たちがぶつかり合うアクション映画に、抑制の効いたアンビエント・ミュージック。一見ミスマッチな素材を見事に融合させた、「ネオ・ノワール/ネオン・ノワール音楽の鬼才」クリフ・マルティネスの手腕が冴え渡る作品である。

文:森本康治

『ザ・アウトロー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年4月放送

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『ザ・アウトロー』

48分に1回、銀行強盗が発生する世界屈指の犯罪都市ロサンゼルス。郡保安局の重犯罪班を率いる刑事ニックは、伝説の強盗・メリーメン一味が、3000万ドルの銀行強盗を企てている情報を掴む。綿密な計画を立てる一味と、彼らを追い詰めてゆくニック。両者の対決の時が刻一刻と近づいてくる。

制作年: 2018
監督:
出演: