恐怖の裏バイト!『モースト・ビューティフル・アイランド』 気鋭の女優監督が実体験をもとに描く!

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ライター:BANGER!!! 編集部
恐怖の裏バイト!『モースト・ビューティフル・アイランド』 気鋭の女優監督が実体験をもとに描く!
『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』©2017 Palomo Films LLC All Rights Reserved.
新薬治験、打ち子、特殊清掃……どれも健康リスクがあったり精神的/体力的にキツかったり法的にグレーだったりする、いわゆる“裏バイト”と呼ばれるヤバいお仕事だ。2019年1月12日(土)から公開の『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』は自身も移民である監督の実体験から着想を得た、都市伝説まがいの裏バイトに巻き込まれる女性を描くスリラー映画である。

スペイン出身監督が圧倒的リアルで綴る「移民はつらいよ」

『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』©2017 Palomo Films LLC All Rights Reserved.

2017年の<SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)映画祭>で最高位となる審査員大賞を受賞した『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』の主人公は、ニューヨーク・マンハッタンでその日暮らしをしている不法移民のルシアナ。演じるのはスペイン出身の監督、アナ・アセンシオ自身だ。

女優としてもキャリアを持つ彼女もかつて不法滞在者だったそうで、いつかホームレスになってしまうのではという不安に苛まれる主人公を演じる説得力は十分。16mmフィルム(スーパー16、アスペクト比は1.66:1)で撮影されており、懐かしさを感じさせるザラついた質感は時代や場所を曖昧にさせる効果もある。

『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』©2017 Palomo Films LLC All Rights Reserved.

様々な人種が行き交う街の雑踏の中、ルシアナが病院へ行き薬を無心するシーンから物語は始まる。もちろん保険になんか入っていないので、高額な診察料を払えるはずもない。母との電話の内容や、箱にしまい込んだ乳児用らしき服やおもちゃを手に取る様子から分かるように、ルシアナは暗い過去を抱えた人物だ。卵子ドナーの報酬について話すシーンもあり、“女性性”や“母親”も重要なテーマになっていることがうかがえる。

壁の穴から這い出した大量の〇〇〇〇が、落ちたバスタブの中でもがく。故郷から遠く離れ明日をも知れぬ生活を送る移民たちのメタファー……なのかもしれないが、虫嫌いの人にはウギャー! な映像なので要注意。とはいえルシアナは不自然なくらい淡々としていて、現実なのか悪夢なのか曖昧なほど。それでも撮影にはかなり苦労したらしく、そのかいあってダリオ・アルジェント作品のようなオカルティックな雰囲気を醸し出している。

これは怖い! 怪しすぎる高収入バイトの正体とは

『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』©2017 Palomo Films LLC All Rights Reserved.

バイト仲間のロシア系移民オルガとカフェでダベっているとき、ふとルシアナが「可能性ってものに疲れた」とつぶやく。税金を滞納していたりローンの支払いに追われていたりするのに、自分でもよく分からない“ぼんやりした何か”にしがみついて都会で生きている人ならば無条件で共感してしまうだろう。しかし、こういう「貧乏つらい!」みたいな展開が続くのかなあ……と思って暗澹としていると、予想外の超展開に腰を抜かすことになる。

オルガから“楽して稼げる高収入バイト”を紹介されたルシアナ。セクシーな衣装でパーティーに行くだけってどんな仕事だよ……と訝しがりながらも指定の場所へ向かうと、なぜか中華料理屋の怪しいオッサンがバイト現場へと斡旋する謎システムだった。なんだかB級クライム映画みたいな展開だが、主人公はセガールでもステイサムでもなく立場の弱い不法移民の女性なので、格段にハラハラしてしまう。矢継ぎ早に指示してくるせっかちなアジア系中年男性というのはベタなキャラだが、それをこんなに怖く感じる映画はなかなかない!

いざ会場入りしてみると他のバイトメンバーはすでにスタンバっていたが、これまた怪しい金持ちらしき人々が舐めるように女性たちを物色し、無言で裏に消えていく。まさか人身売買オークションみたいなことなのか? などと思いながら息を呑んで見守っていると、指名されたバイトメンバーが入っていった部屋から断末魔のような叫び声が! 不安のあまり立ち去ろうとするもコワモテのセキュリティに阻止され、ついにルシアナも指名されてしまう……。

『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』©2017 Palomo Films LLC All Rights Reserved.

この部屋の中で行われていることが明かされたとき、顔色ひとつ変えず鼻ホジしていられる観客は果たしているだろうか? 作品のキモなので絶対にネタバラシはできないが、思わず「てめえらの血は何色だーっ!」と叫びたくなる衝撃の展開である。全80分のタイトさもあって鑑賞後は脱力必至、めちゃくちゃ怖い絶叫マシンに乗ったような激しい揺り戻しに襲われるかもしれない。しかもこれ、かつてアセンシオ監督が怪しいバイト先で実際に感じた恐怖に基づいているというのだから、ますますリアルで超怖い!

偶然にも某アイドル組織の闇などが取り沙汰されている真っ最中なだけに、華やかな活動の裏でエグい実態もあるであろうアイドルたちのことを思うと、我々としても背筋が寒くなる話である。ある意味、いま観ておくべき理由ができたとも言えるわけだが……。

『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』は2019年1月12日(土)より新宿シネマカリテにて公開(全国順次)

 

『MOST BEAUTIFUL ISLAND モースト・ビューティフル・アイランド』

ニューヨーク、マンハッタンのボロアパート。移民のルシアナ(アナ・アセンシオ)は、反抗的で生意気な子供のベビーシッティングや露出の激しい衣装をまとった客引きなどで暮らしている。極貧の生活に疲れ切っていた彼女は、友人のロシア人女性から、高額なお金がもらえるおいしいバイトを紹介される。それは、セクシーなドレスを身に着けパーティーに参加するだけというもの。指定された地下室へと向かうと、彼女のような外国人の美女ばかりが何人も集められ、威圧感のあるマダムが、一人、また一人と得体のしれぬ奥の部屋に彼女たちを呼び込んでいく。不安と恐怖に襲われるルシアナだったが、不法移民の彼女を助けるものはいない。そんな中、とうとう彼女に声がかかる・・・。

制作年: 2017
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