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『ヴィクトリア女王 最期の秘密』女王が最期に愛した男性はインド人だった?!

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ライター:#齋藤敦子
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』女王が最期に愛した男性はインド人だった?!
『ヴィクトリア女王 最期の秘密』©2017 FOCUS FEATURES LLC.
イギリスが大英帝国と呼ばれた時代に、63年も在位し、ヴィクトリア朝と呼ばれる繁栄の時代を築いたヴィクトリア女王。偉大な女王の晩年に実際にあったインド人青年との交流を、名匠スティーヴン・フリアーズ、イギリス最高の名女優ジュディ・デンチで描く。

あっと驚く歴史秘話の発見

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』©2017 FOCUS FEATURES LLC.

1887年、インドのアグラで刑務所の事務官をしていたアブドゥル(アリ・ファザル)は、背が高いことを買われて、ヴィクトリア女王の即位50周年式典で記念金貨を献上する役に抜擢され、モハメドと共にイギリスに渡ることになる。一方、18歳で即位したヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)はすでに68歳。四男五女をもうけた最愛の夫アルバート公を亡くし、寵愛した従僕ジョン・ブラウンも亡くし、寂しい暮らしが続いていた。そこに現れたのが、背の高く、ハンサムなインド人青年アブドゥル。たちまち興味を引かれ、使用人に取り立てると共に、彼からインドの言葉(ウルドゥー語)や習慣を習い、ムンシ(先生)という敬称で呼ぶほどになる。面白くないのは母親に愛されない皇太子バーティ(エディ・イザード)やお付きの人々。人種の違い、宗教の違いは彼らには大問題だ。皇太子の命令で出自が徹底的に調べられ、アブドゥルが本当は下層民であったことがバレてしまう。そのとき、ヴィクトリア女王は…。

ヴィクトリア女王とアブドゥル秘話は、21世紀に入って、カレーの歴史を調査していたインドの女性ジャーナリスト、シュラバニ・バスによって偶然発見された。女王の死後、エドワード七世として即位した皇太子が、アブドゥルと母親が交わした書簡をすべて破棄させていたのだが、女王がウルドゥー語で書いたノートは処分を逃れて王立文書館に保存されていた。バスは、このノートの内容とアブドゥルの甥の子孫が保存していた日記を照合して事実を確認。こうして2010年、<ヴィクトリアとアブドゥル:女王腹心の友 その真実の物語>を出版。それにいち早く目をつけたのが、『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』の監督で、プロデューサーでもあるビーバン・キドロンだった。こうして名匠スティーヴン・フリアーズの監督、大女優ジュディ・デンチのヴィクトリア女王という最高の布陣で映画化が実現した。

最高のキャストで、豪華絢爛なヴィクトリア朝を再現

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』©2017 FOCUS FEATURES LLC.

見どころは、大英勲章デイムの称号を持つ大女優ジュディ・デンチと、英国演劇界きっての名優たちとの競演にある。デンチは97年、63歳のときにジョン・マッデン監督の『Queen Victoria 至上の恋』でもヴィクトリア女王を演じており、今度が2度目。本作の撮影時は晩年の女王とほぼ同年で、背が低かったという外見も似ている。誰もが認める演技力で、短気で怒りっぽいが、いったん人を信じると徹底的に信じてしまう、愛すべき孤独な女王を、知性と威厳とユーモアに包んで演じている。デンチが登場すると、彼女から目が離せなくなる。

脇を固めるのは、皇太子バーティにはスタンダップ・コメディアン出身のエディ・イザード、女王秘書に惜しくも本作が遺作となった舞台の名優ティム・ピゴット=スミス、『ハリー・ポッター』シリーズのダンブルドア校長で知られるマイケル・ガンボンら。これほど重厚な“顔”が揃うのはイギリス演劇界ならではだ。

アブドゥル役に抜擢されたアリ・ファザルは、日本でも大ヒットしたボリウッド映画『きっと、うまくいく』の主人公アーミル・カーンの先輩役で注目された人。ジェームズ・ワン監督の『ワイルド・スピード SKY MISSION』などのハリウッド映画にも出演。母国インドでは、すでに映画やテレビで活躍中の大スターである。

この映画が面白いのは、インド人青年を迎えた宮廷の人々の嫌悪感と、女王の寵愛をめぐるドタバタ劇が、今に続く人種差別と権力争いを思わせることだ。人を肌の色や身分で差別せず、人を人として受け入れ、丸ごと愛してしまうヴィクトリア女王の懐の深さがとても貴重に思える。純真なゆえに進歩的な彼女が、200年前に生まれた人とは思えないくらい身近に感じられる、一種、現代的な映画でもある。

『ヴィクトリア女王 最期の秘密』は2019年1月25日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー。

文:齋藤敦子

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『ヴィクトリア女王 最期の秘密』

1887年、インドが英領となって29年目。アグラに住む若者アブドゥルは、ヴィクトリア女王の即位50周年記念式典で記念金貨を献上する役目に任命され、モハメドと共に英国へ渡る。
18歳で即位してから、長年女王の座に君臨してきたヴィクトリア。細かく決められる1日のスケジュールなど、心休まらない日々を送っていた。そんな中、金貨を献上しに現れたアヴドゥルに心を奪われる。物怖じせず、本音で語りかけてくる真っ直ぐな彼を気に入ったヴィクトリアは、祝典期間中、従僕にすることに。インド皇帝でもありながら現地に行ったことがない女王は、アブドゥルから教えてもらう言葉や文化に魅了されていく。次第に身分も年齢も超えて強い絆が芽生えていくが、周囲はふたりの関係に猛反対。やがて事態は英国王室を揺るがす大騒動へと発展していく。

制作年: 2017
監督:
出演: