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“オーガニックな音楽”で綴る、究極の農場ドキュメンタリー!『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

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ライター:#森本康治
“オーガニックな音楽”で綴る、究極の農場ドキュメンタリー!『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』
『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』© 2018 FarmLore Films,LLC

環境問題への意識の高まりや食育の推進もあって、近年、農業系ドキュメンタリー映画がコンスタントに公開されている。本作『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』は、ある夫婦が「究極のオーガニック農場」を作り上げていく姿を通して、生命の循環から成り立つ地球の免疫システムの素晴らしさを描いた意欲作である。

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』© 2018 FarmLore Films,LLC

都会暮らしの夫婦が「バイオダイナミック農法」で究極の農場作りに挑む

本作で農場作りに挑戦するのは、野生生物番組の監督/カメラマンとして活躍するジョン・チェスターと、彼の妻で料理家のモリー。ジョンが殺処分寸前で保護した犬の鳴き声が原因で、アパートの大家から退去通告を受けたことをきっかけに、郊外に引っ越して農場を始めようと思い立つところからプロジェクトはスタートする。

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』© 2018 FarmLore Films,LLC

チェスター夫妻が目指すのは、農薬や化学肥料を一切使わず、生態系のサイクルを利用して作物を育てる「バイオダイナミック農法」。郊外の荒れ果てた農地を購入し、灌漑システムを整え、肥沃な土地にするために家畜を飼い、作物を植え、動物の世話に奔走し……と、チェスター夫妻が8年間にわたって農場運営に奮闘する様子が、本作の製作・監督・脚本・撮影を兼任したジョン自身のナレーションと共に綴られていく。

その道程は険しく、彼らの農場「アプリコット・レーン・ファーム」は、害虫や害獣の発生、さらに干ばつや山火事などにも見舞われる。このように環境問題やバイオダイナミック農法の難しさを描いたシビアな作品なのかと思いきや、本作は筆者の想像以上に“観ていて楽しい”ドキュメンタリーだった。

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』© 2018 FarmLore Films,LLC

農場に集う人々と動物たちが織りなす奇跡のドラマ

まず我々の関心を引くのが、農場で暮らす様々な動物たち。どこか達観したような表情を見せる、チェスター夫妻の愛犬トッド。豚のエマとたくさんの子豚たち、マイペースな行動が印象的な鶏のグリーシー、番犬のロージーなど、個性的な動物たちが見せる数々のドラマは、人間の言葉こそ発しないものの、『ベイブ』(1995年)や『シャーロットのおくりもの』(2006年)のような味わいがある。チェスター夫妻に循環型農業のハウツーを伝授する専門家のアラン・ヨークも、さながら「バイオダイナミック農法のジェダイ・マスター」といった存在感を見せる。

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』© 2018 FarmLore Films,LLC

そして雑草やアブラムシ、ホリネズミ、コヨーテなど、農作物や家畜の害となる存在すらも、人為的に駆除するのではなく、環境を整え、食物連鎖を利用して農場の循環システムの中に取り入れ、益をもたらす存在へと変えていくプロセスが面白い。試行錯誤の末、チェスター夫妻の狙いどおりに、あるいは彼らの予期せぬ形で「生命のサイクル」が機能した時、「なるほど、そうなるのか!」と、まるでパズルを解いた時のような爽快感を覚えるのではないだろうか。

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』© 2018 FarmLore Films,LLC

『ハウス・オブ・カード』の作曲家が贈るオーガニックな音楽

本作の音楽を担当したのは、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(2013~2018年)で知られるベテラン作曲家のジェフ・ビール。

『ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン1』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジェフ・ビール
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-2876

ドラマのオープニングタイトル曲に代表される、重厚かつクールな楽曲からは、農業系ドキュメンタリーのイメージが全く湧かないが、そこは5度のエミー賞に輝くビール。『名探偵モンク』(2002~2009年)や『アグリー・ベティ』(2006~2010年)、『ポロック 2人だけのアトリエ』(2000年)、『不都合な真実2:放置された地球』(2017年)など、あらゆるジャンルに対応できる器用さと柔軟さを持った作曲家であり、本作では「自然との共生」という作品のテーマを反映した“オーガニックな音楽”を書き下ろしている。

本作のスコアは、オーケストラにバンジョーやドブロギター、アコーディオン、ハーモニカなど生楽器の演奏をプラスした、アコースティックで温かみのあるサウンドになっている。とりわけギターやバンジョーの音色はスコアにアーシーな感覚をもたらし、農場の動植物の生態を余すところなくカメラに収めた美しい映像と、見事な調和を見せている。そしてビールのスコアをじっくり聴いてみると、特定の動物やシチュエーションに、それらを象徴するソロ楽器とメロディ(モティーフ)を用いていることが分かる。耳馴染みのよいサウンドの中に、「土壌の再生」と「生命のサイクル」というメッセージが込められた、リリカルかつ奥の深い音楽と言えるだろう。

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』オリジナル・サウンドトラック
音楽:ジェフ・ビール
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3357

文:森本康治

『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』は2020年3月14日(土)よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー

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『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』

殺処分寸前で保護した愛犬のトッド。その鳴き声が原因で大都会ロサンゼルスのアパートを追い出されたジョンとモリー。料理家の妻は、本当に体にいい食べ物を育てるため、夫婦で郊外へと移り住むことを決心する。しかし、そこに広がっていたのは200エーカー(東京ドーム約17個分)もの荒れ果てた農地だった――。時に、大自然の厳しさに翻弄されながらも、そのメッセージに耳を傾け、命のサイクルを学び、愛しい動物や植物たちと未来への希望に満ちた究極に美しい農場を創りあげていく―。自然を愛する夫婦が夢を追う8年間の奮闘を描いた感動の軌跡。

制作年: 2018
監督: