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まるで女性版『ジョーカー』!?「30年前の失踪少女は、私かも」挙動が不穏な虚言癖女子『ナンシー』

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ライター:#市川夕太郎
まるで女性版『ジョーカー』!?「30年前の失踪少女は、私かも」挙動が不穏な虚言癖女子『ナンシー』
『ナンシー』© 2017 Nancy the Film, LLC

まるで『ジョーカー』のアーサーみたいに不気味な女性が主人公!

「この前、旅行で北朝鮮に行ったの」「妊娠してるの」――そんな嘘を簡単につき、仕事をしているとき以外はスマホやパソコンと睨めっこ。性格は極めて内向的。髪型はいつもボッサボサで、見た目にはほぼ気を使わない。パーキンソン病を患っている母親の介護にうんざりしながら、「作家になりたい」という夢を抱え、嘘で塗り固めたブログを書く……。

ほとんど『ジョーカー』(2019年)のアーサーみたいな、独身30オーバー女性であるナンシーが、映画『ナンシー』の主人公だ。映画は2018年製作なので『ジョーカー』との一致はきっと偶然だろう。

『ナンシー』© 2017 Nancy the Film, LLC

ナンシーはあきらかに虚言癖で、まったく悪気は感じていない。というより、すべての行動に無自覚なのかもしれない。そして、ものすごく孤独だけど、死を匂わせるわけでもない。しかし、なにかひとつのキッカケで爆発しそうなニトログリセリン的不安定さもある。なんらかの精神疾患を抱えているのかもしれないが、映画の中ではハッキリと言及されない。

そんなナンシーを演じるのはアンドレア・ライズボロー。ニコラス・ケイジがハッスルした『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2017年)でのマンディ役が記憶に新しい。あの、観る者をとにかく不安にさせる空洞のような目を本作でも遺憾なくスパークさせている。

30年前に失踪した少女は……私かも!? 挙動がいちいち不穏な主人公

ある日、ナンシーは30年前に起きた少女の失踪事件を報道しているテレビ番組に目が釘付けになる。なんと、当時5歳だった少女の30年後を予想した合成顔写真が自分と瓜二つだったのだ。顔写真をプリントアウトし、自分の顔と並べて鏡の前に立つナンシー。写真に合わせて慣れない笑顔をしてみせる場面では、ホラー映画かのような薄気味悪さが漂う。

さっそく少女の両親に電話をして会うことになるが、精神科医である父親はハナから懐疑的で質問攻め。いっぽう母親のほうはナンシーが自分の子供なのではないか? という希望に胸を膨らませている。そんなふたりにゆっくりと子供のころの記憶を語るナンシーだったが……。

『ナンシー』© 2017 Nancy the Film, LLC

S・ブシェミやJ・レグイザモら豪華共演陣が不吉な予感を増幅!

まず本作にはナンシーが虚言癖という時点で、常に「彼女の言っていることは本当なのか?」というミステリーが下地にある。そして「ナンシーは嘘をついているだろう」という前提のもとから生まれる「バレたらどうするの?」という緊張感。そこを逆手にとったストーリーテリングは、淡々としていながらも一瞬たりとも飽きさせない。

加えて、不気味でありながら消え入るような儚さもあるアンドレア・ライズボローの佇まいと、それに負けないぐらい不穏さを醸すスティーヴ・ブシェミやジョン・レグイザモという絶妙なキャスティング。そりゃ「何が起こるかわからない」という不吉な予感が持続するわけで。

『ナンシー』© 2017 Nancy the Film, LLC

そんな本作の脚本と監督を務めたのは、今回が長編映画デビューとなる韓国系アメリカ人クリスティーナ・チョー。15歳の黒人少年が馬に乗ってブルックリンを練り歩く18分の短編『I Am John Wayne(原題)』(2011年)が全国の映画祭で絶賛され、北朝鮮に潜入して隠し撮りしたTVドキュメンタリーシリーズ『Welcome to the DPRK(原題)』(2017年)も話題となった。

本作を観ればわかると思うけど、もうすでに監督としての力量は凄まじいものがあるので、全国の億万長者さんたちは青田刈りのつもりで金を出すように。

文:市川力夫

『ナンシー』は「未体験ゾーンの映画たち2020」にて2020年3月6日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、4月12日(木)よりシネ・リーブル梅田で公開、青山シアターにて3月13日(金)よりオンライン上映開始

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『ナンシー』

人付き合いが苦手なナンシーは、他人の関心を集めようと嘘ばかりついていた。ある日、彼女は5歳で行方不明になった娘を探す夫婦をTVで見かける。その娘の30年後の似顔絵が自分と瓜二つなことに気づき…。

制作年: 2018
監督:
出演: