父の遺体と7日間過ごした実体験……をもとに描く イライジャ・ウッド主演のコメディ・スリラー『プライス -戦慄の報酬-』

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ライター:BANGER!!! 編集部
父の遺体と7日間過ごした実体験……をもとに描く イライジャ・ウッド主演のコメディ・スリラー『プライス -戦慄の報酬-』
『プライス -戦慄の代償-』©Firefly Films

邦題で敬遠しちゃうのはもったいない! イライジャ・ウッドの狂気が炸裂

ご存知イライジャ・ウッドの主演最新作『プライス -戦慄の報酬-』は、B級臭ただよう邦題で敬遠せずに、ぜひ劇場で観ていただきたい快作だ。

そもそも原題は『Come to Daddy』なのだが、映画のテーマ的にもマッチしているし、なにしろあの名曲と同じタイトルなのだから、むしろ原題を前面に押し出したほうが良かったのでは……。

ともあれ、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001年~)の主人公フロド役のイメージが強すぎて存在自体がネタ化しているイライジャのイメージすら逆手に取った、実に見事な(&狂気満載の)コメディ・スリラー映画に仕上がっている『プライス 戦慄の報酬』。本作が監督デビュー作となるアント・ティンプソン監督が、自身の父親の遺体と7日間一緒に過ごしたという恐ろしい実体験がベースになっているらしい。ティンプソン監督はB級(を最初から狙った)ディストピア青春アクション『ターボキッド』(2015年)などの製作を務めてきた人だが、そんなレアな経験をしているなんて、一体どんな人なのか気になって仕方がない。(こんな人です↓ ワンちゃん!!)

登場人物みんなマヌケ!? 嫌~な空気が吹っ飛ぶ衝撃に次ぐ衝撃の展開

長らく疎遠だった父のもとを訪れたノーヴァル(イライジャ)は、なんだか不気味で暴力的な父の、嫌がらせのような態度に精神をすり減らしていく。こんな仕打ちをするなら、なぜ「会いたい」と手紙を送ってまで息子を呼びつけたのか? モヤモヤした思いを抱えたまま数日を過ごしたものの、ついに堪忍袋の緒が切れたノーヴァル。しかし予期せぬ非常事態が発生し、彼は文字通り異常なゴタゴタに巻き込まれていくのだった。

まず、絵に描いたようなヒップスターぶりのイライジャ・ウッドにご注目。自称“アーティストで音楽業界で活躍している大物”だというノーヴァルの“あるある”な胡散くささを、髪型や服装、小物類で絶妙に表現している。そして、久しぶりに再会した父を演じるスティーヴン・マクハティが、<こんな親父は嫌だ大賞2020>を授与したくなるほどのウザ親父っぷり。マクハティは多くのドラマ/映画で活躍してきた名バイプレイヤーだが、『ウォッチメン』(2009年)で演じたホリス・メイソン(初代ナイトオウル)の哀愁漂う名演が印象に残っている人も多いだろう。

さて、そんなクソ親父は自分で息子を呼んでおいて「本当に来たのか、驚いたな……」みたいなリアクションからして不可解。案の定、そんな狂い気味な親父のせいで早々に外部と連絡が取れなくなってしまうのだが、そのまま嫌~な雰囲気がじわじわと描かれ、中盤までどんなジャンルなのか分からないまま進行する。これがまた、緊迫した状況で恐怖を煽るサスペンスのようでもあるし、非日常すぎて笑ってしまうシュールなコメディみたいにも見える。

『プライス -戦慄の代償-』©Firefly Films

しかし中盤過ぎ、ある衝撃の事実が判明してから、スリラー度が急激に上昇! 無理ゲーに近いハードな展開にノーヴァルは大パニックに陥るが……どうにも緊張感に欠ける。なぜなら本作に出てくる人物は善悪を問わず、基本的にみんなアホなのである。

機能不全に陥った父子関係を描くエモさも!? いちいち可笑しい不思議な映画

観ている側としては「うわ、怖いかも!」「あ、やっぱりコメディか」というリアクションを繰り返しながら鑑賞することになるわけだが、例えるならば花やしきのジェットコースターのような、基本チープだがポテンシャルを最大限に引き出したコスパの良いスリルを味わうことができる。かなり悪趣味な(というか不潔な)ジョークをちょいちょい突っ込んできたり、効果音があからさまに差し替えてあったり(車のエンジン音を猛獣の唸り声に変えていたりする)と、狙いなのか偶然なのかは分からないが、細かい演出がいちいち面白く、それが観客の集中力をキープするように作用してもいる。

『プライス -戦慄の代償-』©Firefly Films

ストーリー展開はしっかりしていてダレないし、実は機能不全に陥っていた父子の再生の物語的な側面もあったりして、映画としての最後の締りがとても良い本作。イライジャが製作を手掛けたニコラス・ケイジ主演の怪作『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2017年)にも通じるエモい魅力もあるので、そのテの映画が好きな人はマストだろう。なぜか劇中曲が全てタイの音楽だったりするところは意味不明だが、そういうところも全てひっくるめて、なんとも可笑しく楽しい映画である。

『プライス -戦慄の報酬-』は「未体験ゾーンの映画たち2020」にて2020年2月21日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、4月9日(木)よりシネ・リーブル梅田で公開

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『プライス -戦慄の報酬-』

都会でミュージシャンとして活躍していたノーヴァルの元に、疎遠になっていた父親から突然手紙が届き、父が暮らす島を訪れることに。感動の再会を期待していたノーヴァルの想像とは裏腹に、父親の言動も行動も横暴で、父の態度のナーバスになったノーヴァルは眠れぬ夜を過ごす。父親への不信感と、横暴なふるまいに疲弊したノーヴァルは父の元から去ろうとするが、予期せぬ出来事によって島から出られなくなってしまい……。

制作年: 2019
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