T・ワイティティ、監督・脚本・ヒトラー役も! コメディを武器に偏見や独裁に挑んだ『ジョジョ・ラビット』

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:小西未来
T・ワイティティ、監督・脚本・ヒトラー役も! コメディを武器に偏見や独裁に挑んだ『ジョジョ・ラビット』
『ジョジョ・ラビット』タイカ・ワイティティ監督© HFPA

「ドラマとペーソスとハートの中心を軽さやユーモアで包むのがぼくのやり方」

第二次世界大戦下のドイツで、空想の友人アドルフ・ヒトラーの助けを借りて立派な兵士を目指す10歳の少年ジョジョが、皮肉屋ヒトラーの目を気にしながらも、強く勇敢なユダヤ人少女エルサに惹かれていく……。
この、戦争への辛口のユーモアをきかせたハートフルコメディ作品の監督・脚本を手掛け、ヒトラー役もこなし、恐るべき才能を発揮したタイカ・ワイティティ監督のインタビューをお届けする。

―『ジョジョ・ラビット』には原作があるそうですが、映画はどの程度原作に忠実なんでしょうか?

原作はこの映画よりもずっとダークで、内容もかなり変わっている。想像上の友達としてのヒトラーは登場しないし、映画版ほどのユーモアもないんだ。原作を知ったのは2010年のことで、母から勧められたんだ。「ナチスの青少年組織ヒトラーユーゲントの少年が、自宅に女の子が住んでいることを発見するの。母親がユダヤ人の少女をかくまっていてね……」って基本設定を教えてくれて。

少年はユダヤ人に会ったことがないから、彼にとっては自宅にモンスターが住んでいるのも同然で、どう対応したら良いのか分からない。やがて、そのモンスターが実際には人間であることを悟る、という話さ。ぼくはこのアイデアが気に入って、そこに自分なりのトーンというか、彩りを加えようと考えた。ドラマとペーソスとハートの中心を、軽さやユーモアで包むのがぼくのやり方だからね。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

―ローマン・グリフィン・デイヴィス(ジョジョ役)とトーマシン・マッケンジー(エルサ役)という二人の子役を起用した理由は?

これまでに何度も子役と仕事をしてきている。そこで学んだのは、自分が生みだしたキャラクターに近い子供を選んで、ほとんど演技をさせないようにしたほうが良い結果になるということだ。子供の頭に演技用語を詰め込むのはフェアじゃない。自分らしく振る舞ってもらって、必要な台詞だけを言ってもらう。そのほうがより純粋な演技が引き出せると、ぼくは思う。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

ローマンに関しては、かなりギリギリで見つかったんだ。オーディションを4ヶ月ほど続けたあと、どこからともなく現れて、ぼくらを驚かせてくれた。感受性が豊かで、感情的に成熟している点が決め手だ。あんなに若いのに、他人のことを常に気にかけている。

ヒトラーユーゲントやナチスの連中も、生まれたときにはあのような思想は持っていなかったはず。ジョジョにしても同じだ。だけど、やがて彼の頭は新しい教えや思想で曇らされてしまう。そんなジョジョが物語を通じて、他人に共感できるようになっていく。ローマンは、映画のラストでジョジョが到達する境地にすでにいるから、これは素晴らしいことだと考えた。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

トーマシンに関しては、ぼくと同じニュージーランドのウェリントン出身で、両親が演劇界にいるから幼い頃から知っているんだ。まさかこんな素晴らしい女優になるとは思ってもいなかったけれどね。『足跡はかき消して』(2018年)や『キング』(2019年)で見事な演技を披露している。映画のオーディションでは、常にトップ候補だったよ。

「次の撮影はマイケル・ファスベンダー主演のサッカー映画だ」

『ジョジョ・ラビット』タイカ・ワイティティ監督© HFPA

―各映画賞で絶賛されている一方で、ユダヤ人の大虐殺というシリアスな題材を、コメディとして描くことに抵抗感を示している人もいます。

いつか、この映画を理解してくれる時がくると願っている。数年かかるかもしれないけれどね。ぼくは他人にショックを与えることを生業にしているわけじゃない。論争を生み出そうとしているわけでもない。巻き込まれることを避けているわけではないが、それ自体が目的ではない。ぼくの狙いは、良い物語を伝えること。そして、ぼくが持っているあらゆる武器を用いることだ。

ぼくは単純なドラマはやらない。そういうタイプの映画は好みじゃない。コメディはぼくが持っている武器のなかで特に重要で、偏見や独裁に対する強力な武器となりえると信じている。今から80年も前に『チャップリンの独裁者』(1940年)が証明したようにね。以来、圧制者や憎しみや不寛容を広める人物を攻撃するために、笑いを用いるという偉大な伝統が受け継がれてきた。そうした作品のなかに、『ジョジョ・ラビット』を加えることができて、とても誇りに思っているよ。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

―複数の映画企画を抱えているのに、『スター・ウォーズ』シリーズのスピンオフ・ドラマ『マンダロリアン』(2019年~)の演出を引き受けたのはなぜですか?

単純に『スター・ウォーズ』が好きだからだ。それに、ジョン・ファヴロー監督と仕事がしたかった。『マンダロリアン』は彼が企画・製作総指揮を務めていて、彼のことを心から愛しているから。テレビドラマで1話を演出するだけだから、それほどの重荷というわけでもなかったしね。ストームトルーパーと仕事をするのは悪くない経験だ(笑)。

―現在はどんな作品に取りかかっているんですか?

ちょうど、来年クランクインする『マイティ・ソー』の新たな草稿を書き終えたところだ(※取材が行われたのは2019年10月)。これから年末まで、マイケル・ファスベンダー主演のサッカー映画の撮影を行う予定だよ。

―サッカー映画ですか!?

意外だろう? ぼくは同じことを繰り返したくない。新作に取りかかるときに、ちょっと不安を感じるくらいがちょうどいいんだ。そういうときこそ、いい仕事ができるから。かつてデヴィッド・ボウイは、クリエイティビティに関してこう言っていた。「何かを生み出すのは、海に歩いていくようなものだ」ってね。だんだんと足場が悪くなり、水かさがあがってきて不安な気分になっていく。そんなときこそ最高のアートができるんだ、と。

『ジョジョ・ラビット』©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC

取材・文:小西未来

スカーレット・ヨハンソンサム・ロックウェルのインタビューも合わせてチェック!

『ジョジョ・ラビット』は2020年1月17日(金)より公開

Share On
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

『ジョジョ・ラビット』

10歳のジョジョは、ひどく緊張していた。今日から青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿に参加するのだが、“空想上の友達”アドルフに「僕にはムリかも」と弱音を吐いてしまう。アドルフから「お前はひ弱で人気もない。だが、ナチスへの忠誠心はピカイチだ」と励まされたジョジョは、気を取り直して家を出る。時は第二次世界大戦下、ドイツ。ジョジョたち青少年を待っていたのは、戦いで片目を失ったクレンツェンドルフ大尉や、教官のミス・ラームらの指導によるハードな戦闘訓練だった。何とか1日目を終えたもののヘトヘトになったジョジョは、唯一の“実在の友達”で気のいいヨーキーとテントで眠りにつくのだった。ところが、2日目に命令通りウサギを殺せなかったジョジョは、教官から父親と同じ臆病者だとバカにされる。2年間も音信不通のジョジョの父親を、ナチスの党員たちは脱走したと決めつけていた。さらに、〈ジョジョ・ラビット〉という不名誉なあだ名をつけられ、森の奥へと逃げ出し泣いていたジョジョは、またしてもアドルフから「ウサギは勇敢でずる賢く強い」と激励される。元気を取り戻したジョジョは、張り切って手榴弾の投てき訓練に飛び込むのだが、失敗して大ケガを負ってしまう。

制作年: 2019
監督:
出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • T・ワイティティ、監督・脚本・ヒトラー役も! コメディを武器に偏見や独裁に挑んだ『ジョジョ・ラビット』