これは“めっけもん映画”! 予想を裏切る傑作サイコ・スリラー『カット/オフ』

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ライター:BANGER!!! 編集部
これは“めっけもん映画”! 予想を裏切る傑作サイコ・スリラー『カット/オフ』
『カット/オフ』© 2018 ZIEGLER FILM GMBH & CO.KG / SYRREAL ENTERTAINMENT GMBH / WARNER BROS. ENTERTAINMENT GMBH

前のめり鑑賞不可避! 嬉しい驚き連発のサイコスリラー

マッツ・ミケルセン主演『ザ・ドア 交差する世界』(2009年)やトム・シリング主演『ピエロがお前を嘲笑う』(2014年)など定期的に秀作サスペンス/スリラーを送り出しているドイツから、あらたな衝撃作が登場。シネマート新宿/心斎橋「のむコレ」にて2019年11月から公開中の『カット/オフ』(2018年)は、ドイツの作家セバスチャン・フィツェックとミヒャエル・ツォコスによるベストセラー小説を原作に、まるで北欧ドラマのような寒々しい雰囲気と容赦ない描写で、背筋を二重に凍りつかせるサイコスリラーだ。

『カット/オフ』© 2018 ZIEGLER FILM GMBH & CO.KG / SYRREAL ENTERTAINMENT GMBH / WARNER BROS. ENTERTAINMENT GMBH

冒頭から何やら不穏な案件に怯える女性が登場するが、ひとまず序盤は何が起こっているのか少し辛抱の時間。やがて犬を蹴っていたクズ男とのケンカの係争中らしい男性が登場し、どうやら彼が主人公であることがわかる。この男性、ポールは家族とうまくいっていないようで、とことん疲れた表情でさっそく不安な気持ちにさせられる。

検死官として働いているポール。あるとき運ばれてきた女性の遺体は「顔から空気が抜けている」と説明をされたとおり、なるほど下顎がごっそり抜き取られた異常な状態だった。左手首から先も切断されていて、切り口は粗いものの何者かが意図的に“切除”したことは明らか。さらに、遺体の頭部に小さなカプセルが埋め込まれていて、その中には“ハンナ”と、彼の娘と同じ名前と電話番号の書かれた紙片が入っていた……。

という、がぜん興味がそそられる展開に前のめり不可避。しかも、電話をかけてみると「助けて! パパが指示に従わないと殺される!!」と動揺して半泣き状態のハンナが出る。なるほど、ここからは姿の見えない誘拐犯をじわじわ追い詰めていく展開になるのかな? と思いきや、間を置かずにマヌケな顔したクズ凶悪レイプ犯がサクッと登場。この映画、なにがなんでも観客の情緒を不安定にさせたいようだ。

絶妙なキャラ分配と緊張感を持続させるスリラー&ちょいグロ演出が光る!

『カット/オフ』© 2018 ZIEGLER FILM GMBH & CO.KG / SYRREAL ENTERTAINMENT GMBH / WARNER BROS. ENTERTAINMENT GMBH

物語は冒頭に登場した女性・リンダ(漫画家)の話が並行して描かれるが、娘が電話口で言った“エリック”という男に電話をかけると、なぜかそのリンダが出て「エリックは死んだ」とポールに告げる。リンダはたまたまエリックの遺体の近くにいたのだが、彼女は彼女で何者かに追われている様子だったので、立場は異なるが被害者側の(と思われる)二人がここで通じ合ったことになる。

上映開始から30分ほどの間に情報(映像)が詰め込まれているので、ここらへんまでは頑張って集中してほしい。登場人物がみんな怪しく見えてくるくらい不穏な空気が充満していて先が不安になってくると思うが、重い空気を吹き飛ばす軽快なキャラクターが参戦するのでご安心を。ポールがリンダに「助けを求めろ」と伝えた相手、エンダーだ(コメディアン志望のマッチョ)。

『カット/オフ』© 2018 ZIEGLER FILM GMBH & CO.KG / SYRREAL ENTERTAINMENT GMBH / WARNER BROS. ENTERTAINMENT GMBH

ここに、ひょんなことから行動をともにすることになるおっちょこインターンのインゴルフ(実はIT長者)が加わって主要人物が4人となり、ついに真犯人の目的を探る方向へ。ポール組とリンダ組に分かれての遠隔のやり取りによって緊張感が持続させられるので、ながら観は絶対に無理。序盤はなんだかゴタゴタしてるなぁ……という印象だが、この状況を作り出すまでの振りだったのか! と、脚本の巧みさに気付かされるだろう。

どシロートによる手探りの検死や、『セブン』(1995年)顔負けのエグい死体など、「オエッ!」と目を背けたくなるようなシーンは青みがかった冷たく薄暗い映像でグロさを最小限に抑えているので心配ご無用。遺体のチ○コは見せてもいいでしょと言わんばかりに不謹慎な笑いを挟んだり、実際には聞こえていないであろうSEを挿入したり、まるで心霊モノのようなホラー風演出でびっくりさせたりと、その引き出しの多さには余裕すら感じさせる。サスペンス作品にありがちな、無駄にイライラさせられる“主人公の不可解な行動”も最小限だ。

SFから刑事ドラマまで手掛ける監督の引き出しの多さに拍手!

『カット/オフ』© 2018 ZIEGLER FILM GMBH & CO.KG / SYRREAL ENTERTAINMENT GMBH / WARNER BROS. ENTERTAINMENT GMBH

監督・脚本のクリスティアン・アルヴァルトは、デニス・クエイドとベン・フォスター共演作で『バイオハザード』シリーズ(2002年~)のポール・W・S・アンダーソンが製作を手掛けたSF映画『パンドラム』(2009年)や、ティル・シュヴァイガー主演で人気の『ニック/NICK』シリーズ(2013年~)、そして本作でエルダーを演じているファーリ・ヤルディムも出演するNetflixオリジナル作品『ドッグス・オブ・ベルリン ~運命と選択~』(2018年)などを手掛けている人。その作風には一貫性こそないものの、妙に安定した采配の理由がなんとなく分かるキャリアでもある。

映画批評サイト<ロッテントマト>で満足度100%という謳い文句にも一切の誇張なしと諸手を挙げて降参せざるを得ない、“めっけもん映画”に認定したいドイツ映画『カット/オフ』。2時間強の上映時間ながら、気の利いたキャラ造形と考え抜かれたシチュエーション、思わず椅子から転げ落ちそうになる結末まで、一人でも多くの映画ファンに見ていただきたい傑作スリラーだ。

『カット/オフ』は劇場発信型映画祭「のむコレ3」にて2020年1月10日(金)よりシネマート新宿、2019年11月23日(土)よりシネマート心斎橋で公開中

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『カット/オフ』

ある日、検死官のポールは運ばれた女性遺体の頭部から異物を見つける。異物から出てきた紙切れには、彼の娘であるハンナの名前と電話番号が記載されていた...。「指示に従わないと私は殺される」と話す娘は、"エリック"を待って指示を受けろと伝える。ポールはエリックの指示を仰ごうと電話をかけると、電話口の相手はエリックではなく、別の女性リンダが出る。「エリックは死んだ」彼女はそう語り、傍らにはエリックの遺体が転がっているのだった……。

制作年: 2019
監督:
脚本:
出演:
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