ソン・ガンホ「愛される準備はできています!(笑)」ポン・ジュノ監督と4度目のタッグを組んだ『パラサイト 半地下の家族』爆笑連発記者会見

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ライター:BANGER!!! 編集部
ソン・ガンホ「愛される準備はできています!(笑)」ポン・ジュノ監督と4度目のタッグを組んだ『パラサイト 半地下の家族』爆笑連発記者会見
ソン・ガンホ(左)ポン・ジュノ監督(右)

ついに2020年1月10日(金)に迫ったポン・ジュノ監督最新作『パラサイト 半地下の家族』の公開に先駆け、ポン・ジュノと主演のソン・ガンホによる記者会見が東京・日比谷で行われた。

ポン・ジュノ作品にソン・ガンホが出演するのは今回が4度目という相思相愛ぶりだが、本格的なタッグ作は『グエムル -漢江の怪物-』(2006年)以来13年ぶり。二人はいかにして、第72回カンヌ映画祭の最高賞パルム・ドールを獲得し、アカデミー賞受賞も有力視される傑作を作り上げたのか? ソン・ガンホのユーモアが炸裂し笑いの絶えなかった公開直前会見の模様を余すところなくお届けする。

ポン・ジュノ監督(左)ソン・ガンホ(右)

「『パラサイト』でも今まで通り、淡々と映画を撮っていたつもりでした」

―ひさしぶりにお二人揃って来日されたお気持ちは?

ポン・ジュノ(以下、P):ソン・ガンホ先輩と初めて東京に来たのは、東京国際映画祭で『殺人の追憶』が上映された2003年。その次に来たのが『グエムル』が公開された2006年ですね。ガンホ先輩と一緒に(日本に)来るのは13年ぶりのことなのですが、非常に意義深い時間になったなと感じています。

ソン・ガンホ(以下、S):ポン・ジュノ監督とは『パラサイト』を含めて4作品でご一緒して、(日本の)皆さんにご挨拶させていただいています。他の監督の作品でもご挨拶したことは沢山あるのですが、どうも(日本の)皆さんはポン・ジュノ監督の作品が特にお好きなようで(笑)。ポン・ジュノ監督との作品でないと、なかなか愛されないという現状がありますが、とにかく! ついに今回来日できた。愛される準備はできています!(笑)

ソン・ガンホ

―パルム・ドールはじめ様々な賞を獲得されていますが、世界中が『パラサイト』に熱狂している状況をどのように受け止めていますか?

P:全く予想していませんでした。これまで通りガンホ先輩や俳優の皆さんと、淡々と映画を撮っていたつもりでした。しかし、撮り終わったあとに予期せぬ出来事が次々と巻き起こっているんです。アメリカや他の国でも色んなことが起きていますが、私としては「楽しい騒動」と受け止めていますね。今は「日本でもそんな騒動が起きてくれたら嬉しいな」と思っています。今回はガンホ先輩と来日しましたが、『パラサイト』では全てのキャストが見事なアンサンブルを見せています。ですから(作品のヒットは)俳優の魅力によるところが大きいのではないかと感じています。俳優が表現する人間の感情というものは、万国共通の言語だと思います。それを本作のキャストの皆さんが上手く表現したからこそ、世界で同時多発的に良い反応が起こっているのだろうと思います。

S:この映画は、韓国を含む特定の国に限られた物語ではなく、日本を始め、アメリカ、西欧の国、私たちが生きている地球上すべての人々の物語だと思っています。それを監督が、非常に暖かい視点で描いてくださったので、多くの共感を得られたのでしょうね。さきほど「俳優の手柄だ」と言ってくださいましたが、これはポン・ジュノ監督の約20年にわたる長い努力、作家としての野心が実を結んだのだと思っています。そう考えると、これはひとえに監督が一人で掴んだ結果なのだと思います。

ポン・ジュノ監督

「『当然、裕福な家族を演じるんだろうな』と思っていたんですが……(笑)」

―本作の物語の着想について教えてください。

P:この作品は、大学生の息子が裕福な家に家庭教師に行くところからスタートします。日本でも大学生がアルバイトで家庭教師をすることがあるのではないでしょうか? 韓国も同じで、僕も本当に裕福な家の家庭教師として、中学生の男の子を教えたことがあります。意図せず裕福な家の中を隅々まで見るチャンスに恵まれたんですね。他人の私生活を覗き見るという体験をしたわけですが、そのアルバイトを紹介してくれたのは当時の彼女であり、現在の妻なんです。なんとなく映画と似通っているところがありますよね。幸いにも僕は2ヶ月でクビになったので、この映画の後半のような展開にはならなかったのですが(笑)。シナリオを書いている時に、記憶が少しずつ蘇っていきましたね。

―ソン・ガンホさんが本作の構想を聞いたのはいつ頃でしょうか?

S:4年前だったと思います。ポン・ジュノ監督は『殺人の追憶』の時から、シナリオを書きあげてから渡すのではなく、構想を練っている時からアイデアを小出しにして見せてくれるんです。初めて『パラサイト』のお話を聞いた時には「貧しい家族と裕福な家族が出てくる話だ」とのことだったので、「当然、裕福な家族を演じるんだろうな」と思っていたんです。だって私はそこそこの年齢ですし、歳を重ねる間に品位も高まりましたから(笑)。まさか半地下に連れて行かれるとは思いませんでした。

P:「どうもすみません(日本語で)」

S:次からは、大雨が降ったり階段が出てくる作品には絶対に出ないつもりです(笑)。

「悪魔や悪党は登場しないにもかかわらず、“そういう”状況が起こっていく」

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

―ポン・ジュノ監督はこれまでも格差や貧困について描いてきましたが、なぜ『パラサイト』はここまで世界に受け入れられたのだと思いますか?

P:是枝裕和監督の『万引き家族』(2018年)やジョーダン・ピール監督の『アス』(2019年)など、テーマ的に繋がった共通点のある作品が多く撮られているように思います。多くの国でよく聞かれたのが「この作品では富める者と貧しい者が善悪に分けられていない」という感想です。「明確な悪党や明確な善人が出てこないからこそストーリーが予測できない」という感想も聞きました。本作には間違いなく、悪党は出てきません。でも、悪魔や悪党が登場しないのにもかかわらず、「そういう」状況が起こっていく。そこがまさに、この映画が伝えようとしていることであり、投げかけている質問なんです。

S:貧しい人と裕福な人の葛藤を描くだけではない映画です。表面的にはそう見えるかもしれないですが、結局のところ監督が伝えようとしていたのは「私たちがどう生きるべきか?」だったのだと思います。韓国、アメリカ、ヨーロッパ、今の時代を生きている全ての人が、同じように考えさせられる。だからこそ多くの人の共感を呼ぶ作品になったのだと思います。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

―「演技の見事なアンサンブル」とおっしゃっていましたが、最初からソン・ガンホさんはじめ特定のキャストを想定した上で脚本を書かれたのでしょうか? またソン・ガンホさんは出演を依頼された時、「ポン・ジュノ作品ならば絶対に出る」という感じだったのでしょうか?

P:『グエムル』にも4人の家族が登場しますが、シナリオを書く段階から4人のことが頭の中にありました。ソン・ガンホさんをはじめ4人の俳優さんには、事前にお話をした上でシナリオを書き始めています。『母なる証明』(2009年)でも、キム・ヘジャさんを念頭に置いてシナリオを書きました。『パラサイト』の場合はソン・ガンホさん、その息子役であり『オクジャ/okja』(2017年)にも出ているチェ・ウシクさんには、事前に伝えてからシナリオを書き始めました。俳優さんの姿や表情や話し方がわかった状態でシナリオを書いていくと、人物を描写する上で非常に役立つことがあります。最初にソン・ガンホさんに(『パラサイト』の)お話をした時は、複雑な話はほとんどしていません。「この映画は裕福な家族と貧しい家族が出てくる、ちょっとおかしな映画です」とだけお話したんです。チェ・ウシクさんには「今は体が随分細くて痩せているけど、今後身体を大きくする計画はない? 今の体型を維持してほしいんだ」ということだけ伝えました。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

S:ポン・ジュノ監督とは、かれこれ20年くらい、本当に長い間一緒に作品を撮っています。私は監督のファンであり、同志であり、同僚でもあります。初めて監督の作品に出たのは『殺人の追憶』ですが、私はデビュー作『ほえる犬は噛まない』(2000年)も観ていました。その時「この監督はとても非凡で、独特で、作家として素晴らしい芸術性を持っているアーティストだ」と感じ、以来20年間ご一緒してきましたから、いつでも期待を寄せています。「新しいポン・ジュノ監督の世界を見たい」「深まっていく野心を見たい」と、俳優としても心待ちにしてきました。……でも今は違います。雨が降ったり半地下が出てくる作品に出ると、考え方も変わってくるんです(笑)。

P:来年「梅雨時の男」というシナリオを渡そうと思っていたんですが……(苦笑)

S:実際にシナリオを受け取ったら考えも変わるかも(笑)。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

「ソン・ガンホはシナリオを書いている段階から、私の恐れや躊躇、気弱な部分を突破させてくれる」

―13年ぶりの共演で感じた、お互いの「すごいところ」を教えてください。

S:韓国で初めて『パラサイト』が公開された時に私がお話したのは、「これはポン・ジュノ監督の進化の形だ」ということでした。私は監督の作品をデビュー作から観てきました。もちろん『母なる証明』も『オクジャ』も。ポン・ジュノ監督は映画監督として、作家として、自分が生きている社会を温かい視点で、時には冷徹な視点で見つめてきました。私は「そういった状況を全て抱えて生きていかなければいけない」という(監督の)叫びを感じていました。そして監督の世界は深まっていき、拡張を続けてきた。『パラサイト』は芸術家ポン・ジュノにとっての「一つの到達点」だと感じています。監督の進化の終わりはどこなのでしょうか?『パラサイト』の次に来るリアリズムの発展は、どんなものになるのでしょうか? それを考えると少し怖いようでもあり、また楽しみでもあります。とにかくドキドキさせてくれる唯一の監督だと感じています。

『パラサイト 半地下の家族』© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

P:演出家、監督という立場からお話させていただくと、私はソン・ガンホという俳優の演技を、世界で一番最初にモニターで見られる立場にあります。全く予想だにしていなかったディテールや、まるで動物のような生々しい演技が目の前で繰り広げられます。撮影中はそれを毎日のように目撃できるので、本当にゾクゾクしますよ。また、シナリオを書く段階でも驚かされています。詳しいことは言えないのですが『パラサイト』のクライマックスは、おそらく議論を呼ぶ非常に難しいシーンなんです。その部分のシナリオを書いている時は「果たして観客を説得できるだろうか」「どのように受け止められるだろうか」と悩むあまり、キーボードの手が止まる瞬間もありました。でも、そのシーンを演じる俳優がソン・ガンホであるということを考えたら、安心してもう一度書き始めることができたんです。「とても難しくて議論を呼びそうなシーンも、ソン・ガンホであれば観客を説得できるだろう」という信頼があったからこそ、シナリオを書き進めていくことができたんだと思います。彼はシナリオを書いている段階から、私の恐れや躊躇、気弱な部分を突破させてくれる、「信頼できる」俳優であることに気付きました。私にとってそういう意味を持つ存在です。

ポン・ジュノ監督(左)ソン・ガンホ(右)

「多くの俳優が、ポン・ジュノ監督の仕事に臨む姿勢を見て感動を覚えている」

―ガンホさんは監督とコンビを組んできて、「これは大変だ」と感じたシーンはありますか? また他の監督の演出と違うところがあれば教えてください。

S:監督は実際に俳優の前で「こう演じなさい」と例を見せてくれる唯一の監督なので、すごくやりやすいです。監督がやるとおりに演じればいいだけ(笑)。

P:「ウソだ!(日本語で)」

S:本当にユーモアにあふれている人なんですよ(笑)、他の監督とは雰囲気が違うと思います。きっと多くの俳優たちが、ポン・ジュノ監督と一緒に作品を撮りたいと考えていると思います。その理由はなんだろう? と考えると、監督が出演者やスタッフと一緒に仕事に臨む姿勢を見ていて、感動を覚えるからではないでしょうか。もちろん他にも立派な監督はいますが、その点において、ポン・ジュノ監督は特別な存在であることが知られています。他の監督との違いは、「できない注文」を一切しないところですね。ただ、なぜか「(俳優に)太ってほしい」と望んでいるようなんですよ(笑)。普通の監督は「痩せてほしい」「骨格がシャープに見えるようにしてほしい」という注文が多いんですけどね。ご本人がどんどん太っていっているからかな……(笑)。もしかすると、監督の一番いいところは「痩せろ」と言わないことかも。

P:『殺人の追憶』の時、(ソン・ガンホには)田舎の刑事の感じを出すために、太ってもらう必要があったんです。急なことだったので、きっと苦労されたと思います(苦笑)。体重をいきなり増やすと関節を痛めたり、大変なことも多いですからね。でも『パラサイト』の時はそんなことはなくて、むしろ奥さん役の方が体重を増やす必要があったので、(ソン・ガンホは)横で苦労する姿を見ていたと思います。まあ、そういう状況が発生するたびに、家族から「俳優に注文する前に、少しは自分の体をどうにかしたらどうなんだ」と小言を言われます(苦笑)。

ポン・ジュノ監督(左)ソン・ガンホ(右)

―映画を楽しみにされている方にメッセージをお願いします。

S:ポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』で、ついに日本の観客の皆さんにご挨拶できる日が迫っています。本当に期待していますし、楽しみだし、日本の観客の皆さんにどう感じていただけるか、ドキドキしています。まさに万感胸に迫る思いです。楽しく、盛り上がって、深くこの映画を楽しんで欲しいですし、充分それができる作品だと思っています。

P:多くの国での公開を経て、ついに日本で公開されることになりました。とても興奮していますし、期待しています。『パラサイト』のタイトル通り「不滅の寄生虫」のように、観ていただいた皆さんの体、頭、胸に長くとどまり、永遠に寄生するような映画になってくれたらと思っています。

ソン・ガンホ(左)ポン・ジュノ監督(右)

『パラサイト 半地下の家族』はTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて2019年12月27日(金)~2020年1月9日(木)先行公開、2020年1月10日(金)より公開

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『パラサイト 半地下の家族』

過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン… しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。

“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった——。

パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。

制作年: 2019
監督:
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