「生まれてごめんなさい」児童虐待のリアル 毒親に殺されかけた経験を持つ女性の決意を描く『虐待の証明』

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ライター:BANGER!!! 編集部
「生まれてごめんなさい」児童虐待のリアル 毒親に殺されかけた経験を持つ女性の決意を描く『虐待の証明』
『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

経験豊富な女性監督による初の長編は実話ベースの壮絶な人間ドラマ!

2018年の東京国際映画祭では原題の『ミス・ペク』として上映され大きな話題を呼んだ韓国映画が、タイトルも新たに『虐待の証明』として2019年11月から東京・大阪で公開。実際に起こった児童虐待事件をベースに、母親に殺されかけたトラウマを抱える女性と幼い被虐待児童の交流を描く、控えめに言っても超ヘビー級のヒューマンドラマだ。

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

日本を含む世界中で大きな問題となっている児童虐待を正面から描いた『虐待の証明』。ポン・ジュノ監督の最新作公開タイミングということもあってか便乗気味の邦題になっているが、本作に興味を持っていただくには衝撃的な予告映像を見ていただいたほうが早いだろう。

予告の時点で「もう勘弁して……」と目を背けてしまう人もいるかもしれないが、これが実際に起った事件に基づいているというのだから、ますます胸が締め付けられる。監督はソン・ガンホ主演の『優雅な世界』(2007年)などの脚本を手掛けてきたイ・ジウォンで、本作が初の長編。監督いわく、劇中で虐待される女の子ジウンの境遇は韓国で起こったいくつかの虐待事件をベースにしているそうで、彼女はまさに虐待事件の象徴と言える存在だ。このあたりに関しては鑑賞の前後を問わず、東京国際映画祭で行われた監督のQ&A映像をぜひ併せてチェックしていただきたい。

労働階級のアラサー女性を演じ、ハン・ジミンの実力と魅力が爆発!

本作の主人公ペク・サンアは幼い頃に母親から虐待された過去を持つ女性で、そのトラウマによって荒んだ生活を送っていた。ある事件をきっかけに知り合った刑事のジャンソプと交際してはいるが、もう長いこと彼からの求婚をスルーしているらしい。

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

ある日、サンアは寒空の下で薄着のまましゃがみこんでいる少女ジウンを見かけ、その姿がかつての自分とだぶって見えたのか、思わず声をかけて食事を摂らせる。過去を忘れ去りたいサンアは自己嫌悪に陥るが、引きこもりのシングルファーザーとその姉から虐待されていたジウンを放ってはおけず、家族の暴力から遠ざけようとついに行動を起こすが……。

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

親に虐待された経験のある人は自分の子どもにも暴力を振るうなどとよく言われるが、本作は被虐待児童だった女性が主人公ではあるものの、その忌むべき連鎖を止めるための行動と、恐ろしい記憶との葛藤、そしていつ命を奪われてもおかしくない状況に置かれた児童の心理を描く。サンアは亡き母親を憎んではいるが、幼いジウンにかつての自分を見出したことで、闇に葬ったはずの過去と改めて対峙することになる。

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

サンアを演じるハン・ジミン(最高の名前だ! ※TVドラマ『イ・サン』のヒロイン役と同名)は恋愛ものから社会派まで様々な作品で活躍している実力派女優だ。本作では、これまでの正統派なイメージを更新し、どこかスケバン感が漂う労働階級のアラサー女性を見事なウンコ座りで好演。諦観の塊みたいな近寄りがたいオーラを発しつつ、絶妙な表情の機微で複雑な感情を表現してみせる演技力は、もはやひれ伏したくなるレベルである。今後ますます活躍するであろうハン・ジミンの実力が隅々までいかんなく発揮されているので、日本でも彼女のファンが急増するはずだ。

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

世の中から児童虐待をなくすために、自分は何ができるのか?

当然ながら、家族から暴力を振るわれた経験のある人には地獄が蘇るだろうし、運良く毒親のもとに生まれてこなかった人も現実を直視させられる映画であることは間違いない。いざというときに警察は(たいがいの男も!)頼りにならないのはどこの国も同じだな……と絶望させられるが、女性たちをメインに据えながら、男性(ジャンソプなど)の存在を完全に否定しないところなどは、古い慣習が残る映画業界でサバイブしてきたジウォン監督ならではのバランス感覚と言えるかもしれない。

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

終盤は「法が、国が守ってくれないなら自分で守る!」とばかりに意外なバトル展開になだれ込んでいくが、もし児童虐待を目の当たりにしたとき、自分もサンアのような行動が取れるだろうか? と考えさせられるリアルさがある。インスタのストーリーに仲睦まじい様子をアップしている友人家族たちの幸せは、決して当たり前のことではない。監督の「世界中にいる他のジウンを救うことにつながるかもしれない」という言葉が象徴するように、できるかぎり多くの人に見てもらいたいと思える骨太なヒューマンドラマだ。

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

『虐待の証明』© 2018 BAE PICTURES & CJ ENM. ALL RIGHTS RESERVED

『虐待の証明』は劇場発信型映画祭「のむコレ3」にて2020年1月3日(金)よりシネマート新宿、2019年11月16日(土)よりシネマート心斎橋で公開中

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『虐待の証明』

母親から虐待され、捨てられて施設で育ったペク・サンアは、荒んだ生活を送り、周囲からは「ミス・ペク」と呼ばれ揶揄されていた。そんなある日の夜、サンアは道路の片隅で震えている少女ジウンと出会う。お腹を空かせたジウンの体は痣だらけで、誰かに虐待を受けているのは明らかだった。目の前の少女と過去の自分とを重ね合わせたサンアは、ジウンに手を差し伸べようとするが―。

制作年: 2018
監督:
出演:
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